ボク、運命の人です。44 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


画像ミックス、思いの外喜んでもらえて良かったです!(笑)

天然と大宮もって言われたから…またいい写真見つけたら頑張ります~(笑)

















「…小春、元気だして?」

 

青年が小春の頭をよしよしと撫でる。

 

神社の境内には2人の影以外何も無い。

 

人も、虫も、音も、風も…。

 

全てのものが遮断されているかのような空間だ。

 

「…元気だっつの。」

 

言葉とは裏腹に手を払いのけることもせず、小春は膝を抱えて強がりを口にする。

 

「…ね。どうだった?僕の自慢の親は。」

 

青年はふわりと笑う。

 

「…ふん。あんなヘタレでよく智をオトしたよね。マジで納得出来ませんよ。」

 

「ふふ、小春の初恋は智だもんねぇ。本当は智に会いたかったんじゃないの?」

 

「うるせ!…わかってんの?今のワタシの想い人はお前なんですからね。」

 

頭に置かれた青年の手を取り、小春は立ち上がる。

 

んふふ、ありがと、と優しく青年が笑う。

 

「…なぁ。翔ちゃんの起こす奇跡は、ちゃんとこの世界で起こるかな?それとも…」

 

小春が俯き、苦々しく口にする。

 

「…どうだろう。まだわかんないね。この神社は…世界と隔離されてるから。ここから1歩出たら変化が現れるかもしれないし、もしくは…

 

パラレルワールドみたいにたくさんの世界線があって、この世界はもう何も変わらないのかもしれない。僕らは…この地獄を受け入れる『運命』なのかもしれない。」

 

青年はじっと鳥居を見つめる。

 

赤と青の珍しい鳥居は、少し錆び付いているように見える。

 

「神様は…もう出てこないのかな?」

 

「…多分。」

 

 

数年前、普段赤いはずの鳥居が赤と青に変わっていると気付いたのは青年の方だった。

 

無慈悲な法案が可決されたことにより両親が『殺され』、絶望の中、導かれるように小春と来た神社。

 

そこへ突然『本物の神様』が現れて過去を変えるチャンスをくれた。


 

──You達、奇跡を起こしてみない?

 


それはあまりにも軽く非現実的な一言だった。

 

しかし目の前に現れたチャンスに、藁をもすがる思いで食いついた。

 

青年たちに捨てるものなどなかったから。

 

 

小春が過去へ行くことになったのは、青年が泣き虫だったからだ。

 

大好きな親の若い時に出会って泣いてしまうだろう、ということで口の上手い小春が名乗りを上げた。

 

名乗りを上げるも何も、1/2なのだから消去法と言ってしまえばそれまでだが。

 

全ての計画は頭の良い青年が立てた。

 

両親の性格を考慮し、入念な計画は滞りなく遂行され、2人は結ばれた。

 

それもまた…ある意味での運命だったのかもしれない。

 

 

「…この世界も変わるといいな。」

 

小春が握った手にぎゅっと力を込める。

 

青年もそれを同じように返す。


 

「…まーくんも、カズくんも、智も、翔ちゃんも…

 

生き返るかな…?」


 

「…わかんねぇ。でも、きっとあの時代の翔ちゃんはやってくれる。…信じてる。」

 

小春が強い目で正面を見据える。

 

鳥居の先の、辛い『現実』の広がる世界を。

 

 

櫻井には告げてないが、4人が失ったのは社会性ではない。


 

命だ。

 

 

櫻井の成し遂げた研究は政府にとって同性愛を促す反逆的な脅威として捉えられ、国の組織に捕えられ、櫻井と大野は暗殺された。

 

その結果、もう『この世』には存在しない。

 

自分が研究をすることで命を落とすなどというショッキングな未来を櫻井にわざわざ告げるべきではないと考え、『社会的に』と濁したのだった。


恐らくそれは研究成果を上げるのが早ければ避けられる事実であるし、実質他の同性愛者は社会的に殺されているようなものだ。

 

『この』現実では青年達が成人式を迎える前に、最愛の子供達を遺して櫻井も大野も居なくなってしまった。

 

そして小春の親──相葉と二宮も、櫻井達の実験に加担したとして罪に問われたが、最後の最後まで彼らを擁護したことで同様に殺された。

 

 

だから、櫻井の元に姿を見せたのは小春だったのだ。

 

青年が亡くなった実の親に会ってしまったら、泣くのは勿論、過去から帰りたくなくなってしまうかもしれない。

 

そんな青年が現実に引き戻された時の喪失感は、恐らく自分が受けるそれよりずっと大きいだろう…と小春は危惧したのだ。

 

 

「翔ちゃんが…智と、まーくんと、カズくんが。生きていられる世界を作れますように。皆が笑って過ごせる、幸せな世界を…。


僕達が立派に大人になった姿を親に見せられる、そんな奇跡的で、本来であれば当たり前な世界を…。この世界でなくてもいいから…。」

 

青年の言葉に、小春も頷く。

 

「せめて成人祝い位はもらわないとね。現ナマで。」

 

いけしゃあしゃあと憎まれ口を叩く小春に、んもう、と青年がくすくす笑う。

 

 

「じゃぁ…行く?」

 

「…うん。」

 

繋いだ手は離さぬまま、2人は『現実』へと向かう。

 

赤と青の鳥居をくぐると、音が溢れ出す。

 

風の音、草の匂い、何かの虫の羽の音。

 

ジャリ、と足元で鳴る小石。

 

現実はつつがなくその姿を顕にする。

 

鳥居を振り返ると、その色は普通の赤色に戻っている。

 

恐らくもう二度と2色になることはないのだろう、と2人は直感的に思った。


 

「…神様、バイバイ。」

 

小春が掌を向ける。

 

青年も同様に。

 

足下でパシャリと水音がする。

 

いつの間にか雨が降ったらしい。

 

神社にいる間、世界は止まって見えていたから気付かなかったのだ。

 

 

「あーっ!やっと見つけた!」

 

不機嫌そうな女がズンズンと近付いてくる。

 

「げっ…」

 

「げっ、て何よ?」

 

失礼過ぎるでしょ、と気の強そうな女は小春を睨む。

 

「どうしたの?つくしちゃん。…なんか今日幼くない?」

 

「は?!こんなに大人っぽくお洒落してるのに、何よ!」


「ご、ごめん。でもどうしてここに?」


「小春が抜け駆けしてるから探しに来たのよっ!」

 

女は青年の腕に絡まりつく。

 

女──松本つくしは青年と小春の3歳下。

 

松本潤は結婚し、娘が生まれた。

 

そしてその相手は…

 

「ちけぇ、離れろバカつくし!」

 

「嫌よ!小春ばっか独り占めしてズルイ!!」

 

「大体こんなところまで一人で来ていいのかよ!お前の親うるせぇだろ!あの人達に怒られるのワタシたちなんだから!!」

 

「パパは怒んないもん!うるさいのはママだけだもん!私が可愛いからオオカミたちに狙われないか心配だ~って。特に小春!」

 

「斗真は過保護過ぎんだよ!ふざけんな、こんな気の強い女誰が狙うっつーんだ!」

 

「何をぅーーー!?!」

 

…松本潤の相手は、生田斗真である。

 

櫻井の研究による同性での子作り実験に加担したにも関わらず、この世界で松本と生田は生き残った。

 

何故なら、生田斗真が性転換手術を終えていたからだ。


身体のごつい、男らしいが美しい顔の母親は、近所でも有名人だ。


 

「2人とも落ち着いて、ね?独り占めじゃないよ。僕と小春は神様にお祈りしてたの。世界が平和になりますように…って。ね?だから怒らないで。可愛い顔が台無しだよ。」

 

青年が優しく微笑むと、つくしは頬を赤らめる。

 

「は、はぁ?平和って。この笑っちゃうくらい平和な時代に何を祈ることがあるんだっつーの。」

 

ふんっと鼻息荒くつくしはそっぽを向く。

 

「え、だって、戦争…」

 

「おーい!」

 

遠くから聞こえる声に、つくしはホラ、と笑う。

 

 

「私が2人を探してたのはね、教授が探してたからよ!」