No control166 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

めっちゃねむたい。
親の晩酌に付き合って投稿画面で寝落ちしましたごめんなさい。
しやがれの1級の予告に既に胸が苦しいです。
息子を見守る母親の心境です。(大野さんよりまぁまぁ歳下)














【Side 大野】


突然4人に頭を下げられ、唖然とする。


すみませんでした…?


…謝罪…?


何が、起こってるの?


何で急にそんな…。


「どういう…こと…?」


 「大野部長の噂は…他部署の俺らにも耳に届いてて。同じアルファなのに気取ってなくて、優しくて、仕事熱心で…それに…ずっと綺麗な人だなと思ってた…て言うか。」


1人が言い辛そうに頭をかく。


「俺も、です。そん時に、その…オメガだって知って。諸角さんに唆されて…」


山際さんに見せてもらった映像が脳裏に浮かぶ。


確かに諸角さんが清掃員の格好をして俺を襲うように言ってた。


「俺に…謝るためにここへ…?」


「はい。そうです。誰かに邪魔されたくなくて。大野さんの周りには暴力的な人多いんで…」


「あぁ…ごめん…」


それで鍵をかけたのか。


あの日の岡田と松兄が浮かび、思わず謝ってしまった。


「いや、でも!俺以外にはあんなことしないってさっき…」


「大野さん以外にしたことないって意味です。反省の意を込めて。」


「あ、そう…なんだ…」


「はい。すみませんでした。」


えーややこしい!!


勘違いしちゃったよ!!

 

…いやいや、よく考えてみて、あの時は怒ってたところに諸角さんに唆されたからって…急にここまで態度が変わるのはどう考えたっておかしい。


あの時は本気で…身の危険を感じた。


何かきっかけがあったはず。


となると…



「…もしかして、誰かに、何か言われたの?」


「えっ!!聞いたんスか…?」


「いや、何も知らないけど…」


「あー…黙ってるように言われたんですけど。櫻井さんに。」


予想外の名前に驚く。


 今日は来てないのに…いつの間にそんなこと?


「あの日の就業後に呼び出されて。土下座されたんスよ。大野さんに二度とあんなことしないでくれって。あと、大野さんの思想…っつーか、何でこんなことをしてるのかっていうのをすごい熱量で説明されて…計画のことも聞きました。」


「自分がアルファであることでどう考えていて、どう生きてきたか。どう差別してどう感じてきたか…その上で大野さんに影響されたこと。棚田…とかいうコーヒーショップの店員に言われたこととか、友人のベータの意見とか…色んなこと聞いて。この土日、僕も色々考えるきっかけになりました。」


「アルファ同士だから…周りからのプレッシャーとか考え方とか、すげーわかるなって。自分が思ってたことと同じだったから。ウチの親もオメガ嫌いで、櫻井さんと同じで…オメガと関わることなんて無かったんです。俺の人生、一度も…。」


次々に吐露される意見に、ただただ目を丸くした。



あの日……。


色々バレて、仕事終わりに岡田と侑李と飲みに行った日。


確かに櫻井さんは遅れてきたけど、山際さんと話があると言っていた。


全速力で駆けつけてくれたあの時に、櫻井さんがこの4人に頭を下げてくれてたの…?


何だよ、それ。


聞いてない。



 「正直、オメガがアルファだと偽ってたって…それに気付かず俺らも実力を認めてしまってたってことが腹立たしかったんですけど。あそこまで頭下げられて熱弁されちゃもう何も言えねーっす。つうか、逆に感銘を受けたというか。」


俺もです、と唯一のベータの子が片手を挙げる。


「彼らの前で言いづらいんですけど…ベータはアルファに媚び売るしかなくて。だから、いじめとかも見て見ぬふりだったり、時にはアルファに加担したりして生きてきました。


だけど…めちゃくちゃ空しいんですよ。俺らベータに人権はなくて。勿論いじめに遭いがちなオメガの方が辛いのはわかってます。だけど、『その他大勢』っていうくくりなのも悔しいっていうのが本音で…。


だから大野部長が『属性の壁に苦しむ人』のために努力してるんだって聞いて、更に諸角課長のことも『許す』って言ったって聞いて…嬉しかったです。この人は本当に脇役なベータのことまで考えてくれてるんだなって。」


その他大勢。


ベータの苦しみ。


アルファにはわかんないでしょうねえ!俺らベータがどれだけ頑張っても上に行けない苦しみなんて!!大した努力もせずに才能に恵まれて環境も後押ししてもらえるアルファ様にはよぉ!


いつだったか、マンション前で言われた諸角さんの言葉がリフレインする。


違う属性の人に分かってもらえるわけない、って。


この子は、諸角さんと同じ苦しみを抱いてたんだ…。


「実は…僕アルファなんですけど、何か違うよなぁってずっと思ってて。」


奥でずっと口を閉ざしていた子も、小さく呟く。


「でも何が出来るって、何も出来ないから。だから『普通』のアルファ通り生きてきて…。オメガを差別して蔑むのが『普通』だったから。でも…僕の大切な番を同時に否定してるのが心苦しくて…そんな時櫻井さんの言葉を聞いて、大野さんに改めて謝罪したいって思って。」


驚いた。


櫻井さんがしてくれたことにも、彼らの本心にも…。


こんな近くに、こうやって苦しんだり悩んだりしてた人がいたんだ。


『普通だから』。


『周りがそうしてるから』。


自分の気持ちを押し殺してそれに必死で馴染もうとしてる人がいる。


彼らがそうだなんて…全く気付かなかった。



悪いのは


この社会だ。


それが当然だと思わせている環境。


格差があることが『自然』になってしまっていること。



…何をされるか分からないなんて、疑ってた自分が恥ずかしい。



──アルファだから。


こんなの…俺の一番嫌いな差別じゃないか。



「…俺もごめん!今…正直言うと構えちゃった。」


先程彼らがしたように、頭を下げる。


「いやいや、実際襲い掛かったんで当然でしょ!」


慌てて身体を起こされる。



触れられても…うん、怖くない。


信用、出来る。


これでやっと…イーブン。



「…騙してたのは本当だから…これでお互い様、でいい…?…仲良くなりたいんだ。皆が良ければ、どんな属性の人とも…。」


おずおず見上げると、きょとんとした彼らがぷはって笑って。


「流石っすね!」


何故か爆笑されたから、オロオロしてしまう。


「な…何が?」


「いや…くくく…!櫻井さんの言った通りなんで(笑)」


「え?」


「多分、謝って仲良くなりたいとか言い出すから…って。その為に確執を無くしておきたいからって必死で大野さんのこと説明してたんスよ(笑)」


「僕らと仲良くしたいなんて言うわけないって言ってたんですけど、あはは!本当に言いましたね(笑)」



…櫻井さん!


見透かされていた事実に、頬に熱が灯る。


ねえ、何それ?


俺の事なんてお見通しなの?


言ってよ、もう!


「仲良く…っつーか。…大野さん達が良ければ、ですけど。俺らに手伝わせて下さい。」


「…へっ?」


「計画!属性の差別取っ払うために頑張るんでしょ?俺、大学でゲームプログラミングの講義とってたんでシステム構築の知識もありますよ。」


「まぁ俺も…。ゲームは無理ですけど、ヒート施設の備品関係は任せて下さい。素材のいいもの安く纏め上げる位なら出来るんで。」


「俺はグラフィックデザイン得意なんで良ければ休みの日に背景とかやりますよ?独り身なんで(笑)」


「僕も。まぁ、皆みたいに得意なことないんですけど(笑)婚約してる番の子と力になりたい…って話してて。出来ることは手伝います。」


皆が次々にそんなことを言うもんだから、じわりと涙腺が緩む。



ああ、櫻井さんに今すぐ会いたい!



あなたの優しさで、また輪が広がった。


じわりじわりと広がる優しさの連鎖。


少しずつ仲間が増える。


少しずつ味方が増える。



多分、賭けだったと思う。


計画の内容を人に話すのは情報漏洩などの危険があるからあまり好まなかったのは、他でもない櫻井さん本人だ。


それでも俺の言いたいことを先読みして、こうやって俺の為に伝えてくれた。


頭を下げて、説得してくれた。


櫻井さんが居なければ……多分、分かり合えてなんていなかった。


項を襟の上から抑える。


あなたはいつでもここにいる。


離れてたって、ちゃんと俺をフォローしてくれる。


優しい眼差しを…感じられる。



ありがとう。


何度だって、飽きるまで言うよ。



大好き!


ああ、早く櫻井さんの体温を感じたい…!



「よろしくっ…!!」


また頭を下げたら、ほんと似た者カップルっすね、と笑われた。