翌日は月曜日。
また一週間が始まる。
大野さんお手製の弁当と朝食の匂いで、珍しく奴らに起こされるより前に目が覚めた。
「おはようございます。」
「あ、櫻井さん!おはようございます!」
にっこり笑いかけられて、超絶罪悪感。
昨日…妄想で穢してすみません……。
「? どうしました?」
「あ、いや…」
「オトコには聞いちゃいけないのっぴきならないジジョウがあるんだよ、智。」
和!
お前はナニを知ってるんだ!!
「えー!それかっこいー!俺も使いたい!のっピキピキないジジョウ!!」
「のっぴきならない、な!ぴきぴきってなんだよ!何で小2でそのくおりてぃなんだよ!」
「のっぴき ぴなない どじょう…」
「潤はしかたないよねぇ~言えなくてもね~」
「えーっ俺も『しかたない』でいーじゃん、なんで潤だけー?!和ずりー!」
「あのさぁ、5歳児になにしっとしてんのよ?はぁ~なさけない。」
「ねぇ!ボクだって和とおなじ5さいだもん、ゆえるもん!!」
「かーずー?!もうにーちゃん怒ったぞ?!」
「お前らうるせぇーっ!!!!」
堪えきれなくなって叱ると、
「んふふ、あははは…!」
大野さんの笑いで皆が顔を見合わせ、ふはっと笑い出す。
一瞬で場が和んだ。
俺だけだったら叱るとこで終わってたかも。
やっぱ陰と陽っつーか、結婚するならこうやって優しく包んでくれる人がいいかも。
俺はどっちかっつーと躾に身を入れてしまうし。
俺の結婚相手の条件はこうだ。
俺と性格が似てない人。(ぶつかるから)
尊敬出来る人。
……そして、最重要事項。
勃 つ人……。
…いや
大野さんはない、ないないない!
男なんだから!!!
そもそも結婚どころか付き合うことすら出来ねぇわ!!
「翔ちゃん、今日ははやおきだからゆっくりできるね!」
雅紀がニコニコ笑う。
「あ…そのことなんだけど。」
チラリと和を見ると、察したのかコクリと頷かれる。
こいつマジで勘いいな!?
「俺も今日はついてくよ。幼稚園。」
「「「えっ!」」」
雅紀、潤、大野さんが声を上げる。
なんだよ、そんな驚くことかよ?!
最初の数日は一緒に行ったろ!
えーと確か…2回くらい!
3回目で寝坊して『道はわかるからもういいよ、雅紀と行くから安心でしょ』と呆れ気味に言われてしまったのだ。
「ほんと?!ほんとに翔ちゃん来てくれんの?!」
雅紀がぴょんぴょん飛び跳ねる。
やめろ、小栗が来るじゃねーか!
「翔くんあぶないから、おててつないであげてもいーよ。」
じゅ、潤。
それツンデレ。
5歳児にしてツンデレ覚えたか。
おじさん君の将来心配。
「あ、でも、智とおててつなぐからごめんね…?」
我に返った5歳児に自動的にフラれた。
そんな悲しいことある?!
「どんまい、翔ちゃん。」
そしてその双子に慰められる俺、可哀想!!
「いいんですか?」
大野さんが心配そうに壁時計に目をやる。
仕事のことだろう。
「ええ。見送って走っていけば電車間に合いますから。それに…大野さんに代わってもらって園に挨拶出来てませんし。」
「んふふ、ありがとうございます。やったね皆?」
「「「うん!」」」
心底嬉しそうな顔を見て、早起き出来る日はなるべく行こうとこっそり心に決めた。
補足です。
和潤の行ってる『幼稚園』は正確には『こども園』。
幼稚園と保育園が合同になってるやつです。
働いてる親などは夕方まで預かってくれるし、
普通に幼稚園として預けてる子もいる感じ。
こども園って書くと知らない人いるかもなぁと思って
幼稚園って書いたのを説明するの忘れてました。
すみません( ̄∇ ̄*)ゞ