僕に力を24 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

サボっててすみません!
4月から幼稚園&働くから色々バタバタしてて…( ̄▽ ̄;)
あっという間だなぁ。
何か感慨深いです(´;ω;`)














「よぉ。調子はどう?」


人間のカレンダー的に、約1ヶ月という期間が過ぎた。


カラスは主に昼間、たまに降りてきては顔を出して翔くんのいない時の話し相手になってくれる。


基本的にずっと翔くんと一緒なんだけどね。


《カラス!うん、元気にやってるよ。ほら、もうこんなことも出来る!》


畳の部屋だったから、ばくてん、というやつをやってみせると、カラスが大きく目を見開く。

(雅紀くんに砂浜と畳の部屋以外はダメって教わった)


「すげぇな!そんなことももう出来るんだ。…良かった。お前は…身体が丈夫なんだな。」


…? お前は?


首を傾げると、いや、と苦笑される。


「何でもない。身体、重いんだろ?」


《ふふん。僕案外運動神経いいんだから。翔くんはこれ出来ないんだよ!雅紀くんに教えて貰ったんだ。》


「…確かに不器用そうだし、そういうの出来なさそうだなあの坊ちゃんは…」


呆れ顔のカラスは…多分、人間になったら出来るんだろう。


いや、案外こいつも不器用だから無理かな?


字も下手くそだし。


《泳ぎも出来るようになったんだ。…あ、そろそろ雅紀くんに海で遊んでもらう時間だ!翔くん連れ出さないと!》


カラスはクスクス笑い、 「楽しそうだな」と呟いた。


《…ダメ?死神失格かな?調査も進んでないのに満喫してて…》


「…いんじゃね?別に期限設けられたわけじゃねーし。上も実験的な試みだと思うから、まぁこっちのことは気にすんな。」


カラスはニヤリと笑って姿を消した。




《…ぷはっ!》


クロールという泳ぎを教えて貰って、ぐんと泳ぐのが速くなった。


まだ息継ぎは苦手なんだけど。


どうも息をするタイミングが掴みづらい。


 「サトちゃん、上手くなったねー!」


ぱしゃぱしゃ、雅紀くんが水面ギリギリのところで拍手する。


でしょ?と誇らしげな顔を作って見せると、「うひゃひゃ!俺には負けるけどね~♪」と対抗される。


仕方ないじゃん、僕は人間歴1ヶ月ですよ?!


それに翔くんよりは…


そう思いかけてふと視線を向けると、翔くんがぼーっと海を眺めている。


《………。》


何かに思いを馳せる瞳。


僕が言うのもなんだけど、まるでこの世にいないみたいだ。


「…あぁ、翔ちゃん?まぁ、ね。トラウマは簡単には治んないよね。」


《…翔くんのところに戻っても良いですか?》


「ん?えーっと…あっち行く?くふふ、ありがと。サトちゃんは優しいね!」


雅紀くんはほとんど手話がわからない。


が、何となくニュアンスで察してくれる。


そういう能力は人一倍高いと感じる。


動物と心通わせるのが得意だと言っていたのも関係あるかもしれない。



「どうした?」


海を上がった僕を不思議そうに砂浜に腰掛けた翔くんが見上げる。


《翔くんは入らないんですか?》


「俺は…まだやめとくよ。」


翔くんは自嘲するように目を伏せる。


小さく、震えているようにも見える。


仕方ないことなのかもしれない。


死ぬことは怖くないけど…溺死は、怖い。


息が出来ないということは、思ってた以上にハードだ。(お風呂で経験済みだ)


翔くんの隣にスッと座る。


「どうした?」


《疲れたので、休憩です。》


「…大丈夫だよ。遊んどいで?」


翔くんが優しく微笑む。


《海より、翔くんの隣の方が楽しいです。》


これは、ただの本心。


僕は翔くんの隣にいる時が1番楽しいんだから。


翔くんが照れくさそうにコメカミを人差し指でぽりぽりかく。


翔くんの小さな癖をたくさん発見するのも、大好きだ。


「…何も聞かないの?俺が海に入らない理由も、サトシと名付けた理由も…。」


ドキン、とした。


ずっと気になってた。


名前の由来。


たまに酷く寂しそうな顔で僕の名前を呼ぶ翔くん。


海に入らないのは、あの日溺れたからだ。


その理由を知ることはすなわち、僕の任務に繋がっていくだろう。



知りたい、という気持ちと


知りたくない、という気持ちが混ざり合う。


翔くんのことをもっと知りたい。


だけど…まだ、もう少しここに……。



…それでも。


僕は全てを受け入れたい。


翔くんの口から聞かされる真実を。



《あなたが話したいことなら何だって聞きます。話したくないことなら、聞きません。》



だから、話したくなったら話して?


きっと解決してしまったら離れ離れになるけれど、あなたのもやもやを取り除けるのならそれ以上のことは無い。


元々僕は死神。


心を持たない、実体のない身体。


今の『寂しい』は、きっとすぐ消える。



「サトシ…実は……」


翔くんの思い悩んだ声を遮ったのは、ジャリ、という足音。


「こんにちは。」


だんだん近づくものでもなく突然降り立ったような音に驚いて振り返ると、



《………! 悪魔……ッ!!!》


「やぁ、こんにちは。」



そこにはいつぞやに雅紀くんに近付いた悪魔が立っていた。


そうか、この近くで悪魔が出てるってカラスが言ってたの、こいつだったんだ…!


「…えっ、と……」


「やっと見つけた。」


翔くんには勿論悪魔は見えていない。


悪魔の前に立つ少年は真っ直ぐな眉をしていて、ただ翔くんだけを見つめている。


翔くんは、真っ青な顔で…呟いた。



「なん…で……その声…さと…し……?」




さとし……って


僕の名前……?


声…って、どういうこと…?


ズキン、と胸の奥が痛くなった。



この痛みは何だろう?


ザワザワと不安に駆られるのは、果たして悪魔のせいだけなのだろうか……。