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4篇の犯罪例で構成されています。

 

類似した事件があったなァ・・・!?

そんな内容です。

 

犯罪に巻き込まれてしまった人

犯罪に手を染めた人

踏みとどまる人

転落してゆく様

出会う相手

面白さより、何か示唆をしている強烈な作品でした。

 

 

青田Y字路 (あおたのわいじろ)

 

二十年近く前、中村洋子は母国を離れ、結婚のために日本を訪れますが、二年と持たずに離婚。

それを機に当時七歳だった息子・豪士を日本に呼び寄せる。

今は豪士だけがそこに住み、洋子は菅原という男の元で暮らしていました。

豪士は地元の介護福祉施設に就職しますが順応できず退職し、

二十五歳の今も洋子に養ってもらっています。

ある日、藤木愛華(小学生)が行方不明に!

愛華と最後に会ったのは友達の湯川紡で、

白い車が現場付近に止まっていたといいます。

そして、Y字路の用水路から彼女のランドセルが見つかります。

が、ついに愛華は見つかりませんでした。

 

最後に、事件当時の描写があります。

愛華は紡と別れ用水路にかかる橋へ。

そこで豪士が泣いていて、愛華は持っていた花冠を彼の頭にのせてあげます。

愛華は一言声をかけ、立ち去りますが、

豪士は追いかけようと立ち上がり、花冠が落ちます。

ここで描写は終わっていますが、愛華の失踪に関し豪士が関係しているのか???

 

曼珠姫午睡(まんじゅひめのごすい

 

英里子とゆう子は小学校・中学校とも同じクラスででしたが、

特に親しくしていたわけではないので、卒業後は交流もなく、

三十年以上が経過。

英里子は、ゆう子が殺人の容疑で逮捕されたとニュースで知ります。

英里子はその後のゆう子の生活を知ります。

ゆう子は次々を男と関係を持ち金を貢がせていました。

英里子はゆう子の人生を見下す一方で、色欲に満ちた彼女の人生を羨ましく思います。

 

英里子が利用するエステサロンでは、客が望めば卑猥な施術をしてくれるという噂が流れていました。

英里子はゆう子の味わったものを自分を感じたいとエステサロンに予約を入れます。

セラピストは英里子にその気があると判断し、敏感な部分に触れようとしますが、

英里子はそれを拒否します。

英里子は自分が普通の主婦であった事に気づいたのでしょうね。

 

百家楽餓鬼(ばからがき)

 

永尾は大手運送会社『永尾運輸』の御曹司。

 

永尾は大学を卒業すると『永尾運輸』に就職し、

立ち上げたばかりの医療廃棄物焼却事業を軌道に乗せます。


その後、由加里と出会って結婚。

彼女がこれまで力を注いできた、アフリカを訪れ、

難民を支援するというNGO活動に感銘を受け、

自らも参加すると同時に『永尾運輸』として積極的に支援。

企業イメージの上がった永尾運輸はさらに業績を上げていきます。

 

ところが、殺人的に忙しい合間に息抜きとしてカジノに手を出すと、

永尾の人生は急降下していきます。

金がなくなれば子会社である『永尾ファイナンス』から金を借り、

それを元にカジノにつぎ込む。

その金額が百十八億円に達したところで警察が動きます。

永尾ファイナンスの社長が情報をリークしていて、

永尾が日本に帰国次第、背任罪で逮捕される流れになっていました。

 

この頃、永尾は現実と妄想が入り乱れるようになっていて、

心の中では理想を唱えつつも正気を失っていました。

背任罪で逮捕される事を感じ取ったのか、

大量のハエが彼にたかっているのに振り払おうとしません。

また、赤ん坊をおんぶした女の子から配給されたパンとスープを奪い取り、

食べようとします。

女の子は返してと永尾の腕にすがりますが、

永尾はスープの入った皿を放そうとしませんでした。

 

 

万屋善次郎 (よろずやぜんじろう)

 

善次郎は妻を亡くして後に佐久集落に住む老いた父親を介護するため、

生まれ故郷に戻ります。
父親を看取った後も集落では雑用を押し付けられますが、

それもしっかりとこなしていきます。

彼は生活する手段として養蜂を始めます。

これが軌道に乗り、集落は活気づきます。

 

ところが、ここで不運なことが起きます。

村おこしに必要な助成金を申請します。

申請はあっさり通りますが、結果として集落のまとめ役である伊作への報告が遅れてしまいました。

二人の関係に亀裂が生じます。

さらに善次郎はレオという大型犬を飼っていましたが、レオが村民の一人に噛みつき、

以来日中の散歩を禁じられます。

この件も合わさり、善次郎は村十分状態となり、

家からもほとんど出てこなくなってしまいます。

 

そして事件が起きます。

伊作を含めた六人の死体が発見され、報道陣が殺到。

善次郎とレオの姿が見つからず、彼がやったのだと誰もが口にします。

犯人捜索の結果、腹部を自分で刺して重傷を負った善次郎が見つかります。

 

白球白蛇伝(はっきゅうはくじゃでん)

 

早崎弘志というプロ野球選手と彼に関係した人たちの物語です。

山之内という記者は彼が高校生の時に初めてインタビューをし、それから26年後、

彼の息子の大成のリトルリーグの試合を観に来ていました。

 

一旦、弘志の昔の話になります。

 

弘志は大学卒業後、Xというチームに破格の条件で入団。

目覚ましい活躍を見せます。

私生活はテレビ局に勤めていた美人記者(優里)と結婚。

 

ところがその後、故障などを理由に思うように成績が残せず、

31歳という若さで引退することとなります。

 

一方、運送会社を経営する田所は順調な人生を歩んでいました。

田所は弘志の大ファンでしたので引退した彼を雇います。

が、弘志は昔の浪費癖が抜けず散財し、給料の前借が続きます。

さすがの田所もこれ以上も前借は無理だと断ります。

すると逆上した弘志は田所を金づちで殴り、田所は一命を取り留めますが、

寝たきりになり、しばらくしてから息を引き取ります。

こうして弘志は殺人犯となり、優里や息子の大成は世間からバッシングを受けることになります。

 

そして冒頭に戻ります。

大成は母親の実家がある北海道に引っ越す予定で、

これが最後の試合となります。

山之内もこの試合を観戦し、大成がマウンドに上がると声援を送ります。

大成の好投でチームは大逆転を果たし、試合終了まであと一人というところまできました。

ところがここにきて大成は涙を流し、良いピッチングを出来る状態ではなくなります。

それでも彼は渾身のボールを投げますが、次の瞬間、金属音が鳴り響きます。

描写はここで終わり・・・

おそらく大成は打たれ、最後の試合を勝利で飾ることは出来なかったのでしょう。