※妄想のお話です。
二宮さんの事情は次回で。
コメントはごめんなさい、明日か明後日に
一気に返させてください。゜(´∩ω∩`)゜。
今日は粗塩だね!
あ!らじおだね!←
「何でここにカズが…?」
智くんが訝しげに尋ねる。
「何で、って…仕事。俺、今MJと組んで歌作ってるのよ。」
「えむじぇ…あぁ、相葉ちゃんのやつか…。」
納得して俯く智くん。
とは裏腹に、二宮が首を小さく横に振る。
「…嘘。アンタ探してた。仕事忙しいからロケ地がここになるよう誘導して仕事のついでに来た。
まさかそっちから来てくれるとは思ってもなかったけど。探す手間省けたわ。」
「いやおいらだって別に連れてこられただけで…ビビッたわぁ。よくこの島にいるってわかったね?」
「まぁ、そこはちょっとね。色々ハッキングして。」
…ハッキング?
ものすごく穏やかじゃないんですけど…?
「…まさかの同業者のメールだとは思わなかったけど。」
二宮は俺をちらりと一瞥し、興味無さそうにまた智くんを向き直す。
そっか、と智くんが呟き、そのまま2人とも黙り込んでしまった。
な…何?この沈黙。
あの天下の相葉くんすら今空気読んで黙ってるよ?
事情を聞きたそうにだいぶキョロキョロしてっけど。
…ん?同業者って俺?メール…?
…あっ?!
親父に送ったメールに大野智さんに世話になってるって書いたあれか!?
俺のメールで智くんが…ってだからハッキングって何?!?!?!?
誰かつっこんでよ!!!
「おい和…って、え!?翔くん?!」
突然松本が現れ、文字通り飛び上がる。
「じゅ…松本っ!」
潤、と久々に顔見たら呼びそうになって慌てて苗字に戻す。
関係性を問われたら困るのは俺の方だ。
こっぴどくフラれた側なんだから。
「何?俺のストーカー?」
「んなわけねぇだろ!俺のが先にここにいたんだよ!」
「わあああああ本物のMJ…!ちょっと、翔ちゃん知り合いなのー!?聞いてないんですけどー!!」
「あぁ、こんにちは。君、俺のファン?…ん?え、マジ…?智…?」
はっ?!
智…って何だよ!!?!?
「…えっ、松潤…?」
智くんの言葉にぎょっとする。
し、知り合い…!?
「…っ!急に消えるからっ!心配したじゃねぇか…っ!!!」
松本が智くんを…思いきり抱き締めやがった!!!!
「心配…?何で?」
「…はっ?」
「何で、松潤が心配するの?」
きょとんとして本気で不思議そうな智くんに、松本が青ざめる。
「……お前……。」
…いや、ちょ、ちょ、ちょ、待って!
智くん、二宮だけじゃなく松本とも知り合いなのかよっ!??!
何これ偶然!?怖いんですけど!!
どうなってんだよ!!
「うそでしょ、潤くんも智と…?」
二宮がひどく驚いて、はぁ、と大きくため息を漏らす。
「…まぁいいわ。とにかく俺ら仕事あるから戻ろ。
ほら潤くん、あなた一般人抱きしめてたら変な写真撮られますよ。いくら人のいない島だからって。
俺の横幅そんな無いんで、盾として期待しないでよ。」
「あ…あぁ、悪い…」
松本がそっと智くんを離し、「明日も島にいるから。電話して。」と番号を渡す。
智くんは受け取らなかったけど、無理矢理智くんの手に押し込んだ。
「電話して。…頼むから。」
松本の切羽詰まった顔と声に、智くんがついに曖昧に頷く。
そうして2人は撮影隊の中へと帰っていった。
「んー!じゃ、行こっか?」
「「えっ」」
智くんの予想外に軽い口調で言われて俺と相葉くんがハモる。
伸びをしていた智くんは俺らの声に逆に驚いている。
「あ、まだ見たい?いいけどおいら釣りしたいから…。晩飯魚がいいし。」
「え…あ、俺…もうちょっと撮影見てくね!」
「そっか。ほんじゃ相葉ちゃん、またねぇ。」
「う、うん。」
あまりのマイペースな感じに相葉くんが押されてて、いつもの逆だな、なんて暢気なことを思った。
戻ってきた釣り場には勿論竿など変わらずに置いてあった。
つくづく良い島だ。
防犯なんて必要ないと改めて知らされる。
何も言わずとも2人で腰掛ける。
俺は左。
智くんは右。
いつの間にか出来た、2人の定位置。
「…まさかあなたが松本まで知り合いだったなんて…」
「松潤?ん~知り合いっつーか。おいら施設出てから金なくて東京でカラダ 売 ってた時あってさ。
まぁ向こうが勝手にくれてただけだから小遣いみたいなもんだったけど。
そん時の…ああ、言ったね、おいらを家に連れてった客。」
カチャカチャとカラフルな仕掛けを眺め、どれにしようか悩んでいる横顔からは動揺の色は見てとれない。
「『こんな仕事辞めろ』つってきて、おいらも気持ち悪いオッサンとか嫌だし松潤家で住むように言われたから思わず言うこと聞いて住んでたんだけど…勝手に出てきちゃったの(笑)
アイツ変な奴だよなぁ。有名人だったんだ。だから金余ってたんだな~。
ちゅーか先生の見返したい『松本』ってアイツか…毒舌っぽいもんな~(笑)」
笑いながら俺の分の釣竿を準備して「ほい」と渡してくれる。
──どうして、松潤が心配するの?
松本は十中八九好意で家に呼んだはずだ。
智くんは…それに気付かず、ただ『自分とヤ リたいから囲ってるだけ』ととらえてたんだ。
話を聞くに、二宮もそういうことか…?
いや、多分…。
「…あのさ、智くん。二宮って、もしかして。」
「ん?二宮…?」
智くんがきょとんとした後、ああ、と何か思い当たったような顔に変わる。
「カズかぁ。アイツ今二宮っちゅーんか。」
笑いながら智くんがひゅんっと釣竿を投げる。
穏やかな水面にぽちゃんと水のわっかが広がっていく。
俺も同じように投げるけど、だいぶ手前にぼちゃんと落ちる。
「…施設で一緒だった…?」
小さく聞くと、智くんは「そーそー」と笑う。
「親友っつってた奴。カズは引き取られてって、おいらは誰からも引き取られず施設で育ったから…苗字違うの忘れてた(笑)」
襲 われ、役割だと言われ、捨てられた親友。
「…話、しなくてよかったの?色々言いたいことあったでしょ?」
「何で?別に何もないよ?」
あっけらかんと智くんが言う。
「あなたのこと…そんな風にしておいて…」
「そんなって…襲 われたやつ?別に何も?おいらの役割教えてもらえてよかったし。」
「…っ、そんなの役割じゃっ…」
「何で?皆喜んでくれて、おいらも役に立てて嬉しいし。減るもんじゃねぇしな(笑)」
「減るよっ…!減ってるんだよ、あなたの精神がっ…!!
お願いだから自分を大事にしてよっ…!俺が言うのも何だけど…!!!」
思わず立ち上がり、怒鳴る。
智くんがじっと俺を見上げ、「せんせぇ?」と舌ったらずに呼ぶ。
「…何…?」
言っとくけど俺は。
そんなことをあなたが思ってるなら、この先指ひとつ……っ!
「魚逃げる。静かにしろ。」
「あ………ハイ。」
……いまいち決まらない……。
「まー、せんせぇが言いたいことはわかるよ。」
しばらくして、智くんが小さく笑う。
「けど、そしたらおいらどうやって生きてったらいいかわかんないんだよ。役割急になくなっちゃったら困るもん。」
「…あなたは…そんなことしなくても、十分誰かの為になってるのに…。」
…少なくとも、俺はあなたが傍にいてくれたらそれだけで──。
俺は、あなたのことを本気で──。
そう、言えたらよかった。
「んふふ、あんがと。」
なのに智くんの『ありがとう』に俺は、黙り込んでしまった。
後悔とは、後に悔やむと書く。
その通りだ。
いつだって悔やむことになるのは全てが終わってから。
俺は、この時告白をすべきだったんだ。
愛してるって、本気で想ってるって、そう言葉で告げるべきだったんだ。
そうしたら、何かが違ってたかもしれないのに。
…それがただの自惚れだったとしても、こんなに悔やむことはなかっただろうに。
「おいら、和と本土に住むことになったよ。」
翌日。
松本に電話した後どこかへ出かけていた智くんは、帰るなりどこか寂しそうに笑った。