TVドラマの「ふたりっ子」「功名が辻」などで有名な脚本家であり作家でもある大石静さんの言葉に「立ち直り三か条」があります。


 「人のせいにしない」「自分だけとは思わない」そして「何とかなると思う」。私もいろんなスピーチに使わせていただいています。彼女自身、女優を目指した道からの断念、離婚、弟の借金の肩代りなど挫折と絶望と栄光で色取られた人生を歩んできただけにエッセイなどの文章も味わい深い。最近読んだ中から三つの話を。


 ある大会社の社長さんが言った。『上司が有能か馬鹿かは、三日もあれば部下にはわかる。しかし、部下ができる奴かダメな奴かは、三年見ていてもわからない場合がある』なるほどと思った。


 松下幸之助さんに、若き日、薫陶を受けたある経営者は、来客を必ず見送るそうだ。相手の背中を見るために・・・・・。相手の育ち、志、自信のあるなしは、背中を見れば、かなりの確率で見抜けると、その人は言った。その話を聞きながら、私も思わず背筋を伸ばした。


 上方落語界の重鎮で人間国宝の桂米朝師匠が、テレビのトーク番組で発言されていた。『芸人はお客に育てられるものですが、一方でお客も育てなあかんのです。目先の評価や小手先の笑いのために、流儀を変えたらあきません。話の格が落ちます』思わず目の前の新聞の余白にメモを取っていた。



( 大石静 「ニッポンの横顔」中央公論新社 )