日本国 慶長6年~元禄8年(1601~1695) 慶長小判金 前期 1両金貨 PCGS MS63 | コイン収集 ~趣味のコレクションブログ~

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本日は平成の御世における最後の天長節、所謂ナショナルデイで御座います。我が国で最も大切な祝日、今上陛下の御誕生日ですね。12月23日を天皇誕生日としてお祝いするのもまさか今日この日が最後になるなんて、そんな日が来ようとは夢にも思いませんでしたが、来年からは上皇となられる陛下の益々の弥栄を祈念すると共に、満85歳の御誕生日を心より御慶び申し上げます。

こんな目出度い日にご紹介するに相応しい我が国の"御慶びコイン"が先日ようやっと手元に届きました。紆余曲折を経て、遂に私も小判デビューです!色んなコインを集めていて遠回りして来ましたが漸くここに辿り着きました。

江戸時代初期、約400年前"徳川家康"が慶長年間に造らせた「慶(よろこび)」の字を冠する最初の小判です。

国名:日本国

発行年:慶長6年~元禄8年(西暦1601年~1695年)

発行枚数:14,727,055両(一分金鋳造量と合算)

金品位:0.857

重さ:17.73g

特徴:前期 無刻印 細目打 1つ座人印 右刻印 推定江戸座or駿河座

 

お宝といえば「小判」!財宝といえば「小判」!埋蔵金と言えば?もちろん「小判」です。日本人なら誰でも知ってる金貨の代名詞といえばとにかく一番に小判を思い起こすんじゃないでしょうか。私も幼き頃より様々な媒体によって"小判=お宝"というイメージを刷り込まれてきたように思い出されます。祖父母と見た「水戸黄門」や「銭形平次」「暴れん坊将軍」「遠山の金さん」などの時代劇から始まり、「日本昔ばなし」なんかの子供向けアニメ、小学生時代には「スーパーマリオ」や「がんばれゴエモン」などのテレビゲームにも当然のように小判が登場し、強烈な憧れを抱いてきました。「なんでも鑑定団」にも小判が登場すればテンション上がりますし得も言われぬ魅力をいくつになっても感じます。

色々なコインを集めて一通りの憧れコインを収集し続けてきましたが何か忘れているような、モヤモヤした思いを抱えてきました。そうです、小判が欠けていたんです。日本人の遺伝子に組み込まれた強烈な憧れの対象である小判の存在が私のコレクション経験に決定的に欠けておりました!その答えに辿り着いて早数年、虎視眈々と機会を伺いながら遂に回りまわってチャンス到来!決めましたよ。我が初小判は"慶長小判"に致しました!

時は西暦1601年(慶長6年)、徳川家康が関が原の戦いで勝利した後、天下統一を果たす上で全国流通貨を目的とした額面一両の小判金が日本史上初、大々的に鋳造され始めました。江戸時代には合計約11種類の小判が鋳造されましたがその最初期にあたる家康公が直々に鋳造を命じて作らせた小判がこちらの慶長小判になります。わらじ形でゴザ目が一際美しく、金品位が他の小判に比べてほぼ最高品位となる為、観賞用として抜群、煌びやかでかなり人気の種類です。家康公ゆかりの所謂初物ですから相場はかなり高めに推移しており、小判デビューの品としてはハードルの高い選択でしたが、しかしこの機を逃すなと魂の叫びがやまず、ボーナスを跡形も無く注ぎ込んだ末の戦果となりました。平成30年最後の収穫に相応しいひと品であり、有終の美をこのコインで飾る事に致しましょう。

左:上部極印「壱両」     右:下部極印「光次花押」

表面刻印は上部に額面「壱両」、下部に金座当主後藤庄三郎光次の「光次(みつつぐ)花押」とあります。その上下に扇形の桐紋が施され、小判といえばこのデザイン、慶長小判の型式は後の小判にも全て受け継がれました。こちらの慶長小判以前の金貨には墨書で額面と花押が直接手書きされていたので極印小判の登場により大量生産が可能となって全国的に一般流通を果たしたのです。

小判の裏面は至ってシンプルになります。「丸型花押」が押されているのみ。小判によっては様々な箇所に漢字が打たれている物がありまして、その文字の種類により慶長小判以外の例えば元禄小判や宝永小判などと判別できたりします。またその小判を鋳造する際に携わった座人のサイン的な意味合いの文字が打たれている物もあり、中には「大・吉」と偶然打たれている小判があったりなんかして、江戸時代当時の収集家が珍しがってこぞって大吉小判を収集していたそうです。黄金に輝く大吉小判なんて如何にも縁起が良さそうですよね。

今回入手した小判は無刻印なので特段シンプルで綺麗です。それでも1600年代の既に400年以上経過したコインですから裏面からだけでも貫禄が物凄い出てます。17世紀の金貨は外国の物になると入手が酷く困難なほど超高額で取引されていますからある意味我が国の17世紀の金貨である慶長小判は狙い目かも知れません。直近数十年相場が動かずほぼ固定で推移してますから外国の金貨と比較すれば相対的に割安感があり、安値放置状態と判断されてもよかろうと思います。まぁそれでも安くはなかったですけど・・・。

また慶長小判には色々な種類が存在し、その特徴によって古鋳・初期・前期・中期・後期に大別されます。ゴザ目の細いこちらは前期物。更に鋳造された場所によって江戸座・京座・駿河座と分けられます。しかしこの金座の違いは未だ根拠に乏しくはっきりと「この特徴があるとこの座で作られた物」とされる定義が発見されていません。今後の研究が待たれますがどうやらこちらの小判は江戸座か駿河座で作られた物のようです。詳細は未だ公表しないよう口止めされておりますので差し控えますが、研究者の調査結果が公表される日が待ち遠しい限りです。

それにしても小判の鑑定品はまだ市場に登場する機会が少ないですね。かねてよりPCGSが付けた本物保障品でかつMSグレード以上の小判が何か出てこないかなと探していましたら慶長小判を発見ですよ。見つけてしまったからには手を伸ばさざるを得ない性です。実は一旦競り負けてしまいましたが競り終了直後、一番入札者様が辞退した事により二番札のわたくしめにお声が掛かった次第です。青天の霹靂とはまさにこの事でして、今年後半戦のオークション参加はほぼ全てキャンセル、頭の中は慶長小判のことで一杯になって入札もままならず戦に全然集中できずに過ごして参りました。資金的問題が一番大きかったですが。

撮影モードを変えて様々な雰囲気の風合いを切り取ります

堂々とした姿が映えますね。流石小判。それにしても他の慶長小判と比較してこちらの慶長はゴザ目が特別多く、横一直線に鏨(たがね)で打たれて並んでいるため非常に綺麗です。多くの場合ゴザ目が途切れるのが普通となりますが今回入手した小判は途切れが極端に少なく、表面全体に深く打たれていて比較的珍しい物と、譲ってくださった方もおっしゃっておりました。色艶も完全未使用の輝きを有し、更に海外第三者機関である鑑定会社が客観的にMS63グレード相当と鑑定した江戸時代の金貨ですからコレクションとしてこれほど時を越えた浪漫を感じる、満足いくものはありません。時を越えた郷愁への旅路(ノスタルジアドライブ)とはこの気持ちの事だったのでしょう。嬉し過ぎます。

更に本品の特徴として小判真ん中右側にヘゲが出ています。金属であるコインには現行貨であっても度々ヘゲが出る物がありまして、これはコイン鋳造時の先天的特徴と言え一部マニアの間では高く評価されています。特に小判では享保小判以前の物に多いそうで、ハイグレードでヘゲもある贅沢な一品として無限に楽しめそうです。

保管方法はもちろん堂々の桐箱!譲ってくださった方がこちらに入れて送って下さいました。本当に感激です。特殊なスラブでスマホぐらいの大きさがあるしどうやって保管しようかと悩んでおりましたがこれほどベストなものはありません。やはり大判小判は桐箱が似合いますね。家宝として末永く大切に所有していきたいと思います。

そういえば慶長小判と言えば数年前に放送されたお宝サロンの番組で慶長小判の物凄いコレクター様が出演されてました。改めて録画を見返しておりますが、いやぁ感服致します。この方の研究資料はプライスレスでしょう。色々御話を聞いてみたいですし、是非書籍にして研究結果を出版して頂きたいレベルです。憧れます。

最後にPCGSのホームページ画像も拝借して掲載しますが、素晴らしい色合いで登録されていました。日本人のみならず外国人もこのわらじ形のカッコいいコインに魅了されてやまないはずです。

近年では明治以降の西洋に倣った完全な円形である旧20円金貨などの近代貨幣が如何にもコインらしい佇まいで人気がありますが、わらじ形の金貨なんていうのは世界的にも珍しく人類史上我が国の小判だけがこのような形で流通していました。江戸時代のご先祖たちもなかなか粋な事をしていたじゃあないですか。発行した幕府もそんな小判に憧れた江戸町人達の生活もその史実を全てひっくるめて良いセンスです。先日東京を訪れましたが地名や通り名などが江戸時代を彷彿とするものばかりだったので、あぁやっぱりここ東京は大江戸なんだなと改めて感慨深く思いました。1600年代から現在まで栄え続ける大八州(おおやしま)の中枢で、富の象徴として誕生し、活躍し続けた小判に宿る歴史を夢想するだけで実に心ときめくひと時を味わっております。

 

そろそろ改元の年が近づいて参りましたが、この年の瀬は縁起の良い慶長小判の御利益にあやかって静かに過す予定で御座います。この一年は祝儀も不幸も様々個人的にありましたがコレクションの面では大収穫年となりました。既に来年の各種オークションも胎動し始めてますし、コインを愛する皆々様に泉運あらん事を心より祈念致しまして今年のブログ記事はこれにて〆たいと思います。それでは皆様良いお年を。