平成24年度の新しい公務員採用試験制度は教養試験(基礎能力試験を含む)の形式の統一化が行われています。

国家公務員の教養試験は知能分野27題、知識分野13題となっており、具体的には国家総合職(大卒程度)、国家一般職、専門職試験(財務専門官、国税専門官、労働基準監督官)、裁判所職員一般職で同様の表記が見られています。

【教養試験改正のポイント】
1.知能分野の割合増加(出題内容の変化)
国家一般職試験と専門職試験は知識分野の内訳を少し明らかにしています。知能分野27題は文章理解11題、数的処理16題(判断推理8・数的推理5・資料解釈3)であり、知識分野13題は(自然科学・人文科学・社会科学・時事から計13題)です。
従来よりも知能分野の比重を増やし、かつ知識分野を必須回答にして問題を選択解答させないようにしています。

2.解答時間の短縮
また、専門職試験はかつて180分あった試験時間が140分に短縮される形で時間も国家一般職と同様に統一されています。しかし、知能分野が一問4分で計108分、知識分野が一問2分で計26分、マーク等の見直しの時間を5分としても合算して139分になります。

よって、140分以内で解答可能です。そのため、時間の短縮についてあまり心配する必要はありません。私自身の経験を踏まえると、問題の取捨選択でもう少し時間に余裕が生まれると考えています。

【財務専門官や国税専門官等の専門職試験の教養試験の予想】
新たに実施される財務専門官試験は、知識分野の詳細は存在していません。

個人的には自然科学4題(物理1・化学1・生物1・地学1)・人文科学4題(日本史1・世界史1・地理1・思想or芸術1)・社会科学3題(法律1政治1経済1)・時事2くらいになるのではないかと予想しています。

参考として従来の国税専門官は自然科学10・人文科学10・社会科学10・時事3を出題しています。また、従来の国家Ⅱ種は自然科学10・人文科学10・社会科学12・時事3を出題しています。

知識分野の科目は公務員の教養として優越をつけることは容易でないにもかかわらず、知識を必須解答にして選択解答を認めない形にした。この点から、あらゆる知識を薄く広く知っている人間を理想としていることが伺える。その理想からすれば、基本的に~科学は均等に出題すべきという結論になるのではないか?

これは、従来の自然科学でいえば物理や化学などからそれぞれ2問というような出題パターンも踏襲しており、各科目の分野から1題を基本として出題していくことが議論の落とし所として優れているのではないか?

加えて敢えて時事を含むという記述を試験概要の資料に加えたことと、従来から国税専門官が必須で旧国家Ⅱ種が選択とはいえ時事を3問出題していたことを合わせれば、時事を大幅に減らすとは考えにくい。

などなど以上から科目の内訳を推測しました。

【合格ラインの予想】
このような教養試験が仮に実施された場合ですが、おそらく旧試験のときよりも受験者の点数は下落します。今までは、問題を選択する余地があったのに全問必須になっていることや、多くの数的処理を苦手とする人にとっては得点の伸びない試験になるからです。しかし、6割~7割が実質的なボーダーラインに変化はないと思います。文章理解を満点とれば、あとは数的処理と知識分野も半分もとれれば十分6割を超えるからです。良い点はとりにくいが、悪い点もとりにくい、そんな試験になりそうです。
財務専門官、国家一般職、国税専門官、東京特別区Ⅰ類、裁判所職員一般職の5つの専門択一科目を比較しています。財務専門官と国税専門官は同一日程ですが、他の3つはそれぞれ日程が異なります。

勉強する選択科目によって併願のしやすさが変わりますので、この表を参考にしていただけると幸いです。

新しい公務員採用試験 財務専門官採用試験とは?-専門択一1

新しい公務員採用試験 財務専門官採用試験とは?-専門択一2

黄色の塗りつぶしは当該試験種の必須科目です。

表で同一の科目に分類していても試験種によって特徴があります。

実際の科目の難易度は過去問を見るまたは解くことが一番手っ取り早いでしょう。

財務専門官採用試験は科目分類と解答数などから国税専門官採用試験と同一傾向の出題が予想されます。
そのため、国税専門官採用試験の過去問を解くことが効果的と考えます。
次点で財務専門官試験の憲法・行政法、経済学・財政学・経済事情の出題がやや多めである。そして、旧国家2種の財務省財務局の職員採用試験である。以上から、旧国家Ⅱ種の過去問もアリかなと思います。

過去問は下記に掲載の通り、書店等で購入できます。
それ以外にもネット上に開示されている場合があります。

いきなり過去問と思われるかもしれませんが、筆記試験の出口を予め確認しておくことは非常に有効です。ぜひともご活用ください。

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財務専門官採用試験は平成24年度から国家公務員試験制度の変更によって新設された試験区分です。
財務専門官採用試験(財務省財務局)

新たな採用試験(人事院HP)

財務専門官採用試験2013

[公務員]国税専門官/財務専門官業務説明会, LEC池袋本校2011年6月14日実施 Kフォーラム

このあたりの情報を抜粋してまとめています。

【財務専門官試験の特徴】
1.国税専門官、労働基準監督官等の専門職試験と同じ日程(6月の第2日曜)に行われる。
2.旧国家Ⅱ種行政職の財務局職員等を採用試験である。
3.国税専門官試験と異なり、専門択一の憲法・行政法と経済学・財政学・経済事情の2科目が必須になる。
4.国税専門官試験と同様に専門記述がある。
5.試験年度の4月1日における年齢が21歳以上30歳未満の者が受験可能である。



【財務専門官試験の難易度の予想】
労働基準監督官>財務専門官>国税専門官

財務専門官は専門学校の標準カリキュラムで受験可能ですが、幾つか留意すべき点があります。

1.採用人数が少ない。
平成24年度の採用予定は約100~150人である(検討中)。平成23年度の採用予定は国税専門官が約780人、労働基準監督官(法文系)が約100人です。
2.国家一般職や他の地方上級試験と併願が容易である。
財務専門官は国税専門官採用試験受験者の多くを悩ませた会計学が必須ではない(会計学は基本的に国税専門官受験者以外必要としない特殊な科目)。受けやすい試験≠受かりやすい試験。
3.官庁訪問がある(予想)。
旧国家Ⅱ種は1次試験合格者を対象に官庁訪問を実施していました。官庁訪問は最終合格発表前の事実上の採用面接で中々の倍率です。国家一般職の試験から区分されたとはいえ、旧試験の慣習についての注意は必要でしょう。


【財務専門官試験と国税専門官試験のどちらを受けるべきか?】
正直、就職最優先ならば国税専門官試験です。しかし、財務省財務局に強い興味をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
受験者の個々の事情は異なりますので、幾つかの例を挙げながらご説明致します(私見なのであまり当てにはなりませんが…)。

(1)併願先が国家一般職や地方上級の方
財務専門官試験をオススメします。

専門択一の選択科目は無理に会計学を選択しなくても、民法・商法、政治学・社会学、経営学、英語から2科目選ぶことは容易です。専門記述は専門択一から2科目くらい選べば十分でしょう。専門記述は憲法、民法、経済学、財政学、会計学の中から1科目選択です。従来の国税専門官試験と異なり、社会学がなくなって財政学が新たに受験可能な科目になりました。よって、経済学系を重視したい姿勢が垣間見えるので経済学系のほうが簡単になるかもしれません(従来から国税専門官試験が会計学を簡単にして、憲法を難しくする傾向がありました)。

(2)会計学が得意な方(会計士・税理士試験受験生など)
国税専門官試験をオススメします。

会計学は必須科目かつ記述にも利用可能ですので、他の国家公務員試験受験者と差をつけやすいです。そして、国税専門官試験は最終合格者の辞退が多いので、最終合格者は採用予定の2.5倍となっています。そのうえ、財務専門官採用試験は会計学や商法が必須でないことから従来国税専門官試験を受験していた層が受験します。国税専門官試験の倍率も低下するでしょうし狙い目です(逆に会計学ができないで国税専門官試験を受けることは危険になったといえます)。

(3)既卒の方
国税専門官試験をオススメします。

旧国家Ⅱ種の慣習が残っているのならば財務局(財務専門官)は既卒、特に高齢受験者に厳しい官庁です。対して、国税局(国税専門官)は寛容な官庁となっています。


この記述が受験生の皆様の助けとなることを祈っております。
併願含め、公務員試験において受験先は重要ですので、色々とお考えくださいませ。