ボク、運命の人です。45 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

これでおーわり!
案外長かったなー(笑)















「おーい!」


「教授~!2人ここにいたよ~~~!」


「お、つくしか!サンキュー!」


林道の奥から、懐かしい声が響く。


「「…教授…?」」


小春と青年が驚いて顔を見合わせる。


まさか。


震える足で縺れながら声の先へと足を向ける2人。


ザッという足音と共に木々の影から現れた姿は。


「やっと見つけた!ったく、お前らどこ行ってたんだよ!早く来いよ!」


「…!」



「「翔ちゃん!!!」」



数年前に亡くなったはずの櫻井より、だいぶ若い。


顔色もよく、ハツラツとしている。


腹も出ていない。


当たり前だが、二本足で立っている。


「なん…で…」


「んふふ、おいらもいるよ?」


ひょこっと櫻井の影から顔を出したのは、



「「…智っ…!!!」」



同じく亡くなったはずの大野だ。


櫻井同様若くなっているように見える。


「お、おお?何だよそのリアクション(笑)早くしないと始ま…うわっ?!」


青年と小春が飛びつくように櫻井に抱き着く。


瞳からは涙がボロボロと零れている。


「やって…くれた、んだね、よかっ…」


「うわああああん!翔ちゃん、智、久しぶりっ!よかったよおおおおお!」


「「………。」」


櫻井と大野が顔を見合わせる。


「……あのなぁ、久しぶりって、今朝も会ったろ。どうしたんだよ?ね、智くん。」


「んふふ、大丈夫だよ。おいらはここにいるよ。」


泣きじゃくる2人の頭を撫でる両親は、安心させるよう優しい声だ。


「え、号泣?意味わかんないんだけど何この状況??」


つくしがドン引きした顔を見せる。


「んふふ…つくしちゃんも呆れてるよ?」


「翔ちゃ…のこと、信じて…たから…っうぅ、グスッ…やれば出来るって…!でも…まさかこの世界で…!!」


「やれば出来る…って上からだよな?(笑)この国を誇る栄誉教授に向かって(笑)」


「翔ちゃん、智…だいすきっ!!」


青年が2人に飛びつく。


「ふはっ、どうした、俺もだよ?」


「おいらも大好き!2人とも…愛してるっ♡」


櫻井が優しく青年の頭を撫で、大野が小春と青年をぎゅうっと抱き締める。


「…皆は?」


ぐすっと鼻をすすって不安そうに青年が聞く。


「皆?」


「まーくんと…カズくん。」


「ああ、そうだ!もうとっくに準備出来てるから!アイツらも待ってんだよ、お前らもさっさと飯食って着替えて行くぞ!」


ぱあっと顔が輝いた後、はて?と2人の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。


「…行くって、どこに…」


「はぁ?だから、今日は授賞式だろ!研究の安全性が認められて医学的に使用許可が降りたんだからな!


ついでにお前らの記念すべき成人記念式なんだから、こんなとこで油売ってる暇ねーぞ!生中継なんだから、全国民がテレビの前でお待ちだよ!!」


青年と小春が、えっと息を呑む。


「…翔ちゃん…僕今何歳だっけ…?」


「何言ってんだよ、お前ら2人ともこの前20歳になったとこだろ?」


小春と青年は、お互いの顔をマジマジとみつめる。


よく見れば確かに若い。


親を亡くし生きるのに苦労していた2人は、自分達の外見に気を配るどころか相手の顔を熱心に見る余裕などは無かった。


(つまり、翔ちゃんのの研究が成功したのは元の世界より何年も早くて、


法案云々の前に国に、そして世間に認められたから栄誉教授だなんて言われてて…?)


小春と青年は目と目で会話する。


「小春ちゃーん!早くおいでー!」


 林の先から聞こえてきたのは相葉の声。


「ま…雅紀の声だ!!」


小春の目がまた潤み出す。


「早くしねーと出発だぞ!折角飯作ったのにどこほっつき歩いてんだよ!」


「…カズくん!」


青年も嬉しそうに涙を流す。


「ほら、早く行ってやれ。」


「ふふ、転んじゃダメだよ。」


櫻井と大野が優しく微笑み、青年と小春が嬉しそうに手を繋いで駆け出す。


青年の反対側の手をとるため、つくしが慌ててその背を追う。


ふと思い立った青年と小春がくるっと櫻井達の方を向く。


(神様も、翔ちゃんも、そして智も…。)


2人は目を見合わせて、すうっと息を吸う。



「「ありがとうございました!!!」」



やっぱり納得のいっていないつくしが、「何か通じあってる感じズルいっ!!」と不満げに口を尖らせた。







「…繋がった…みたいだね。」


小さくなる3つの後ろ姿を見つめ、大野がふわりと笑う。


「…うん。『あの小春』の世界と一緒の世界だったんだな。良かった…。」


櫻井が目を潤ませ、こぼれ落ちないように上を向く。


先程まで降っていた雨はすっかり上がり、太陽の光が降り注いでいる。


「あのリアクション…多分、おいら達は本当は…」


「…そうだな。…死んでたのかもしれない。大切な子ども達を遺して…。多分、相葉くん達も…。」


櫻井が拳をぎゅっと握る。


漠然とした『小春が来たのは自分のためかもしれない』という感覚は、疑問ではなく確信に変わっていた。


小春達が救って欲しかったのは地球ではない。


小春の世界の自分達だ。



「でもさぁ、翔くんがいきなり小春くんのこと忘れた時はどうしようかと思ったよ。」


大野がくすくす笑う。


「…智くんにいくら説明されても思い出せなくて…でも自分でも不思議だったけど、何も覚えてないのに研究への使命感が異常だった。」


「もう思い出さないままなのかと思ってた。神様がどうこう言ってたし、そういう運命なのかなって。おいらに話しちゃったことがイレギュラーで、おいらの記憶だけ消されなくて…って。


でも、人体実験第2号として相葉ちゃん達の赤ちゃんが生まれた時…急に思い出してたね。おいらは知ってたけど…相葉ちゃんの叫んだ名前聞いて鳥肌立っちゃった。」



──決めた!このコの名前は小春!愛の結晶で今や看板メニューになった、コハルと一緒の名前にするの!!皆に愛されるように!!!



相葉がそう子どもを抱え上げた瞬間、櫻井は崩れ落ちた。


全ての記憶と共に、暫く嗚咽した。


成し遂げたという安堵感だったのか、


忘れてしまっていた罪悪感だったのか、


不透明な世界線への不安だったのか、


小春達の現状へ向けた心配だったのか…


未だに櫻井自身にもあれ程泣いた理由は分からない。


「うん。急に走馬灯のように、ぶわーっと。」


「んふふ…突然泣き崩れたからビックリしたよ!まさか記憶が戻るなんて思ってなかったから、そんなに感動したのかと思って。いや、おいらも感動してたんだけど(笑)」


「やめてよ、ほんと恥じぃんだって。未だに大将に『櫻井さん大号泣事件』とかってからかわれるしさぁ~!」


2人はくすくす笑い合う。



その時、背後で何かがぽわっと光った。


振り向くと、あの時と同様鳥居が2色に光っている。


「…まさか…神様…?」


「まっさかぁ…」


戸惑う2人を他所に、明るい声が2人の脳内に響く。

 


──もう思い残すことは無いよ。You達、ありがとね!



しーん…。


「…え、終わり?」


「…何か軽くない?!」


「ふはははっ、神様のテンションウケる!」


2人が笑うと、鳥居の色は戻り、空にかかったのは七色の橋。


「…虹だっ!」


嬉しそうに大野が声を上げる。


「…確かサトちゃんは虹をくぐった人と結婚するんだよね?」


櫻井が大野の手を握る。


幼少期、海で交わした約束を思い出しながら。


「んふふ。もう虹をくぐった人と結婚したよ。」


大野も握り返す。


「え、俺くぐってないよ。いつ?」


櫻井が不思議そうに首を傾げる。


「ふふ…教えてあげない。」


大野は自身の誕生日、雨の中駆けてきた櫻井を思い浮かべていたずらっぽく笑う。


Rainbowという名のコンビニの、虹の絵の看板をくぐってきた櫻井を。


「何だよ、それ。今夜無理矢理言わせるよ?俺のテクで。」


「…翔くんのえっち。」


「くははっ、前もそれ言われたね。確かお義父さんへの挨拶の日。」


「翔くんはいつでもえっちだもんね。」


「ふふ、智くんに言われたくないですけど?夜は滅茶苦茶エ ロいのに…」


「~~~もうっ!黙れ、神社の前で何言ってんだよ!!」


確かに、と櫻井が角度のある肩を震わせて笑う。


「…行こっか。皆待ってるよ。授賞式、遅れちゃう。」


「そうだね。行こう。」


2人は手を繋ぎ、笑いながら歩き出した。




カラン。


風にゆらされ、神社の奥で絵馬が音を立てる。


いくつか飾られた箇所のずっと奥。


通常は神主が定期的に古い物をまとめて処分するというのに、そのふたつは何故か25年もの期間残されていた。


雨などで変色しつつある絵馬には、かすれた赤いペンでこう書かれている。



『絶対に地球を救って、智くんと超絶幸せな家庭を築く!それが俺の運命だ!!櫻井翔』



そしてその隣の絵馬には青いペンで。



『翔くんの望みが叶うところが、ずっと隣で見られますように。智』



まるで長年連れ添ってきた夫婦のように寄り添う絵馬は、誰の目に留まることなくじわりと姿を消す。


浄化した赤と青の光が天に昇っていき、虹に溶けるように吸い込まれる。


神社からは、その虹をくぐり抜けるように駆けていく櫻井と大野の姿が見えていた。


END