master piece23 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

 

もうちょっとの辛抱です。

限定はもうすぐです。

 

毎日色んなコンテンツがあって振り落とされそうになるし

情報過多でわけわかんなくなって目の前を見失いそうになる度、

櫻井さんの

「俺はあえて言う。ついてきてほしい。あなた達に絶対についてきて欲しい。」

っていうあの力強い5×20のメッセージが浮かんでエンジンかけ直してる。

ついてく。

絶対についてく。

全速力で駆け抜ける背中を絶対に見失いたくない。

他のものが落ちても振り返らない覚悟でついてくから、って。

ただ、毎度思う。

風速上げすぎじゃないっすか兄さん方!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、絵以外の智くんの夢はないの?希望とか今後の展望とか…あるでしょ、何か。」

 

とりあえず笑いすぎて暴れてしまいそうだから話を変えてみた。

 

「…まぁ、あるっちゃぁ、あるかな。」

 

智くんが小さな声で言う。

 

「え、教えて!あ、差し支えなかったら!!」

 

人に簡単に言うものじゃないのかもしれないけど。

 

単純に知りたくて。

 

大野智のこと、何だって。

 

「おいらねぇ」

 

「うんうん!」

 

 

「仙人になりたい。」

 

 

「せ…」

 

ん、にん?

 

ってあの、山の…?

 

「えーと。智くんの言う仙人って、」

 

 

「「髭の」」

 

 

ああやっぱり。

 

いや全然わかんねぇ。

 

「それって具体的に…」

 

「なんかさぁ。自由に生活したいんだよね。」

 

この人…

 

自由に生活してるんじゃねぇの…?

 

「自分の力で生活して、色々見てみたいの。世界、広いじゃん。色んなものを自分の目とかで感じたいんだよ。おいら、今けっこー自由でしょ?」

 

大きくうなずく。

 

あなたが自由でなくて誰が自由と言うのだろうか。

 

それに自炊もして一人暮らししている智くんが『自分の力で生活』してるに入らないのであれば、

 

実家に居座り続けながらお手伝いさんに全ての家事をしてもらい

家出(?)して尚他者の家に居候してる俺の立場は…?

 

「んふふ。だからね、もっともっと世界を広げて自由~に生活したい。この島大好きだけど、いずれは出たいし。」

 

「…そう、なんだ…。」

 

智くんは俺に海へ突き落して『経験しないとわからない』ということを教えてくれた。

 

つまり智くんは、まだ『自由』を感じてないんだ。

 

自分が経験し、それを自分のものとして取り入れる。

 

視野を広げる。

 

智くんの世界はこんなものじゃないんだ。

 

俺が自由だと思っていたのは、氷山の一角に過ぎない。

 

当然だ。

 

世界は笑ってしまう程に広いんだから。

 

「…少しだけど…気持ちがわかるかも。俺、世界旅行したいし。」

 

「そうなんだ!色んな景色見たいよね。言うてここももう一年だしな~。」

 

一年しかいないんだ。

 

もっと長いんだと思ってた。

 

「あとは…仙人が終わったら、帰る場所が欲しいかな。ただいま~っつって、アイスルヒトのところに。」

 

「…え…?」

 

「なんつって。」

 

照れくさそうに笑う横顔は、『そんな無茶なこと』と思っている風に見えるのは俺の気のせいではないと思う。

 

仙人が終わったら、なんて支離滅裂なことはさておき。

 

 

ねぇ、智くん。

 

あなたの人生、一体何があったんだよ。

 

母親のせい?

 

多分、それだけじゃない…よね?

 

 

「愛…って…」

 

「…ダメだな、はずいな(笑)ちゅーかイタいな(笑)」

 

「いや…そうじゃなくて…」

 

「ああ、ごめんごめん。この前先生に偉そうに言っといてね(笑)でもおいらと先生は違うからさ。大丈夫だよ。おいらね、そういうのはわかんの。」

 

智くんが柔らかく笑うけど、いくら見てたって視線は一切絡まない。

 

「『愛されてこなかった』人間にはね、『愛される人』『愛することが出来る人』がどういうのかわかんの。だから先生は大丈夫。」

 

智くんが卑下する様子もなく、優しく微笑みながら言う。

 

グツグツ、湯気が換気扇へと流されていく。

 

 

智くんの姿を、くらませながら。

 

 

「どうして…そんなこと言うの?俺と違う…だなんて…。」

 

俺が一体何に傷ついてるのかもわからないけど、胸がぎしぎしと痛む。

 

お願いだから、そんな風に言わないでよ。

 

俺とあなたは、確かにタイプは真逆かもしれないけど、本質的なところは違わないでしょう?

 

 

「おいらさぁ、人生で三回捨てられてんだよ。」

 

智くんがさらりとそう言い、綺麗な指を折って数える。

 

「父親が蒸発した時とー、母親がおいらを置いて出てった時とー、ほんで、親友。」

 

親友。

 

そのワードに聞き覚えがあった。

 

──確かね、親友に言われたんだって。おーちゃんはそういう『役割』だって。『その為に生まれたんだよ』って…。

 

相葉くんに教えてもらった智くんの過去。

 

誰にでも…というこの生活の元になってしまった人。

 

「親友…にも…?」

 

「んー。すげぇだろ?(笑)だから、愛情みたいなんに無縁っちゅーか。おいらは全然楽しく生きてるからいいんだけどね?けど先生とこの前話してて、なんかいいな~って思って…あはは、影響されやすいな。」

 

無縁。

 

智くんがあまりに気取らず普通に言うから軽く聞こえるけど、その人生は壮絶でたくさん心に傷を負ってきたんだろう。

 

それなのに、親友とやらは。

 

そいつは…智くんを襲 っておいて、また捨てたっていうのか…?

 

どんな境遇かわかってた上で、そんなこと……

 

ふざっけんな…!

 

 

「あのさぁっ!」

 

 

思ってたより大きな声がでてしまって、智くんが驚いてこちらを見る。

 

「ご、ごめん。けど…そんなんおかしいよ。違わないよ。むしろ俺よりよっぽど智くんのが凄いのに。優しいのに。智くんは愛されるべきだよ、誰よりも。現に相葉くんとか…」

 

──俺とか。

 

と言いかけて慌てて口を噤む。

 

何を言いかけてんだ、俺は。

 

「相葉ちゃんはそーゆーんじゃないよ(笑)」

 

本当だろうか。

 

執着しているかと言われればそうは見えないけど、俺に対して相葉くんから感じるのは紛れもなく嫉妬だ。

 

 

「まぁ、正直おいら結構モテるんだけど

 

 

急に。

 

いやそうだと思ってますけど、急に感じ悪いな!?

 

「モテるっちゅーか、ハマられるっちゅーか…。相葉ちゃんみたいにね(笑)けどさぁ、好きとアイはちょっと違うだろ?

おいらのことハマッてもそれはアイじゃないし、逆においらもみ~んな大好きだけど、アイしてるかって言われたら違うかな~って。」

 

…あ、わかる気がする。

 

俺も正直かなりモテてきた。

 

いやもう履いて捨てる程、俺のこと好きな奴はごまんといた。←「急に感じ悪い」のブーメラン

 

それでも…愛されては来なかったと思う。

 

逆もまた然りだ。

 

松本のことも、好きじゃなかったとは言ってるけど、普通に好きか嫌いかで言ったら好きだったと思う。

 

そもそもメリットがあっても心底嫌いな奴とは付き合えないし。

 

けど、愛なんて感情は一ミリもなかった。

 

それが自然だった。

 

無償の愛、みたいな、相手のことを想いやって自分のことは考えないなんて

 

智くんが今やってるようなこと、俺には考えられなかった。

 

…今なら、少しだけわかるような気がしてるんだけど。

 

 

「あ、先生はおいらににハマんなよ?」

 

「…えっ…?」

 

 

ドキッと、した。

 

別に、何も困ることはないはずなのに。

 

「だって、先生は本当の恋愛がしたいんでしょ?おいらじゃ無理だからね(笑)」

 

……どうして?

 

口にしなくても顔に出てたんだろう、智くんが「だってさぁ」と笑う。

 

「海の歌は、海に入んないと作れなかったでしょ?それと一緒。アイされた人しか本当の恋愛なんて出来ねぇよ。

先生とおいらは真逆で、背中向き合ってるみたいなもんだから。だから先生には出来るけど、おいらには無理!」

 

 

そう。

 

そうだよ、真逆だ。

 

俺の見る世界とあなたの見る世界は、恐らく全く違うものだ。

 

両極端にいると言われても否定はしない。

 

 

だけど

 

違わない。

 

 

俺もあなたも。

 

 

「絶対に…違わないよ。それに、あなたは本当は…。」

 

 

皆から愛される人だと、俺は思う。

 

いや、既に愛されてるって…思うんだ。

 

身体を提供してなくたって、きっとあなたの周りには人がたくさん集まってきて

 

口数多いわけでもムードメーカーなわけでもないのに、気付いたら輪の中心にいる存在なんじゃないかって。

 

数日一緒に過ごした俺は、周りの反応を見て勝手にそう思ってしまう。

 

色んな仕事頼まれてるのも、信頼されてる証だと思うし。

 

「あ~皆優しいからなぁ。まぁ、おいらの事情詳しく知らなくても…この歳で島に独りで来てる時点で同情してくれてんだよ(笑)」

 

同情?

 

そんな馬鹿な。

 

島の人は皆智くんに優しい。

(ちなみに異端者の俺はすごい目で見られている。いやいいんだけどさ。別に。本当に。別に気にしてねぇし!!…別に!!泣

 

だからこそ、わかる。

 

智くんへの皆の想いがどういうものか。

 

「断言するよ。絶対同情ではない。」

 

「先生もしつけぇな(笑)ほんでも…んふふ。うれしーもんだね。」

 

智くんがふわりと笑う。

 

「…何が?」

 

「おいらと違わないって言われんの。愛されるべき、とか言ってもらえんの。…先生はやっぱ優しいな!大丈夫。先生なら全部うまくいくよ!」

 

「…あなただって…」

 

 

「おいらは違うよぉ。黒に何足したって黒だからさ。」

 

 

智くんが、柔らかく、しかしぴしゃりと言い放つ。

 

漆黒の、涙。

 

昨日夢で見たもの。

 

黒って…智くんに、何かあるの?

 

「…ねぇ、それってどういう…」

 

突然、しゅわああああ!と鍋から泡が吹きこぼれる。

 

「あ~~~~!やっべ!おいらが失敗しちゃった!ごめん先生、ちょっとそこどいて!!」

 

智くんがくっそ~と独り言を言ってるから、それから何も言えなくなってしまった。

 

 

…智くんが抱えている闇って、一体何なんだろうか。

 

智くんにとって何でもない役立たずな俺は、それを聞く権利があるんだろうか…。