「はい!ナマケモノです!」
中島くんがにっこり答える。
「…は?え、ごめん意味が…」
全然わかんないんだけど……。
何でナマケモノ?
何がどうなって中島くんと翔くんをナマケモノが結びつけるの??
「智が…ナマケモノ見て癒される、飼いたいって言ってたから…」
翔くんがぼそぼそと言って、ハッとする。
あ…あぁ~~!
言った!!言ったけど!!!!
飼いたいね~って笑いながら言ったのは確かだけど!!!
まさか本気で考えるなんて思わないじゃん!!!!!!!
「あ~~~!(笑)智、俺と話してる時もそういやそんな会話したって言ってたね!動物園でしょ?」
確かに潤と会ってた時その話した!
でも…そんなんもう忘れてたよ~っ!!
「そう…って何でお前が俺のあずかり知らないところで智と仲良く話してんだよ。」
ぎろりと睨む翔くん…だから今そういう流れじゃないってば!
「さぁ~何ででしょう~?誰かさんが嘘ついて智を不安にさせるからじゃないのかねぇ~?」
潤も!
ニヤニヤ挑発しないでよ!!
「まって、翔さん智が癒されるね~飼いたいね~って言ったから飼おうとしたの?ナマケモノを??思考回路めちゃくちゃやべぇ奴じゃんw
流石 海釣りが好きだと言われてタツノオトシゴの生態まで調べあげた男wwwなんっも変わってねぇなww」
和が吹き出す。
ね、おかしいよね、おかしいよね!!
僕が悪いんじゃないよね!!!
ていうか懐かしいなその話!!!
「おい、兄貴に何て口きいてんだ。愛ですよ愛!!何でバカにしてんですかぶっとばすぞ!!」
ああっ、上田くんの忠誠心記憶戻っても生きてる…!
敬語と罵倒がまぜこぜだよ!!!
「おーコワ。番犬くん鎖繋いどいてよ。いちいち吠えられてちゃ翔さんのこと1ミリも話せないわ。」
笑いながら和が言う。
ねぇ、それってバカにしないと翔くんのこと話せないってことで結局バカにしてる気がするんだけど…。
「上田、いいから。俺が悪いんだ。つーかすぐ噛み付くな。」
「でも…」
「いいっつってんだろ!」
「…はいっ!!」
ああ、翔くん…
最近風磨くん達と話すようになってすごく貫禄が…
…それはそれでかっこいいんだけど…。←
「とにかく、翔くんは僕のためにそう思ってくれたんだよね?」
「うん…。だって…智が最近…疲れてるみたいだったから……」
そう…だったっけ?
自分のことながら分かってなくて、次の言葉を待つ。
「智、今個展の作品作りとバイトでよく目ぇ擦ったり腰叩いたりため息ついたりしてて…少しでも気分転換になれることないかなって色々考えてて、思いついたのが前言ってたナマケモノだったんだ。」
そう、僕は最近個展の話が持ち上がってて。
作品をたくさん作ろうとしてたのは確か。
疲れてるつもりはなかったけど多分体に来てたんだろう。
翔くんなりに…考えてくれてたんだ。
「…ほんとごめん。そんな勘づかれて不安にさせてるなんて思わなくて…。」
ううん、と首を振る。
むしろ疑った僕の方だ。謝るのは。
「櫻井さんがですね、うちの店に『ナマケモノってどうしたら飼えますか』って聞きに来たんですよ。恋人がナマケモノ好きなんです…って。あ、因みに店長はいない時でした。
だから飼える環境…つまり家をまず探してもらうことからスタートして…その間に俺がナマケモノ扱ってる店舗が近くにないか仲間に連絡取ってて。」
…あの不動産はペット可で広い部屋のある場所を探してたってこと…?
だからカフェで不動産のチラシ見せて中島くんに聞いてた…?
「やっと見つけた『ナマケモノを仕入れられる店』に行くために櫻井さんと待ち合わせして、そのついでに家の相談にも乗って…ここならいいんじゃないかって決めて。そのまま輸入専門の店に向かいました。」
「…輸入専門…もしかして、importって書いてあったとこ…!?」
「そうです。その店、入り口が奥まってるというかラブホテルの門通り抜けた裏手にあって。なので大野さんが勘違いしちゃったんですね。」
「んもーおーちゃんてば、早とちりさんだねー!(笑)」
相葉さんがくふくふ笑う。
それはそうなんだけど…そんなんわかんないよー!
まさか恋人がナマケモノ飼う準備してるなんて…!!
「ぶくくくっ…で、…ふはっ、えーっと?(笑)そんなアホみたいな…失礼(笑)、ありえない計画を恋人がたててるとも知らずに後をつけた智だったけど、
神がかったタイミングで通りかかった大学生の話を盗み聞きして、翔さんがアブないって思って乗り込んでった、と。(笑)」
和が笑いを抑えきれない状態で話をまとめる。
「笑うなってば!!必死だったんだから!!綺麗な顔の人は売られるとかクスリ漬けにするとか言ってるし!!そんなん不安になるでしょ!!こんな綺麗な顔してるんだもん!!」
「智…綺麗な顔って思ってたんだ俺のこと…」
翔くんが嬉しそうにはにかむ。
だから!
そういうノリじゃないんだって今!!!
「中島くんだって高架下の電話で死刑とか許さないとか『どんな手を使ってでも必ずこの手で~』的なこと言ってたし!」
「ああ、それについては…」
*
『そうなんだよ。まだ上田店長は犯人追ったまま行方不明なんだ。
でもおおごとにはするなって言ってたし、絶対警察よりも先に見つけ出して自分の手で殴ってやらなきゃ気が済まないって言ってた。
俺も同じ気持ちだよ。逮捕されておしまいなんて許せない。死刑にでもなれば別だけどさ。
だからもう少し様子を見るけど…何かあったのかもしれない。放浪癖のある人だけど犯人追って出てったのが最後だから、心配で仕事も手につかないし…。あと1週間待ってみて帰ってこなかったら警察に届け出るつもり。
え?そりゃ……許せるわけない。大切な仲間が…Familyが殺されたんだから。
……どんな手を使っても絶対見つけ出して…俺がこの手で(殴ってやりたい)…。』
*
「…って話してたんですよ、ペットショップ仲間の友人と。」
ま…まじか!?
まぁ大筋あってるけど…!!
「智もすげぇ都合よく?都合悪く?おかしなワードだけ拾ったもんだね…(笑)」
クククク…と潤が笑う。
うー、ほんとムカつく!!
…トンネルの下で聞こえたり聞こえなかったり。
そんな中で物事を判断するのは非常に良くない。
二度としない。
ていうかもう二度と誰かを驚かせようだなんて思わないっ!!
「でも…そっか。辛かったね、ペットを亡くしたのは…。」
相葉さんが苦痛の表情を浮かべ、隣の和の膝でしっぽを振るチビ(2代目)の頭を撫でる。
そうだよね。
家族だもんね。
そりゃ自分で殴らないと気が済まないって思うかも。
「はい…俺の大事なミカエルを原っぱで散歩(?)させてた時に誘拐して殺されたんだから…許せなくって。」
それは辛いよね…。
「ミカエル…って…?」
「蛙のミカエルくんです。」
か…
蛙……?
蛙って…そんな見分けつくもの……?
「…何か特別な蛙だったの…?」
「? 種類ですか?アマガエルですよ!」
「えーと…模様が特殊だったり…?」
「一般的なものでしたねぇ。だから散歩の時はめちゃくちゃ注意して見てないといけなくて(笑)」
「…何で殺されたってわかったの?」
「夢で教えてくれたんです。『ケンティ助けて~殺される~!』って。そしたら翌日動物殺傷事件のニュースが流れてて…これだ!ってピンときたんですよ。」
「俺ァそれ聞いて…許せねぇって思いましたね。まさかあのミカエルが夢に出てまで知らせてくれるなんて…。」
上田くんの熱の籠った一言とは裏腹に、しーんと静まり返る店内。。
「…いやいや(笑)普通に逃げ出したんじゃね?蛙の散歩って何なのよ(笑)そこらの蛙とわかんないでしょそんな大きな違いないなら(笑)」
ああー!じゅーーーん!
多分それ皆思ってたけど言っちゃいけないこと!!!
中島くんが、いいえ、と首を振る。
「俺らの絆は俺らにしかわかりませんよ。あれは愛の奇跡ですね!ミカエル、無念は晴らしたよ…!」
自信満々に胸を張る中島くん。
「…ドンマイ(笑)」と和が僕を見て笑いを堪えている。
「…何それぇ…。」
総じて肩透かしな展開にへなへなと力が抜ける。
ミカエルくんの真相はよくわからないけど…
僕のは見当外れもいいとこな感じなわけで……。
「でもすごかったですよ櫻井さん。『やめろーーーーーっ!!』て声が聞こえたらしくて…俺には全く聞こえなかったんですけど、「智…!?」って言い残して店を飛び出して。
慌ててついてきたんですけど見失っちゃって…いや~愛ですね。Loveです。櫻井さんすっごいSexyでしたよ。」
「いやだからwそのSexyって何なのwいちいちw英語まざんのルー〇柴かよww」
潤が笑いながらツッコミを入れる。
「MJはとってもCoolでSexyです!」
「やめろw何かすげぇディスられてる感じするわw」
本当に何なのそれ?
家族をFamilyとか言うし、ややこしいんだって!!
今回は中島くんが全ての原因な気がしてならないのは僕だけかな!!?!