毎日スキルアップ通信『小さな会社のブランド戦略』 | 難しい時代を生き抜くための読むサプリメント

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毎日スキルアップ通信
(当分の間、毎週金曜日に発行)
           2021年4月30日(金)

        中小企業診断士 川野圭介
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 今日は1年でいちばん毎スキを読んでくれる人
が少ない日かもしれません。

 皆さまのなかには、ゴールデンウィークが終わ
った5月6日か、あるいは10日ぐらいにこの号
を読まれる方もいらっしゃることでしょう。

 ただ、リモートワークが広まり、会社の休みに
関係なく、会社に届いたメールを自宅で確認でき
る人が増えているかもしれません。


 皆さまはゴールデンウィークをいかがお過ごし
です。

 わが家は去年に引き続き今年も巣ごもりウィー
クとなりそうです。


 コロナ禍においては、安全を考え、遠くに行く
よりも近くで遊び、遠くで採れる野菜や果物より
も身近な場所で採れる野菜や果物を口にすること
が増えたのではないでしょうか。

 商品やサービスも、より身近なものが求められ
るようになりました。

 これからは個人、小さな会社でも、地域社会の
なかで自分らしさを出しながら繁盛することが
できる時代になりました。

今日取り上げるビジネス書は
『ブランディングで全部うまくいく』

 個人や小さな会社が、身近で小さな市場の中で
自分らしさを出しながら稼ぎ続けることができま
す。

 そのためのブランド戦略について書かれた本を
今日はご紹介します。


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第17回
『小さな会社のブランド戦略』
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【1】モノではなく価値を売る

 ビジネスは商品やサービスを売ってお金に換え
ることで成り立ちます。

 ただ、それにとらわれすぎるから、世の中の
多くの事業者が苦戦しているのではないでしょう
か。

 お客様は何にお金を払うのか。
 商品やサービスよりも大事なものにお金を払い
ます。

 それは、商品やサービスによってもたらして
くれる「価値」です。

 ビジネスで売るのは商品やサービスではなく
「価値」なのだと考えると、売れるようになりま
す。

 スーパーやコンビニ行っても同じような商品が
たくさん並べられていて、どれを買ってよいか
わかりません。

 品質はどれもこれも似たり寄ったり。。
 その中からどれを買うか?

 人は、それを買ったら、自分が気持ちよくなる
だろうなと想像できるものを買います。

 商品やサービスを購入することで得られる気持
ちよさを「情緒価値」といいます。

 バルミューダのトースターは他のトースターと
比べてかなり高額です。

 美味しくパンを焼けるという機能価値はもちろ
ん否定できませんが、それだけで人はこの高額
商品を買っているわけではありません。

 デザインが美しく、世界的にも知られている
この商品を自分の台所に置きたいからこの商品を
買うのです。

 バルミューダで素敵な朝食をとる光景を思い浮
かべながらこの商品を買うのです。

 無印良品が選ばれるのも、ブランド自体が持つ
「シンプル」という世界観に惹かれるからです。

 共感を得られる商品やサービスこそ人から求め
られるのです。

 だったら、儲けるためには共感をよりたくさん
集めたいものです。

 でも、ここで欲をかいて、すべての人から共感
を得ようとすると、すべての人に不快にさせまい
と商品やサービスを開発するので、できあがった
ものは、平坦でつまらなものになります。

 誰にでもいい顔をしようとすると、可もなく
不可もない平凡な商品になってしまいます。

 そうなるとレッドオーシャンで戦わなければ
いけなくなります。

 価格で勝負するしかありません。
 小さな会社が、価格競争で大きな会社に勝てる
はずがありません。

 たくさんの人からそっぽを向かれるくらい
尖っていなければ、商品やサービスから魅力は
引き出せません。

 考えるべきは、少数の人により強い情緒価値を
引き起こす尖った商品、サービスです。

 できれば少数派の本人でさえ気づいていないよう
な価値、隠されたホンネに応える商品、サービスを
つくりたいものです。

 「本人さえも気づいていないホンネ」のことを
専門用語で「インサイト」と呼びます。


「そうそう、それが欲しかったんだ。どうして
 わかったの!」

 と、感動を生むような商品やサービスが、まさ
にお客様のインサイトを満たし、強い情緒価値を
引き出します。



【2】自分らしさを考える

 ただ、どれだけお客様の心を捉えていても、
自分の苦手な分野、関心のない分野のビジネスで
は長続きしません。

 あなたが稼ぐことができるビジネスは、
 「インサイト」と「自分らしさ」の交差点に
あると考えていいでしょう。
 
 自分らしさとは何でしょう?

 自分らしさは、「価値観」と「得意なこと」の
2つで成り立っています。

 自分の価値観を損なわないこと、
 自分の得意なこと

 この2つが「自分らしさ」の条件です。


 ただ、「自分の価値観」と言われてもピンと
こない人もいることでしょう。

 その場合は、自分の人生を振り返ってみましょ
う。

 生まれてから現在に至るまでの出来事を細かく
思い出しなが、次のワークに取り組みます。

1)今の自分に大きな影響を与えた出来事を
  5つピックアップする

2)その体験から感じたことを書く

3)そこから人に伝えたいメッセージは何?

 生い立ちを素直に捉えていくことで、情緒価値
につながる価値観を見つけ出すことができます。

 それでも、自分ヒストリーの振り返りがうまく
できない場合は、次の質問から考えてみます。

・時間を忘れて夢中になったこと
・心がついてこないなと感じたこと
・あのときの自分は好きだったと思えたこと

 いかがですか。
 自分らしさとは何なのか見えてきたのではない
でしょうか。



【3】お客様の隠されたホンネを知る

 自分らしさが何なのか見えてきたら、次にやる
ことは「ペルソナ」の定義です。

 ペルソナとは、プロフィールを細かく想定した
架空のユーザーのことをいいます。

 自分らしさをぶつけて、共感を得られる理想の
お客様、つまりペルソナを思い描きます。

 趣味や性別のほか、名前もフルネームで決めま
す。

 「40代女性」みたいな、ざっくりした設定では
ダメです。

 ペルソナは「理想のお客様」をイメージしなが
ら考えます。

「この人の役に立ちたい!」
 自分の「価値観」に共感してくれそうな相手を
想像します。

 あなたをひいきにしてくれるお客様がいらっし
ゃるのであれば、その方をペルソナにしましょ
う。

 自分自身が昔、悩んでいたことを解決する商品
やサービスをつくるのなら、過去の自分自身が
ペルソナになります。

 ペルソナは時間をかけて、ゆっくり作り込みま
す。

 ペルソナの心の奥に深く入り込めるよう、時間
をかけ、集中して取り組みます。

 本名、年齢、住まい、家族構成、職業、収入、
月に使えるお小遣い、性格、趣味、得意なこと、
職場・友人との人間関係、ライフスタイル、
読んでいる雑誌、好きな本のジャンル、普段情報
収集しているサイト、お金の使い道、出没スポッ
ト等々。。

 しっかり作り込めば、たとえばビジネスが思う
ようにいかないと感じたときに、改めてペルソナ
を確認することで、原点の気持ちを思い起こす
ことができるようになります。

 時代が変われば、ペルソナも変わります。
 一度ペルソナが完成しても、ビジネスを進める
うちに「やっぱり違う」と感じることもありま
す。

 ペルソナは何度書き直しても大丈夫です。
 ペルソナを書き直すたび、ビジネスの方向性も
徐々に固まっていきます。


 ペルソナをつくったら、次にインサイトを探っ
ていきます。

 ペルソナの「悩み・不安・不満・願望」を
書き出していきます。

 たとえばあなたが考えたペルソナがワーキング
マザーであったとします。

「ご飯のときに、子供が"遊び食べ"ばかりで
 なかなか食べてくれない」
「この癖が直らなかったらどうしよう」

 このように、普段からその人が言葉にしそうな
悩みを書き出していきます。

 書き出した悩みに対して、
「本当に?」「そもそも?」「なぜ?」「ほかに
は?」「それで?」と問いかけてみます。

 たとえば、「遊び食べに怒ってしまう」とうい
う悩みに、「本当に?」と問いを投げかけてみま
す。

 するとつぎのように、秘められた気持ちが見え
てきます。

「怒ってしまうのは、子供のせいじゃないかもし
 れない」

 あるいは、「遊び食べが直らなかったらどうし
よう」という不安に、「ほかには?」と問いかけ
てみます。

「私の料理が美味しくないのかな・・・」
と、別の不安も見つかるかもしれません。

 このように、どんどん書き出したところで、
次に、共通項を探してグルーピングしていきま
す。

「これとこれは自信がないことが原因だよね」
「こっちは理想と現実とのギャップから生まれた
 気持ちだよね」

 グルーピングで導き出された共通項こそ、
根本的な原因、つまり、インサイトです。

 ここまで深掘りしていくと、次のように返せる
ようになります。

「最近、子供が食べ遊びして困っているの」
「ほんとうは、食事をきちんと教えられない自分
 が情けないと思っているのでしょう」
「あなたの悩みを解決するのは、子供のしつけ方
 を学ぶことではないと思う。あなたは十分に
 頑張ってます。あなたに必要なのは自信をつけ
 ることなの」

 自分の悩みの根本的な原因はこれだったのかと
本人もハッと気づくはずです。

 表面的な悩みが真の悩みではありません。

 心の奥にあるインサイトをあなたは見つけられ
るようになります。

 お客様の本音(インサイト)が見つかれば、
これに「自分らしさ」を掛け合わせます。

「自分らしさの条件」×「インサイト」=「ビジ
ネスの種」となります。

 ビジネスの種を見つけたら、ペルソナのインサ
イトをあなたの商品やサービスが満たしていく
ストーリーを想像しながらつくっていきます。

 ビフォー・アフターのドラマをつくります。

 アフターまでの道のりは、ペルソナを主人公に
したサクセスストーリーです。

 アフターへの道筋を細分化し、ストーリー仕立
てにするのです。

 一度習って終わり、1つ買って終わり、ではなく
継続性を持たせます。

 そうしないと、新規顧客ばかりに労力を割かれ
ることになります。

 レッスン1を受けると、ここまでスキルがつき
 レッスン2を受けると、ここまできます。

というように、継続性をもたせながら、ペルソナ
の抱える真の問題を解決していくストーリーを
組み立てます。

 このようにビジネスの種を見つけ、自分らしく
お客様の気持ちに思いやりながら伴走します。

 自分らしさを尖らせ、自分だけの独自ポジショ
ンを見つけ出すのです。

 個人、小さな会社が戦いを避け、心穏やかに
生き残るためには本日解説したようなブランド
戦略が必要です。



参考図書
『ブランディングで全部うまくいく』
 村本彩 1,430円 
 (2021.3.10 総合法令出版)