編集「今回は、通学クラスの演習についてお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。」

島村「よろしくお願いします。」

編集「先生の予備校では毎週日曜日にテストを実施していらっしゃるそうですが、テストはどの程度重要なのでしょうか?」

島村「テストといっても、過去問を年度順に実施しているだけです。目的は、①本番での集中力を高めること、また、②過去問の傾向に早く慣れること、③現在の学習方法についての「穴」を確認すること、④時間内に問題を解くことに慣れること、⑤勉強の効率を上げて解法学習に集中すること、⑥教養論文の実施・添削、⑦学習のペースメーカーにしてもらうことなど、数え上げたらキリがないと思います。」

編集「たくさんのメリットがあるのですね。普通の予備校でもやっているのでしょうか?」

島村「過去問演習などのカリキュラムは実施していると思いますが、本校では、12月以降15回実施します。1月からは午前中から教養多肢・教養論文・専門多肢の3科目を本番と同じ時間で実施しますので、本番での時間配分や、論文の練習、また、演習後のコメントでは面接対策についても扱いますし、集中力の維持の練習になります。通学クラスでの学習の中心的なものが、この日曜日の演習になります。」

編集「内容が充実していますね。解説も付いているのですよね。ただ、勉強の最初から演習をする人もいると聞きましたが、最初から演習をして得点が取れるのでしょうか?」

島村「教養試験にしても、専門試験にしても、全く勉強しなくてもある程度の点数が取れます。教養なら8点程度、専門なら5~6点は取れます。本番で、自分が勉強していなくても得点が取れる科目があることを最初に認識できるし、この点数から合格点までの点数を「埋めればいい」という学習目標が具体的に意識できます。」

編集「合格点が28点で、現在が8点だから、20点を取ればいい。そのために勉強するという考え方ですね。」

島村「その通りです。経済がマスターできなくても、経済の中で簡単な問題を3問解ければ3点になる。数的処理は17問あるが、この問題は簡単だから得点できるが、この問題は難問だから解けないから捨てる。本番の過去問では難易度が適切に配分されているので、難問ばかりで低得点になることがありません。易しい問題をうまく選べば、受講して数週間ですぐに20点程度になります。得点を伸ばすのに苦労するのは、このあとの6点程度です。つまり、難問に引っかからないように、得点が取れる中程度の問題を探して回答するというコツが必要になるからです。しかし、通常の勉強方法では、勉強を始めて数週間で20点を取れることはありません。それは、全科目を一度に勉強するのではなく、カリキュラムにしたがって、数的、文章、経済、憲法、民法という具合に勉強するからです。本校では常にどの時間帯でも複数の科目を講義して受講生が科目にこだわらないで問題の難易度や解法に集中するように指導しています。これがどの問題でも解いてみよう、解けるかもしれない、あるいは、その問題を解くためだけに必要な知識をストックするという学習方法になるのです。それが短期間で高得点を取る秘訣です。」

編集「つまり、習うより慣れろという学習法の実践ですね。」

島村「その通りです。例えば、地学の問題は、小学校5年生でも解けますし、数的処理も同じく小学校5年生、6年生で解けます。人文や社会科学は高校生でも解ける問題があります。その問題については、わざわざ学習する必要がないから時間を節約して、簡単なコメントだけにしています。日本史をすべて理解しようとすれば数年がかかりますが、そもそも、そんな難しい問題は1問程度しか出題されないので、漢字が読めれば正解できるというレベルです。それを授業を受けないと点が取れないと暗示的に思い込んで勉強するから、得点が伸びないし、また、デタラメノ知識が記載されていると、それを正解だと思い込んで失点する。受験生は未知の知識(別名でたらめ)を正解だと思い込みやすいのは、『授業を受けないと得点できない』という暗示にかかっているからです。それを解消することも演習の目的です。」

編集「確かに、知らない知識が出ると、それを正解と思ってしまいますね。それがデタラメだったとは知りませんでした。」

島村「デタラメだから、誰も知らない知識なんです(笑)」

編集「デタラメだとわかるのは先生が、たくさんの知識を知っているからでしょうね。」

島村「そうですね。他分野に興味があるし、他分野で仕事をしてきましたので、過去問の知識でデタラメにすぐに気づけたのは、私の経験のせいだと思います。」

編集「その他のメリットについてお話をいただけますか?」

島村「まず、②過去問の傾向に早く慣れることができます。毎週過去問で時間内に多量の問題を解くと、同じような知識について反復して出題されることがわかります。そして、その出題パターンについてもわかります。通常の学習で1週間に全科目を一つの試験について勉強することは難しい。その障害となるのが難解な概念の問題や、手間のかかる数的の問題です。しかし、制限時間内で『得点を取る』ために強制的に演習すると、自ずと、手間のかかりそうな問題についてはやらなくなります。そして、『やらなくても一定の得点が取れる』と気づくと自分の得意な分野に集中して得点を取るようになります。また、毎回の得点を見て、私が、やるべき問題を指示しますので、そこを重点的に学習することで「穴」が小さくなります。やるべき問題は受講生一人一人で違いますから、個別の学習指導が充実します。模試を受けて数週間経ってから学習ポイントや穴を認識しても、タイムラグが大きすぎて効果が非常に小さくなるし、印象がぼけます。さらに、受験後に自分で立てた学習計画は大抵偏ったものになっていますので、学習効果を減退させるだけで、意味がありません。テストが終わった直後の印象と、それに対する学習方針を次回のテストまでに実践できる量と内容にすることで、高い学習効果が上がることが実践経験でわかっています。なので、毎週テストはいい点を取るためにあるのではなく、学習効果を毎週確認し、学習方針を一週間単位で修正して実践するためにあると言っていいでしょう。これが、③現在の学習方法についての「穴」を確認することができるというメリットです。そして、1週間で「穴」を埋めることができるのも大きなメリットです。」

編集「修正に即時性があるということですね。企業などのOJT(On the Job Training)と同じということでしょうか?」

島村「そうですね。今日の成果、失敗をすぐに確認し、明日の業務に活かすということがOJTの目的で、これによって社会人1年目でも業績を上げることができます。日々、結果と反省、改善ということを短期間で行うことが新人育成に欠かせないのですが、これを実践するのが本校テストです。」

編集「ビジネスにおける教育システムを試験に取り入れるということですね。素晴らしいです。」

島村「学校での教育は、基本的にスローペースで教員の練度に合わせてあります。最低レベルにね。だから、数週間でできることを数年掛けて行います。指導者や指導法が替わることで数か月で進学率や合格率が高くなるのは、元々、短期間で学習できる内容を長期間に薄めているからであって、学校教育が『人間形成』に重点を置いていることの必然的な結果です。しかし、企業や受験勉強は短期間で結果を出さなければなりませんので、それなりの実践教育が必要ですし、目標の限定、範囲の制約が必要になるのは当然のことです。やるべきことをやって、不要なことは切り捨てる。これが目標達成には必要なことですが、人間形成には、そうしたドラスティックな方法は適しません。予備校の教育方法は学校型ですので、『落ちこぼれ』『目標不達成』を回避しますが、受験勉強では、それは不要なので、演習中心の授業,、つまりOn-The-Job Trainingが適しているのです。」

編集「なるほど、理論的に合理性があるということですね。」

島村「その通りです。」

編集「④時間内に問題を解くことに慣れることということは、先ほどあるように、捨てる問題、やる問題を見分けることでしょうか?」

島村「『捨てる』といっても『今の段階で捨てる問題』というものと、半年後も捨てる問題は違います。また、捨ててみて、実ややるべき問題だったということを個別に指摘する場合もありますので、『やってみる』という指導もします。つまり、数的が苦手だと思っている学生でも試験時間が2時間あると、数的以外の問題をやっても時間が余ってしまいますから、『やってみよう』という動機がわきやすい。そこで、簡単そうな問題をやってみたら解けた。正解できたということで、自信が付き始める。また、出題される過去問は予備校でのテキスト問題よりも、また、出版された有名問題集の問題より平均的にやさしいですから、解ける問題が多いことに気づきます。それとともに、同じクラスで数的が苦手と言っている学生と、数的が得意と言っている学生で、総得点がそれほど変わらないという事実に直面しますから、数的が得意な人と苦手な人でそれほど差が大きくないことに気づき、数的が得意な人は自分のアドバンテージが大きくないことに恐怖し、苦手な人は追いつくことが簡単だと思うようになります。これで合格への精神的な障害、つまり数的苦手、経済苦手などのコンプレックスが合否には大きな影響がないことに気づきます。それは、自分ではできると思っている受講生には、より勉強が必要だという刺激になり、できないと思っていた学生にはやる気が出るという刺激になるのです。」

編集「なるほど、確かに、学校で成績が良くても本番では、それほど差がつかなかったり、また、中学で成績が良かったと思っていた人でも、大人になってみてみると、大学受験で失敗する人も多くて、結局、『勉強ができる』なんていう評価は、思い込みに過ぎないということかもしれませんね。」

島村「その通りです。問題は、人生のどこの時点で頑張るかということですから、今、頑張ることができれば、それで結果は付いてくると言っても良いと思います。」

編集「次に、テストのメリットとして、⑤勉強の効率を上げて解法学習に集中すると先生は言われましたが、それはどういうことでしょうか?」

島村「テストを学習の目標にすることで、自ずと、得点を上げるために学習するようになり、その結果、この本をマスターしよう、とか、この科目を得意になろう、というような抽象的な学習目標を立てずに、『この科目のこの問題をできるようにしよう』という学習方針になります。例えば経済のグラフの問題と、文章題だけ解けるようにしよう。というようなことです。このような方針を立てる場合に、それで一定の得点に到達できなければ、計画は結果に結びつかないことになりますが、毎週のテストで、その方針で合格ラインに到達できていれば、その計画が結果に結びつくことになります。法学部や経済学部で勉強しているからと言っても民法の択一問題やミクロ経済の計算問題ができるわけではありませんので、こうした学習方針を立てなければならないのはすべての学生に共通して言えますが、しかし、友達から「数学が得意だからいいよね」とか「経済学部だから経済が得意でしょう」などと言われることが自然と、経済全般で得点しようとか、数的で満点取ろうというような不合理で不合格に直結する計画を立ててしまいがちなのが受験生です。自分の能力と過去問との擦り合わせをしないで、学習方針や学習範囲を決める危険性を考慮しないから受験で失敗したのですが、その癖が抜けないということです。結局、大学受験での勉強法が間違っていれば、その後の実社会でも試験でもいい成績は見込めないということになるのです。いずれにしても、学習効率を上げて、合格するには『出るところだけ勉強する』ということに徹するしかないのです。それがアタマが良いという社会における評価につながります。万能のアタマの良さは遺伝的なもので、それは他の人間が追随出来ないだけの差があるかもしれませんが、日本の社会で、東大などの大学に進学するのに、それだけのアタマの良さは必要ありません。単に、自分の学習可能時間と学習範囲を擦り合わせて、限定して、効率性を高める努力だけをすればいい。それだけのことです。」

編集「お話を聞いていると、東大だからと言って、それほどアタマが良いとは限らないという風に聞こえますが。」

島村「年間に3300人も入学するのですから、アタマの良いと評価すべきは数十人だと思います。私の目からは、旧帝大、早慶、他の私立大学の学生さんの方が、分野分野で秀でた人が多いと思います。その割合は、それほど変わりはないでしょう。受験勉強に重点を置いたか、スポーツに重点を置いたか、他の学芸活動に重点を置いたかなど家庭環境によると思います。もちろん、試験に受かるには『幸運』が最も重要ですが。」

編集「なるほど、ということは、東大に受かる人はそうした実践的学習をしてきたから合格できたということですね。」

島村「そうですね。ただのテスト好きというのが東大生です。自分の成績を常に意識して前に進むべき努力をするのが受験戦争に勝つために必要なことです。」

編集「わかりました。では最後に、⑥教養論文の実施・添削もテストで行うということですが、これについてお話をいただけますか?」

島村「年明けから、午前は教養、昼に教養論文、午後に専門択一という試験時間になります。その中で論文を毎週書いてもらいます。書く上で必要なことは毎週の演習後に簡単に解説しています。この解説で何を知り、調べ、何を準備しなければならないかがわかります。論文の問題は、特に地方上級では、その自治体の行政活動について知っていることでアドバンテージが産まれます。そして、毎週の論文を通じて、どのような行政課題について勉強しておくことが必要かがわかりますし、それも1週間で勉強しなければならないテーマに属します。ほんの数十分でも調べておくことが論文の評価を高くすることにつながります。」

編集「ということは、模範答案を覚えるという勉強法ではダメだということですか。」

島村「そうですね。模範答案は、結局、誰でもが書ける内容ですし、似たような内容を採点官は何度も目にしますので、すぐに予備校の模範答案であることに気づきます。すると個性のない、自主性のない答案と評価しますし、当然に良い評価は付かないでしょう。オリジナリティがあり、受験者の具体的な経験に基づく論文であることが求められているのであって、単なる暗記のテストではありません。地方上級では、合格して何十年かすれば地域行政の中心的人物になる可能性がある人間を探していますから、そうした『やる気のない答案』を書く人は、高い評価は得られないでしょう。もちろん、受験者の大半がそうした模範答案を書くのですから、全員を落とすことはできないので、その中から合格者を選ぶことになります。そうなると、内容ではなく、形式的な評価だけで当落が決まることになり、結果、教養論文で苦労するのは時間の無駄ということにもなります。」

編集「ということは、特に対策をしなくても良いということですか?」

島村「そういうことではありません。必勝合格パック(弊社の通信教材)の論文講義の内容を実践するだけで、簡単に差をつけることができて合格できるということです。わざわざ毎週の論文演習でいろいろなことを調べて対策する必要はない。それだけ現在の論文試験のレベルは低いということです。」

編集「仰る意味がわかりませんが。」

島村「すみません。つまり、本校の論文指導は、論文試験の合格だけが目的ではなく、それが面接試験にも波及するということを申し上げたいのです。」

編集「論文で書いたことが、面接で加点されるということですか?」

島村「それもあるでしょう。ただ、教養論文の問題は、その自治体行政における課題意識につながっています。なので、それを過去問で勉強すれば、面接の際に、志望動機が豊かになり、また、特別区などの3分間スピーチで差を付けられるということです。」

編集「なるほど、出題者からのメッセージを的確に受け取って、理解し、応答するということですね。」

島村「言ってみれば、その通りです。」

編集「とてもよくわかりました。試験問題を、どのように理解するか、そして、それを活用することが短期合格につながる。その具体化が毎週テストであるということですね。ありがとうございました。また、次回を期待したいと思います。」