熱闘!後楽園 -14ページ目

Fantasticamania2013 by megane1964


熱闘!後楽園-image  レインメーカーである。この写真で注目してもらいたいのは、照明である。天井とそれを取り巻く最低限の照明しか使ってないでしょう。つまりはこれが、後楽園ホールの「暗い方」の設定である。本日の主催団体は、新日本プロレスである。

 

 あれ、新日本ってこんなところを節約するの?


 もちろん、この「節約設定」にはわけがある。3日連続のこの興行は、「新日本であって新日本ではない」特別興行なのだ。パンフレットには「LUCHA LIBRE NJPW presents CMLL」と書いてあるし、休憩後の試合にはスペイン語のアナウンスがついている。つまり、メキシコのプロレス団体であるCMLLがメキシコのテレビで放送することを前提にした大会なのである。メキシコから15人を超えるレスラーが来日し、試合をしているわけで、それだけたぶん経費がかかってんでしょうね、だからこその「節約設定」なのである。



熱闘!後楽園-image  昨年は2日だったよなあ、どんなレスラーがいたっけなあ、などと思いながら、ホールの席に着いたら、いきなり第一試合で思い出した。おなじみタイチの相手、マキシモである。あ、前後するが詳しい結果はこちらの新日本公式サイト(http://www.njpw.co.jp/ )で確認してくださいね。


 ピンクのフリフリ衣装に身を包んだこのオッサン、「メキシコの男色ディーノ」、つまり「オネエキャラ」なのである。まあ、白ムチヒゲ面メタボ体型のディーノも相当なもんだけど、こっちのガチムチオネエも大概なもんである。顔だけ見ると、橘家文左衛門というか放送作家のベン村さ来氏というか……まあ、そんな感じなのに、性格は乙女。タイチに「オレの○△をしゃぶってみろよ」なんてセクハラされて泣きっ面なのである。リップロックをセコンドのTAKAミちのくやら、レフェリーやらに誤爆したあげく、逆にタイチに激しいやつをぶちかまされてしまい、あえなく昇天。しかし、会場人気は高かったねえ。日本人はオカマキャラが好きなんだねえ。



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 第二試合は「トルネオ・シベルネティコ6vs6」。6人同士のチームの対戦なのだが、フォール、ギブアップした選手が失格になっていき、最後に残った選手のチームが勝ち、というルール。タッグとバトルロイヤルの合いの子、みたいなもんである。


 普通、こういう試合には、「オーバーザトップロープ」ルールがあるのだが、今回はなし。見ていてすぐにナットクいった。なにしろ、すぐに飛ぶのである。なるほど、これじゃ、オーバーザトップロープなんかつけた日には、みんな失格になっちゃいますね。いやあ、ドラゲーをしのぐ、見事な飛びっぷりであった。


 結果、最後に残ったのが、BUSHIと石井智宏。ルチャテイスト満載の試合なのに、最後の決め手は石井のラリアット。そこがジャパニーズプロレスらしいところである。



熱闘!後楽園-image  言い忘れていたが、この日は6試合。北側に小さなスクリーンを吊った客席は、ほぼ満員状態である。「FANTASTICA MANIA」も3回目だけに、なんだか定着してきたようで、会場にはマスクをかぶった人、ルチャドールに熱心な声援を送る人、それぞれにリラックスして観戦をしている。うまく言えないのだけど、いかにも「新日本ファン」のにおいがする客席である。


 第3試合から第5試合までは、ルチャドール同士のシングル3連発だったのだけど、「そんなもんだよ、この大会は」って感じで、普通に盛り上がっている。写真は第3試合のルーシュvsレイ・エスコルピオンだけど、ルーシュはドラゲーのYAMATOをムチッとさせた感じだし、エスコルピオンは大原はじめみたい。



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 試合の中身自体も、通常興行とそんなに違和感はない。現在の新日本のスタイルが、CMLLに似通っているのである。スピーディーでシャープな、体の切れを重視する動きである。ついでに言うと、CMLLのスタイルは、決して軽いわけではない。ルーシュの蹴りにはガシンという痛みがあり、横幅が結構あるレスラーが多いため、飛び技ひとつにもパワーがあるのである。本場のルチャとはこういうものなのか。まあ、ワタクシも毎年この興行を見てはいるのだが、改めてそんなことを感じてしまったのである。


 ショーマンスタイルを基調にしたアメリカンプロレス、ゴツンゴツンと音がするような肉弾戦が特徴的な四天王プロレスとはまた違ったプロレスが、そこには厳然として存在していた。体に染みついた技術を駆使したうえで、「見世物」であることを強調しているようなスタイル。長い間、メキシコという国で熟成されたそのスタイルは、それはそれで魅力に満ちているのである。



熱闘!後楽園-image  メーンは、棚橋、オカダ、デビちゃんといった新日本の一線級とCMLLの一線級を交えての6人タッグ。「逸材」は顔にペイントを施しての登場だが、これはルチャモードの棚橋だよね。新日本の3人もスピードがあって、飛べて、それでいて技に重みもある、「ハイブリッド・プロレス」の担い手ばかりである。この3人が躍動する姿こそ、現在の新日本の路線を象徴するものであり、また、彼らが目指しているものを示唆している、と言えるのではないか、と思ったりもしたのである。


 総合格闘技のブームを経て、21世紀に新たな黄金期を迎えようとしている新日本プロレス。そこで観客に見せようとしているものは、「最強の格闘者のたたずまい」では、きっとないのだろう。それは鍛え上げられた身体をとことん使った上でのエンターテインメントなのだろう。そして、外連味あふれたスタイルで観客を魅了し続けているルチャ・リブレが持つ「見世物」性には、エンターテインメントの原点があるのだろう。


 年に一度の「FANTASTICA MANIA」は、「特殊な興行」であるだけに、逆に現在の新日本プロレスの「本質」を垣間見せてくれる、のである。

告知


熱闘!後楽園 告知です。


 当ブログ「熱闘!後楽園」はご覧になってお分かりのように、単に後楽園ホールで開催されるプロレスを観戦して、それについてあれやこれや思うことを好き勝手につづる、というブログなのですが、慢性的な人手不足に悩まされております。


 一応、全大会観戦、全大会レビューが原則なのですが、参加者全員が社会人であるため、どうもこうもスケジュール調整ができないことも多々あり、自然、「欠番」も生じてしまっているのが現状です。


 なので。


 ワタシもレビューを書いてみたい、プロレスについて一言いいたい、という方を常に募集しております。年齢性別は問いません。プロレスが好きで、後楽園ホールに通える方であれば、どなたでも歓迎いたします。プロアマ問わず、でございます。


 ご希望の方は、こちらのコメント欄などを通じて、接触していただければ助かります。ツイッターのmegane1964あてでも構いませんが、あちらはあまり見てないのでねえ。やる気のある方、エネルギーの余っている方、歓迎しておりますです。


 「熱闘!後楽園」megane1964拝



 




New Year Stars2013~スターダム2周年記念日~ by megane1964


熱闘!後楽園-image ゆずポンの試合を見るのはいつ以来だろう。


 調べてみたら昨年3月、スターダムの後楽園大会のレビューを書いているので、そこでは確実に見ていることになる。でも、はっきり覚えているのは、その試合ではない。


 昨年の1月、ブル中野引退興行での志田光とのシングルである。


 後楽園ホールのとなり、TDCホールで行われた興行で、この試合は、「一般試合のメーン」という位置づけだった。グラビアアイドル兼任の「グラレスラー」とアイスリボンのエース、「美少女レスラー」の対戦。ブルセンセイが、「明日の女子プロを担うふたり」としてマッチメークした試合だったのである。


 それはまあ、華麗で一生懸命でなかなか面白い試合だったのだけど、ちょっとだけ物足りなさも残る試合でもあった。北斗晶とか神取忍とか、往年のレジェンドたちと比べると。「重さ」とか「強さ」とか「凄み」とかが決定的にかけている試合だったからである。「一生懸命」でも「華麗」でも越えられない「本物のプロの壁」がそこには毅然とあったのだった。


熱闘!後楽園-image  それから1年。今シーズン初めての雪がドボドボと空から零れ落ちてくる最悪のコンディションの中、後楽園ホールにたどり着いたワタクシは、すっかり変わったゆずポンの姿を見た。全7試合。この際、他の試合ことはひとまず省いて話を進めよう。どうしても、という方はこちら(http://wwr-stardom.p-kit.com/ )をご覧じあれ。


 休憩前の第六試合、「白いベルト」の防衛戦に臨んだゆずポンは昔とすっかり変わっていた。足腰はがっしりとし、細身だけど、上半身もしっかり皮膚のすぐ下まで筋肉の鎧が覆っているのがわかる。前の試合に出た松本浩代やメーンの木村響子と比べてもひけをとらない「レスラー」の体をゆずポンは手に入れていたのである。


 試合が始まってまた驚いた。


 対戦相手がデビュー1年の後輩、宝城カイリとはいえ、あまりにも落ち着いて、あまりにも風格のある試合ぶりだったのである。


 もともと体ができていないときから、受けの見事さには定評があった。デビュー戦。顔をボコボコにしながら高橋奈苗に食い下がっていった姿を見て、「この子は、シャレや冗談でプロレスに入ってきたわけじゃないんだ」とみんな、ゆずポンの本気を受け入れたのである。
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 でもまあ、考えてみれば、それは「プロの世界に入ってくるアマチュアの覚悟」というヤツだった。この日見せた「落ち着き」と「風格」はそれとはレベルが違うものだったのである。


 ヒジの入れ方ひとつ、蹴りの受け方ひとつ、技の見せ方自体が「プロ」だったのである。グラドル風の(というかホンモノなのだけどね)シナを作って体当たりするその余裕、蹴りを浴びせる前のすっと立った姿のバランスの良さ、どれもが百戦錬磨のレスラーのたたずまいであった。なるほど、2年連続の「女子プロレス大賞」だけのことはある。


 考えてみれば、ゆずポンはデビューしたのが2010年。わずか3年のキャリアしかない「新人レスラー」だったのである。わずか1年前には、「華麗だけど軽いなあ」としかワタクシも思っていなかったのである。この1年の間に身に着けた「凄み」と「風格」。この人はリングの上で、どれだけの経験をしてきたのか。

 
熱闘!後楽園-image  メーンの試合、高橋奈苗は実に安定した試合運びで、木村響子とのタイトルマッチを「作って」みせた。右腕を極め、頭突きを連打する木村の攻撃に耐えながら、冷蔵庫爆弾を返し、最後は必殺のワンセコンドで勝負を決める。


 セミファイナルで6人タッグ王座についた夏樹たいようの試合運びも見事だった。現在の女子プロレス界では有数のスピードを強調し、対戦相手の中川ともかとともに試合のベースを形作る。そのうえで、安川や鹿島といった若手にしっかり見せ場を渡して見せる。


 「プロ」とは、そういうものなのだ。リング上でのゆるぎない自信と自負。自分の長所と相手の長所を知り尽くしたうえで、それを引き出して観客を沸かせる技術と計算。



熱闘!後楽園-image  ゆずポンは後輩との試合で、そういう「プロ」の仕事をしっかりと観客に印象付けたのだ。奈苗とか堀田とか、本来なら技量の違いすぎる先輩たちとの試合をこなし続けているうちに、他の選手なら10年かかる経験をして、ベテラン並みの技量を身に着けたのだ。


 ゆずポンが「もう無理」と思ったのは、一昨年の暮れだったという。記者会見で明かした話である。デビュー以来、ずっとメーンを張ってきて、キツイ試合をし続けていたのだから、こちらが思っているよりずっと、負担がかかっていたのだろう。決めてしまったものをあれこれ言っても仕方がないので、そこは控えるが、わずか3年でこれだけのレスラーになった彼女の姿を、あと少ししか見ることができない、というのはさびしい話である。


熱闘!後楽園 3月に行われる後楽園大会、ゆずポンは仙台ガールズの総帥・里村と対戦するという。奈苗と並んで現在の女子プロのトップである。どんな試合をみせてくれるのか。それはそれで楽しみだ。


 だけど、ワタクシが本当に見たかったのは、華名とか朱里とか、栗原とか、他団体の「未来を背負う」レスラーたちとの戦いだったりもする。今のゆずポンなら、どの相手とでも「重くて」「痛くて」「凄みのある」、強いレスラーとしての姿を見せられるだろうから。でも、まあ、その望みは、ゆずポンがカムバックしない限りはかなえられそうにないし、カムバックの可能性は限りなく小さい。


 わずか年余り、どん底だった女子プロレスの世界に一陣の風を残して去った「グラレスラー」。愛川ゆず季は、プロレスファンの「記憶」にいつまでも残る。そうなるべきだ、とワタクシは思っている。