「遅いよ。」51 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


一挙出し第3弾★
そーいやこの前ディズニー行ったからガラスの靴見てきたの
「5万円くらいのやつは…」
「すみません、先日ご購入なさった方がいて今は入荷待ちなんです。」

まさかΣ(๑°ㅁ°๑)(何や)





-A-

悔しいことに

俺と出逢ってもないお前がくれたそれは


俺が

一番欲していたものだった



なぁ智


礼くらい、顔見て言わせろや

馬鹿野郎。








「あなた、左利き?」


俺は驚いて、でも、深く頷く。

「そう。良かった、やっと来てくれて。」

嬉しそうにおばちゃんは言い、ちょっとまっててね、と出て行く。

「細井さん、ちょっと家寄ってまたすぐ来るわね。春巻きの皮出しといて!10枚入り、大判ね!」

「お、今日は春巻きかい。了解~。」

おばちゃんが爺さんに呼びかけ、ガラス戸を閉めた。

俺らも爺さんに一声かけ、前のベンチで待たせてもらうことにする。

櫻井さんはいつの間にか例のシュークリームを買っていた。


「…さっきのは?」

「相葉ちゃんの…智の友達のお袋さん。」

「相葉…って…智の…好きな?」

「あぁ、相葉ちゃんは知ってんの?…智は…相葉ちゃんのことを好きなわけじゃない。この前の入れ替わりではっきり言った。」

俺の口から言っていいのか分からないから、曖昧に誤魔化す。

「あ~…マジでわっかんねぇ…頭ついてかねぇ…。」

「悪いね、付き合わせて。」

「いや。俺も知りたいから、助かるよ。はい、これお前の。『海老シュー』。」

俺の分も買ってくれたらしく、シュークリームを手渡される。

多分、櫻井さんも…

全然腹なんて減ってない。

だけど、待っている間は落ち着かない。

仕方なくビリッと袋を開ける。


「……美味い……の、か…?」

「…まぁ…不味くはない……?」


夕焼け色のクリームは、濃厚な海老の味。

なのに不思議と不快感がない。

お互い同意見のようだ。

しかし、確かに。

「…また食いたくなるのかもな。」

「同感。」

なんだろうな、気が抜けるっつーか。

違和感しかない味が、不可解な現実を少し和らげる。

そんな力があるわけないけど

そのシュークリームの圧倒的な存在感と味の意外な威力に、2人して苦笑した。




「お待たせ!」

10分もかからなかっただろう。

車をかなり手前でとめて、バタバタと戻ってきたおばちゃん。

せっかちなところもよく似てる。

車から両手に抱えて出てきたのは、白いキャンバスだ。

相変わらず真っ白な布に包まれて、頑丈に紐で縛られている。

「智くんがね、うちに絵を2枚、託して行ったのよ。学校に置いとくわけにもいかないからって。雅紀の居場所を探しに来た左利きの…ふふ、柴犬みたいな子が来たら、これを渡してくれって。」

くしゃっと笑われて、その笑顔が相葉ちゃんに被る。

血の繋がらない母親は、やっぱり彼によく似てる。

確かに、メモで俺のために描いたと言っていた。

でも、入れ替わってから見てくれって言ってたのに…。

それを待てなかった?

いや、そもそも…

智は今海外にいるということだ。

何がどうなっているのか、さっぱり分からない。

「今…雅紀さんは…?」

「何か約束があるから、って、東京に働きに行ってるわよ。高校卒業してすぐにね。もう4年も前かしら。」


──4年?


違う。

相葉ちゃんも智も、17歳、高校二年生のはずだ。

卒業して4年、だって?

「あの…今、雅紀さんて…おいくつですか…?」


「今?えーと、23歳ね。確か。じゃ、渡したからね!」

せかせかと春巻きの皮を買って帰っていくおばちゃんの背中を呆然と見つめる。



………6年!!!!



智の世界と

俺の世界


そこには、距離だけでなく


6年という時間の差が存在した…?


つまり、何だ?


俺は

6年前のこの街に

入れ替わりとしてタイムスリップしてたってことか…?!



「櫻井さんっ……6年…っ時間が……!」


俺の言わんとしたことが伝わったのだろう。

そして6年という響きに、櫻井さんの顔が真っ青になる。

「6年…だって?」

カタカタ震え出す櫻井さん。

「どうしたのよ?」

「いや…気の所為だと、思いたい…だって智は今海外って…生きてるって……」

「…?生きてるよ、生きてるに決まってる!アイツだって風の噂だっつってたじゃん。」

「そう…だよ、な、そんなはず…」

櫻井さんを宥めつつ、キャンパスを護るギチギチの紐に深く切りそろえた爪を突っ込む。

何とか苦労してそれを開く。

一昨日、学校で見た紐の色とは違う。

少しだけ黄ばみ、新品とは言い難い。

やはり、それだけの年月は経っている。

何とか解いてそれを開く。


出てきたのは、パリの絵。

完成されている。

「これ…は?」

「智がずっと部活で描いてた絵だよ。」

「パリか…?」

「うん、何でも好きな映画の一場面らしくて…」

左下に書いてあったのは、


『Before Sunset』。


タイトルが追記されている。

夕焼け前──


カタワレドキ。


「この映画…確かに智が好きだって言ってた。三部作の二部目で…」

「ああ…なるほど、その中のセリフなのかな。」

「え?」

いや、と首を振る。

瓦礫部分にこっそりと隠されたように書かれた英文。

今はそんなことを説明している余裕はない。

「二宮、下にもう1枚あんぞ。」

櫻井さんがそっとパリの絵を持ち上げる。


「…………っ」



そこには、3人の笑顔。

満面の…

俺がお気に入りマークを智の携帯で押した画像の、あの笑顔。



── ニノはね、おいら達にとって…

──実在するとか知らなくったって、大切な友達だから!

──おいら達は、どんなに離れてたって、ニノが何と言おうと、友達だよ~♡



相葉ちゃんと、風間と……俺。

出会ったことの無い3人の

心からの笑顔が、キャンバスいっぱいに描かれていて。


「なんだよ…こんな……あの写真の顔はお前なのに……」


写真みたいだと、思った。

自然に、当然みたいに隣で笑う俺。


皆が笑って。

優しい空間で。

幸せで。


あれは夢なんかじゃなかった。


現実だったんだって。


そう、教えてくれるような。


そんな、写真みたいな、最高な絵──。


『ニノは、確かにここにいた。』


下に走り書きされたその文字を見て、ボロボロと涙が溢れる。

ああ、智。


お前は、やっぱり

俺の親友だ。

だって、俺の一番欲しいもの、俺よりわかってんだから…。


そう、心から思った。


その横で、震える声で


「俺………こいつ、知ってる………」


櫻井さんが、相葉ちゃんを指さした。