「遅いよ。」68 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


今日は何か全然集中できてないまま夜更かししまくってて今頭フラフラしてる(。-_-。)
朝に予約投稿しとこ…











クリスマスの赤と緑に彩られたパークは、ココ最近で特に冷え込んだ日となった。


吐いた息が白くなり、鼻は赤みを携える。


…トナカイって、本当に鼻が赤いのかな。


そんなどうでもいいことが頭を過ったけど、寒さでそれどころじゃなくなって浮かんだ疑問は消えていく。


人に溢れるパークを見渡す。


恋人達はぴたりとくっつき、そうでない人達はモコモコの耳当てや帽子で寒さをしのいでいる。


だけど皆、キラキラの笑顔で。


空間が、雰囲気が、幸せそのもの。


寒くったって、暑くったって。


その空気はどの日も変わらない。


やっぱり魔法の国は健在だ。




冬があっという間に夕闇を連れてくる。


一日は、早く、短い。


そんな当たり前なこと、歳をとるにつれてひしひしと実感する。



簡単に見つかるわけない。


──キット ミツケテクレル


俺のことなんて覚えてるわけない。


──ワスレル ワケナイ



相反した想いはぐるぐる回って、同じところをずっと締め付けている。


喉のずっと奥で、心が叫ぶ。



──アイタイ


会いたいよ…、相葉ちゃん。




「あの、すみません、ここってどうやって行けば…」


カップルが俺に声を掛ける。


とびきりの営業スマイルを貼り付けて、案内する。


「こちらでしたら、このルートで行くと良いかと思います。この時間ですと待ち時間にパレードも少し見れますよ。行ってらっしゃい!」


笑顔で見送ると、幸せそうなカップルは腕をからませて駆けていく。


…俺も詳しくなったよなぁ。


3年前まで、足を踏み入れたこともない、夢のまた夢の場所だったのに。



「…あ、雪。」



ふわりと落ちた頬の上で、じわっと溶けて水になる結晶。


ホワイトクリスマス…イブ。


相葉ちゃんだったら、きっと大騒ぎだ。


超ロマンチックじゃない?!なんて言いながら、犬のように駆け回るだろう。


…冬の相葉ちゃんを、俺は1日だって知らないけど。


それに…今彼は26歳。


もうとっくに大人の男になってるだろう。


だって、9年だよ?


小学1年生が高校に上がるんだよ?


俺の記憶の中の相葉ちゃんは、もういない。


あんな馬鹿みたいに明るい奴が、そのまんま大人になってるわけないじゃん。


俺を探してるわけ…ないじゃん。



1人苦笑すると、遠くからパレードの音が流れ始める。


パレードは多少アレンジや流行はあれど基本は変わらない。


曲も、キャラクターも。



──ニノっ!



あの時、ほんと奇跡だったな。


思わず一人、笑う。


ニモをニノだと間違えるなんて。


相葉ちゃんて、そういうとこある。



──君は、左利き。でしょう?



いつだって、自分の知らないところで


こっちの心臓とめるくらいのミラクルを起こすんだ。


俺がどれだけそれに一喜一憂してるかなんて


なーんも知らないでさ。


ほんと…


迷惑な奴。




「あの…すみません、シール貰えますか?」


「あ、はい!」


ボケっとしてたから慌てて振り返ると、


そのまま目を大きく見開いた。





相葉ちゃんが


そこにいたからだ。





「今日、僕、誕生日で。色んなキャストさんにそれぞれシールもらって集めてるんです。」


照れくさそうに笑うその姿に、ごくりと息を呑む。


確かにキャストによってシールの書き方やイラストは色々あるから、シールを集めてる人はいる。


いるけど……。


平静を装って、震える手でバースデーシールとペンを出す。


「お…名前…は…」



「あいばまさき。平仮名でお願いします!」



ああ、神様。


ごめん、


諦めてたなんて、嘘。


確かに、嘘だけど、まさか本当に──。



震える手でその名前を書く。


勿論……左手で。


だけど…左利きの人間なんて、案外沢山居る。


こんなので判断できるわけがない。



「おめでとう…ございます。」


「ありがとうございます!」


相葉ちゃんは優しく笑ってそのシールを受け取り、確認する。


「…ほんと、キャストさんによってデザイン違うんですね。」


名前を何とか書いただけのシンプルなそのシールを見て、優しく笑う目尻の皺。


俺の知ってる彼より、ずっとずっと大人で、だけど笑顔は何も変わってなくて──。


ダメだ、


このままじゃ、立ち去ってしまう。


一生、出会えなくなってしまう。


待って、


でも、なんて言ったらいい?


俺は


どうやってあなたに声をかけたらいい?



喉がカラカラになる。


何か言わなきゃ、そう思ってたら、



「やっと………。」


「……え?」



相葉ちゃんの消え入りそうな声が、わあっという歓声で掻き消される。


パレードのキャラクターが見えたのだろう。



「あの。手、いいですか?」



唐突すぎて、わけもわからないまま震えた右手を差し出す。


ぎゅっと握られて、蘇るのはあの日の思い出。


師走も終わりかけ、寒さに手の感覚がなかったのに、相葉ちゃんのそれはポカポカとカイロみたいにあったかい。


まるで太陽みたいに。


慣れた、恋焦がれた温度。


だけど、このみすぼらしい子どもみたいな手では初めての感触で──。


あの時よりは大きい手が、ぎゅっと俺の手を握る。


「あ、の…?」



「やっぱり…。やっと見つけた……。」



近くまで来たパレードの音の合間に、そう呟かれて。




「…遅くなって、ごめんね。」




腕を引き寄せられ、抱き締められた。