国民の処罰感情 | 手話通訳者のブログ

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ブログ記事「裁判員裁判」に、mikanさんからコメントをただいた。ありがとうございます。



たいし様

度々のコメント失礼します。

裁判員制度が始まった頃、国民の処罰感情が強く、一審で量刑が重く、控訴審で減刑になる事が多かったです。現在ではどうか調べていないので分かりません。

確か、求刑以上の量刑もあったはず。以下西日本新聞


https://www.nishinippon.co.jp/sp/item/n/521812/

 

 



いつもためになるコメントをありがとうございます。

以下西日本新聞記事。


 刑事裁判に市民の視点を取り入れる「裁判員制度」が導入されて5月で10年を迎えた。裁判員に選ばれた人々は殺人などの重大事件に向き合い、悩み抜いて有罪・無罪を判断してきた。中には法律の「プロ」の固定概念を打ち壊す、量刑相場を大きく越えた判決もある。市民感覚を反映したはずの裁判員判決だが、一方で高裁での破棄率は上昇。現状と課題を追った。

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「無期懲役に処する」

宮崎地裁の裁判員裁判は16年2月、求刑(懲役25年)を超える判決を導いた。

 被告の男は、女性を殺害、遺体を切断したとして殺人や死体損壊の罪に問われていた。「猟奇的で非人間的」と断じた判決は、有期刑の上限(同30年)も上回った。

 担当検察官だった若杉朗仁弁護士(福岡県弁護士会)は法廷で目を閉じたまま判決を聞いた。「これが市民感覚か」

 法律の「プロ」として事件に向き合ってきた自負があった。市民が被告を裁く側に立ち、事実認定や量刑を判断する裁判員制度には否定的だった。

 しかし、地裁判決に固定観念を打ち壊される。判決は求刑について「事件の特殊性や全体としての悪質さを適切に評価していない。市民感覚に照らして不当に軽い」と批判。若杉弁護士は法曹三者(裁判官と検察官、弁護士)の量刑相場に対する「裁判員からの痛烈なメッセージ」と感じた。

 裁判員制度の開始前、裁判官は類似事件の判決や求刑など詳細なデータを基にした、裁判所内部の検索システムを参考に量刑を決めていた。これにより、判決のばらつきは少なかった。

 裁判員裁判でもシステムを参考にするが、市民感覚が反映されて量刑に幅が出るようになった。性犯罪や幼児虐待事件では求刑を上回る判決が増加。一方、介護疲れによる殺人事件などでは執行猶予に保護観察を付ける判決も増えた。

 ただ、市民が考え抜いた一審判決が高裁で覆されるケースも増えている。宮崎の女性殺害・死体損壊事件の控訴審判決は、一審判決を「量刑判断を誤った」として破棄し懲役25年に減刑。最高裁で確定した。

 控訴審の結論は被告に有利に傾くとは限らない。知人女性への殺人罪などに問われた男について、福岡高裁は昨年9月、傷害致死罪を適用し懲役10年(求刑無期懲役)とした裁判員裁判判決を破棄。殺人罪を認定して懲役22年とした。

 裁判員判決に対する高裁の破棄率は10年は4・6%、18年は11・8%だった。

 「納得できない。市民の声を反映させるという制度の意義を感じなかった」。福岡県豊前市で女児=当時(10)=が殺害された事件の裁判員裁判。福岡地裁で16年に裁判員を担った女性(31)は判決後、裁判長にこう訴えた。

 自身にも幼い娘がいた。審理を重ねるたびに胸が締め付けられ、同じような被害者を出したくないという思いが募った。

 評議の場で、裁判官は類似事件の量刑傾向を提示。「求刑超えの判決は高裁で覆ることが多い」とも話したという。その後、全員が目を閉じた。裁判官が読み上げる量刑に、それぞれが手を挙げた。死刑求刑に対し、結論は無期懲役だった(最高裁で確定)。

 「過去の傾向に基づいた判断を、と迫られているようだった」。女性は市民感覚が生かされたとは、今も思えない。

 検察統計によると、裁判員制度が始まった09年以降、殺人罪(未遂を含む)の起訴率は4割減った。裁判員は直接証拠を重視する傾向にあり、検察側が殺意を認める供述がない事件の起訴に慎重になっていることが一因とみられる。手堅く起訴すれば、上がるはずの有罪率もわずかに下がった。刑事司法に詳しい弁護士は「疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の原則が、市民参加で一定程度実現されてきた」と指摘する。 

 統計では、殺人罪(同)の起訴率(検察官が起訴か不起訴かを決めた人のうち起訴した人の割合)は制度開始前の06年は56・8%。制度が始まった09年は48・4%、17年は28・2%に減った。これには、殺人容疑で送検され、傷害致死罪で起訴するなど罪名が起訴時に軽くなる「罪名落ち」は含まれない。

 成城大の指宿信教授(刑事訴訟法)は「裁判員は直接証明できる証拠を重視し、推論に対しては慎重な傾向にある。制度開始以降、起訴猶予になるケースが増えている」と分析する。

 千葉県で16年に男女3人が包丁で襲われた通り魔事件で、千葉地検は殺人未遂容疑で逮捕された女を「殺意を認める証拠がない」として傷害罪で起訴した。

 事件を担当した日弁連刑事弁護センター副委員長の菅野亮弁護士は「裁判員前なら殺人未遂罪で起訴された事件だった」と話す。裁判員事件を約50件担当し、うち2割は、不起訴処分や罪名落ちだったという。

 裁判員制度が始まり、検察側は慎重になっているのか。法務省刑事局長は15年の衆院法務委員会で「(起訴率の)低下傾向は裁判員制度前から始まり、制度と連動しているとは言いがたい」と述べた。

 99・9%と言われる有罪率は、裁判員裁判でわずかに下がった。最高裁の司法統計では、09~17年の一審の平均有罪率は99・8%で、裁判員裁判に限れば99・2%だった。16年(98・8%)と17年(97・8%)は99%を割った。

 菅野弁護士は「裁判員は裁くことに慣れておらず、真剣に証拠と向き合い、市民目線で判断していることの表れだ」と評価する。

 九州大法科大学院の田淵浩二教授(刑事訴訟法)は「証拠を絞り込み、公判での証言や被告人の供述に重きを置く『公判中心主義』が進んだ。長時間の取り調べなど強引な証拠固めが減り、冤罪(えんざい)を生まない司法制度改革が進んできたと言える」と話した。