あの1打席、を振り返る新コーナー【至高の勝負】


第1弾は記憶に新しい真夏の大熱戦。8月20日の阪神VSDeNA。


この試合、三浦とメッセンジャーの投げ合いで始まったため投手戦が予想されたが、荒れた試合となった。

3回、藤井のチーム初ヒットを口火に阪神打線が7得点。それでも、強力DeNA打線は梶谷、モーガン、後藤のホームランなどで追いつくと、4回には金城が決勝打。それでも阪神は6回に新井貴のタイムリーで追いつき、9回には今季負け無しのベテラン安藤をマウンドに送った。


この9回、試合を決めたのは同じくベテランの中村紀だった。一死一ニ塁の場面で、レフトへのサヨナラ打。これが自身17度目のサヨナラ打となった。この一打で白熱した試合に終止符が打たれたわけだが、この打席を振り返ってみよう。


安藤は追い込んだあと、力んだのか制球が乱れフルカウントに。そして最後の決め球。安藤が選んだのは内角高めのストレート。これを中村が弾き返したわけだが、この球を見て私はある場面を思い出した。


それは交流戦真っ只中の6月2日。ヤフオクドームでのソフトバンクVS阪神だ。


安藤は4ー3と阪神リードの9回、マウンドに上がった。簡単に2アウトを取り、迎えるバッターは代打・李杜軒。長打力が売りの若手だ。この時も、フルカウントとし、選んだのは内角高め。中村の時とは違いスライダーではあったが、李杜軒は全くタイミングが合わず空振り三振。明らかなボール球なのだが、右打者はこれに手を出してしまう。今年の安藤が好調なのは、あのたまを投げれるからなのか、と納得した覚えがある。


さて、では、なぜ中村はこの球をヒットにできたのか。ポイントは2つ。

「タイミングの取り方」と「肘の柔軟さ」である。

まずは中村の独特なフォームだ。長年かけて作り上げたフォームだが、これは中村にしかできない打撃だ。どんな球にも対応できる、中村だけの間がそこにはあるのだ。

ただ、タイミングが合うだけではヒットにはできない。もう一つは肘の使い方が上手いところにある。先に述べた李杜軒の場合、完璧なスイングができていなかった。一方、中村はいつもどおりのスイングができていた。中村の場合、内角の球は肘をたたみ、体勢を整えてから打つ、というルーティーンができているのだ。普通なら単純なスライド動作になりがちな内角の球への対応を、中村は2段階動作にすることで打つ体勢に持っていくことができるのだ。


この一連の流れを、あの状況でやってのけた中村には改めて脱帽だ。チームをCSへ導くことができるだろうか。
野球の神髄


野球の神髄
ヤクルト・バレンティンの勢いが止まらない。

2試合連続2ホーマーで、46本塁打に到達。日本記録まであと10に迫った。


バレンティンに関しては、技術どうこうの話はできない。とにかく凄い、としか言えない。

どんどん日本の投手に対応してきているな、ということはよくわかるが。


ところで、これまで55本塁打を達成した選手を見てみると、チーム成績も大きく関わってくることが分かる。

王貞治が達成した1964年は巨人は3位。

タフィ・ローズが達成した2001年は近鉄は優勝。

アレックス・カブレラが達成した2002年は西武は優勝。

チームの勢いとともに、といった感じだ。


対して、バレンティンの所属するヤクルトは現在最下位。

しかし、まだCSを狙える位置にはいる。個人的にはヤクルトのCS進出を予想している。


なぜなら、この時期に諦めず全力で戦うことが、バレンティンの為にもチームの為にもなるからだ。

バレンティンの記録へのモチベーションを保つためには、チームが上がっていかなければならない。

そしてバレンティンがモチベーションを保てば、チームも上がっていく。


一昨日、先発した八木は気迫あふれるストレートを投げていた、2試合連続で最終回を任されたルーキー・石山も自信を持って投げていた。若い上田や山田も全力でプレーしている。


彼らはバレンティンの陰に隠れた引き立て役でしかないかもしれない。それでも、全員がそれを意識することで、ヤクルトはバレンティンだけのチームではなくなる。


ヤクルトが3位に入り、バレンティンが記録を達成する。これができれば、来年のヤクルトは面白いかもしれない。

ついでに、日本ハムの2番手として登板した榎下陽大投手について触れておこう。


鹿児島出身、甲子園では現チームメイトの斎藤佑樹と準決勝で投げ合い、九州産業大時代は馬原孝浩(オリックス)以来のリーグ30勝をマークした九州男児だ。


昨年までは一軍登板はわずか1試合。じっくり見たのは今日が初めてであった。


投げる際に空を見上げる、ダイナミックなフォームから速球とフォークを放つ、若さ溢れる投手だ。


この日は吉川がマウンドを降り、一死一二塁という緊迫した場面で登場。細川は全くタイミングが合わず三振。続く中村も的を絞れず内野フライに仕留めた。回またぎとなった5回は長谷川に痛恨の2点適時二塁打を浴びたが、非常に将来性のある右腕だと感じた。


振り返りたいのは細川との対戦。

カウント2-1と打者有利の状況で榎下はストレートを選択。これに全くタイミングが合わず空振り。5、6、7球目はいずれもファール。そして8球目。外角高めの球を細川はボール球と判断。しかし、これが急激に落ち見逃し三振。


7球目もフォークであったが、これよりもさらに落差のあるフォークだった。細川がバットを出せなかった理由。それは榎下のフォームにある。榎下の目線が上を向いているため、自然と打者も目線が高くなる。だから細川も高いと判断したが、実はそれがフォークなのである。


内川への死球や長谷川のタイムリーなど、外内角の細かいコントロールに課題はあるが、ここを修正すればかなり打ちづらいピッチャーになるだろう。



野球の神髄