「遅いよ。」6/17(AN)4 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

結構序盤から気付いてたけど
誕生日には終わりそうにないです。←














相葉ちゃんがそっと取り出したのは小さな箱。


そこに何が入ってるか、言葉を先に聞いたから何となく予想は出来てる。


理解は一切追いついていないけど。


心臓がバクバクとずっとウルサイ。


だけど…


かぱっと開かれたのは、なんとも不格好なそれで。


「…どうしても…手作りが良くて…その、こんな下手っぴだけど…」


えへへ、と笑う相葉ちゃん。



そういうのはさ


結構高めのやつ買うもんじゃん


給料3ヶ月とかなんとか言って


キラキラのダイヤつけたやつ


 売ったら高値つくやつ


そういうのが普通、なんでしょ?


ああ、もう


無理だよこんなの


ダメだ


どんなに相葉ちゃんに飽きても、売れない


売れないじゃん


手放せないじゃん



一生。



「…ヘタクソ…。」


涙が零れるのを隠すため、ぎゅうと案外広い背中に手を回して抱きつく。


「ね、答えは?」


ねぇ、アンタはさ。


言わなきゃわかんないわけ?


こんな唯一無二の最高なプレゼント用意しといて。


「こんな…ヘタクソなやつ…俺以外誰が喜ぶんだよ……っ」


「…くふふ。だからカズにもらってもらわないと、ね?」


相葉ちゃんの大きな手が俺の頭をさらりと撫でる。


「……日本の…グス…法律では、結婚って出来ないの、知ってんの?」


「当たり前でしょ!(笑)でも…パートナーシップなら結べるよ?それに、法律に認めてもらうのだけが結婚じゃないよ。


俺が、カズと!一生一緒に生きていきたいから…。こうやってプロポーズしてるんだよ。それじゃダメ?」


「んなわけ……っ」


相葉ちゃんが俺の身体を優しく包み込むから、俺はそれにしがみついて顔を押しつける。



じゃないと、嗚咽してしまいそうだった。


嬉しくて、幸せで、もうこれ以上なんてきっとない。


将来を不安に思って1人膝を抱くことも、これからは無いんだ。


独りだと、誰もいないのだと


真っ黒で冷たい感情に支配される夜も無いんだ。


そう思ったら、幸せに押しつぶされそうだったから。



「ねぇ、カズ?yesって言って!」


何だ、その皇族みたいなの。


一択かよ。


ふざけんな、馬鹿。


だけど……



答えなんて、決まってる。



ちいさく、ほんのちいさくこくりと頷く。


ああ、耳が熱い。


恥ずかしい。


本当は『大好き!ありがとう!一生大事にする!!』とか言って笑顔を見せる位のことをすべきなんだと思う。


智ならきっと、そう言う。


わかってんのに、そんなこと出来るわけがない。


俺の精一杯は頷くことだ。


憎たらしくて、素直じゃなくて、可愛げがなくて…


こんな俺、いつ愛想つかされても仕方ない。


だけど相葉ちゃんはすげぇ嬉しそうに、


「ほんとっ?!やったー!!一生離してなんてあげないからね!ストーカー宣言覚えてる?どこに逃げたって絶対隣に連れ戻すからっ!!!」


ってはしゃぐから。


全部、わかってくれてるから。


「…こええんだって。」


涙に濡れた顔で苦笑すると、相葉ちゃんが力強く抱きしめてくれる。


「ひゃっひゃ!覚悟しといてね!」


ぐす、と背後で風間が鼻をすする音が聞こえた。




「くふふ!カズ、言っとくけど、まだ泣くのは早いからね!プレゼントはこれだけじゃないよ!ね、風間ぽん!」


相葉ちゃんがうずうずした顔で笑って俺の手を引く。


「…うん、そうだね!さぁニノ、ハンカチの準備しとけよ!」


待って、感動の余韻とか、ほら、もうちょっと、なぁ!


もつれる足をなんとか転ばないように交互に前に出して、2人に連れてこられたのは美術室。


「ほら、開けてみて!」


「腰抜かすなよ!」


なんだよ、それ。


何でお前らのが興奮してんのよ。


促されるまま美術室の扉を押す。



「……う、そ……。」



そこには一面の



………絵。



壁を埋め尽くされた、絵、絵、絵──。


 

あの夏の思い出が、全て…記憶から飛び出したみたいに。


智で経験したはずのそれは


全て俺の顔になってて。


 

屋上で風間と相葉ちゃん3人で笑いあって食べた弁当


ヒョロ眼鏡の数学教師に啖呵を切った教室


買い食いしてたむろした細井商店前


テスト勉強で泊まって2人で勉強した相葉ちゃんの部屋


じいちゃんと食べた、俺の作った夕食


ディ〇ニーランドではしゃぐ3人


その帰りの車の中、頭を寄せあって眠る俺ら


夏休み忍び込んだ夜のプール


二人で線香花火をして、告白された海……。

 


あれもこれも。


全部智の体で経験したもの。


なのに絵の中の姿はすべて俺で。


智が知らないはずのそれで。



「うそ…」

 

視界がじわりと滲む。



「何で、うそ…ほんとに…?」


声が震える。


 

わかってる。



俺、わかってるんだ。



「智………っ」



この全てを、誰の手が作り出したのか。




「…呼んだ?」




優しい声が、室内に響いた。