「……。」
スースーと寝息を立てる相葉ちゃんの髪を撫でる。
優しい寝顔。
カチカチと部屋に響く時計の針は、1時を指している。
いつの間にか日付は変わってしまった。
会ったその日に3回も、なんて。
いや…俺にとっては3年、相葉ちゃんにとっては9年越しの恋だ。
足りないくらいだよ。
もっともっと、愛したいし、愛されたい。
少しでも視界に収めておきたい。
眠ってしまいたくない、なんて。
…大概狂ってんな、俺は。
もうきっと、入れ替わりなんてことは起こらないだろうに。
目の前の奇跡は、多分、簡単には……消えない。
『カズ、コップどこに置けばいい?』
風呂上がりの時のこと。
水を入れたコップの置き場所を聞かれ、シンクでいいと告げて、ふと思い出して口を開く。
『…名前。何で暫く呼ばなかったの。』
名乗ってからずっと『君』呼ばわりで。
それが気にかかっていた。
智として呼んでいたわけだから、呼びづらいってのはあるんだろうけれど。
『んー、何て呼べばいいかわかんなくて。』
相葉ちゃんが肩にかけたタオルでわしわしと頭を拭く。
水滴を滴らせる相葉ちゃんは、異様にセクシーで。
また愚かな自分の分身が反応しそうになって、慌てて視線を逸らす。
『智とか風間はニノって呼んでんじゃん。』
すると相葉ちゃんはふふっと笑った。
『どう呼ぶのか、俺自身を試したかったの。自分の中で自然に出てきた名前で呼びたいから…。これからは、カズって呼ぶね。』
──相葉ちゃんらしい。
思い出して、1人笑う。
自然に出てきた呼び名が、カズ。
……あ、やべ。ニヤける。
ほとんどの人がニノって呼ぶから、すげぇ特別な感じ。
だったら、と考える。
俺もこの人に対して、他者とは違うような特別な呼び名をしても良いのだろうか。
「………ま、まさ……」
蚊の鳴くような小さな声で言いかけて、口元を押さえる。
あーーーーーむりむりむりむり。
雅紀、だなんて!
ぜってぇ呼べねぇ!!!
なんかすげーはずい!!!!!
大体俺のが歳下なんだから、さん付け?
…雅紀…さん?
いやめっちゃ他人行儀だし俺のキャラじゃねぇ!!!
……やっぱ相葉ちゃんは相葉ちゃんかも。
相葉ちゃん、って感じの顔してるし。
無理に呼び名を変えなくても、多分、伝わってるだろう。
俺の特別感…ってやつ。
それに、
──相葉ちゃん!
何よりも、思い入れがある。
少しの間だけど、あの期間はちゃんと友達だったから。
それは…寝室に飾ってあるあの絵が教えてくれている。
あの絵を見た時、相葉ちゃんは、少し泣いた。
智の描いた、風間と、俺と、相葉ちゃんの笑顔の絵。
『いい絵だね。』
相葉ちゃんは鼻を啜った。
『いい絵だよね。』
まるで意味の無い、だけどそれ以外の言葉は浮かばなくて、そのまんま返した。
どんな辛く寂しい夜も、この絵が俺にくれたものは計り知れない。
相葉ちゃんを信じろと、俺の過ごした日々は現実だったと、時に慰め、時に叱咤激励されるような…そんな大切な絵。
まさか相葉ちゃんが家に来るとは思わなかったから、隠す時間なんてなかった。
何故だか照れくさい気持ちになる。
だけど…やっと見てもらえてよかったと、何となく智への誇らしさをも感じるんだから、俺は本当に天邪鬼だ。
ふと思い出し、リビングに置いてあるカバンにしまったスマホ取りに行く。
そこには風間からのメッセージ。
風間『明日は休みにしました。思う存分イチャついてください。風間サンタからのクリスマスプレゼントだよ。
意地っ張りで誰よりも優しい親友をよろしくね。…くれぐれもやりすぎた~とかで腰やんなよ?
Merry Chrismas!お前の元クラスメイトの親友より』
……何で相葉ちゃんと会えたってバレてんだよ?
まさかパーク内で見てたとか?
うぜぇ~!!!
見てたんなら声くらい掛けてこいよ~~~!!!!!!
…でも、どこの担当だったんだろう。
パーク内の見回りスタッフのリストにはなかったと思うけど。
あ、相葉ちゃんが俺を待ってる間に報告したのかな。
そうだよな、うん、俺が泣いてたのなんて見られてるはずがない。
万が一見てたら鈍器で殴ってそこの記憶だけ何とか消してやる!
それに…
「元、クラスメイト…。」
その響きに、また涙が込上げる。
生意気なんだよ。
感動させようとさせてんじゃねぇっつーの。
…何にせよ…返信しておこう。
世界一地味な顔の恋のキューピッドに。
二宮『Christmas、な。tが足りない。お前はカタカナでじゅーぶんだろ。
相変わらず英語が苦手だな。
…あんな丁寧なノート作ってやったのに、高校の時から変わってないね。
でも、サンキュ。最高のプレゼントだわ。
今度俺んち来いよ。見せたい絵があるんだ。
もう1人の、会ったことの無い親友からのプレゼントだよ。』
ふっと笑い、スマホの画面を切る。
ベッドに戻ると、少しだけ腕の位置が移動した相葉ちゃんが相変わらず幸せそうに寝ている。
隣に潜り込み、手探りで相葉ちゃんの右手を探す。
きゅっと握れば、感じるのは小さいながらも確かな鼓動。
──同じ時を、隣で生きている。
当たり前のようで、有り得ない程の奇跡。
「明日休みだってさ。」
ぽつりと一人言を呟く。
「…どこ行く?何する?…なんて。アンタと一緒なら、どこでもいいよ。」
あどけない寝顔に込み上げる愛おしさ。
いくら頬や額にキスしても、溢れる愛情は満足しない。
そういえば、と思い出す。
大切なことを口にしてなかった。
「…日付変わっちゃったけど…。
誕生日、おめでとう。
見つけてくれて、ありがとう。
受け入れてくれて…ありがとう。
相葉ちゃんのことが…大好き…です…。
多分…ううん。一生。
これからも…ずっと……。」
語尾はかなり小さくなったけど、やっと言えた。
大好きな人に、自分の口で大好きだと言えることがこんなに幸せなことだったなんて。(寝てるけど…)
こんなクリスマスプレゼント、ないよ。
一番嫌いだった日は
一番、大切で愛おしい日に変なった。
あなたが俺を、見つけてくれたから。
「…おやすみ。」
相葉ちゃんの閉じられた目から涙が伝ったことに気付かず、俺はそっと目を閉じた。
END
相葉さん!
お誕生日おめでとうございます!✨
あなたの人柄が、言動が、笑顔が。
誰よりも大好きです。
根っからの大野担だけど、
相葉さんが人として一番好きです♡(笑)
優しく温かなあなたを見習って
笑顔を絶やさず周りを元気づけられる人になりたい。
これからも憧れてます!
相葉さん、いつも生まれてきてくれてありがとうっ♡
.*・♥゚Happy Birthday ♬ °・♥*.