隣のすーすーと規則正しい寝息を確認し、大野がそっと起き上がる。
大野の知る限り、松本のここ最近の睡眠時間はものすごく少ない。
目の下のクマも目立ってきた。
これも恒例と言えば恒例だ。
「…追い込み過ぎなんだよ、バカ…。」
さらりと髪を撫でれば、前髪が額にかかる。
あどけないその顔に、大野はふっと笑う。
「会った頃から…ほんと、変わんないな。」
可愛い顔。
生真面目な性格。
頑固なところ。
ストイック過ぎる考え方。
カンペキ主義な譲れない思考。
松本は自分が変わったと思っている。
しかし何一つ変わっていない、と大野は思う。
「あんだけの仕事したら、そりゃイライラするよ。それを変わったとは言わねーの。」
大野が寝ている男に小さく囁く。
松本が抱える不安は、寝言で逐一、律儀に教えてくれる。
しかしそれを言うと居眠りしなくなるのではないかと恐れて、本人に進言はしない。
だけど、夢の中なら…
もしかしたら、届くかもしれない。
「大丈夫だよ。潤。大丈夫。」
小さい子どもにやるように、松本の柔らかい髪を優しく撫で続ける。
「ぐんぐん成長してて、どんどんカッコよくなるのに…根っこのとこ、何も変わってない。優しくて、あっつくて真っ直ぐなとこ。」
松本が「んん…」と寝返りを打つ。
反対を向いてしまったが、大野は頭を撫でる手を止めない。
「お前は1人じゃない。お前は悪くない。お前はじゅーぶん頑張ってる。5人、いるでしょ?抱え込むなよ。」
夢の中で届いていなくてもいい。
言霊…言葉のチカラで、松本を少しでも癒せるのなら。
そう思い、大野は思った言葉を次々に口にする。
「前も言ったろ。鳥じゃねんだから。潤は、ちゃんと。歩いてる。自分の足で。」
──鳥じゃねんだから。
大野の声を背に、狸寝入りを決め込んでいた松本は思い出していた。
「俺…地に足ついてるかな?」と飲んでいる時ぽろりと漏らした時に、大野に言われた言葉。
(…拍子抜けして、2人で爆笑したっけ。
そりゃそうか、って。
俺鳥じゃねぇんだもんな、って。)
「1人で背負うな」
大野は尚も松本が寝ていると信じて小さく続ける。
「折角俺ら5人もいるんだから。誰も辞めずにさぁ。すげぇよなぁ。」
大野の言葉に、自然と口角が上がる。
「仲間でしょ?何も、誰も、…勿論、潤も。変わってないよ?」
ほわっと、甘いココアみたいに優しい気持ちになる…と、松本はこっそり微笑む。
「…遅くなったけど」
髪を撫でていた大野の手がぴたりと止まる。
のそっと目を瞑り背を向けている松本の上に大野の顔が覗き込む。
「誕生日、おめでと。……愛してる。」
頬にちゅっと当たり、すっと離れて…
「…うーっ、やっぱ、はじぃぃ……!」
と呟きながら大野の声は離れていく。
トイレにでも行ったのだろう、ぱたりと寝室のドアが閉まったのを見計らって、松本がじわりと涙を滲ませる。
その時誰が傍にいるだろう?
きっと5人でいるだろう。
周りを見れば今だって
あなたがいる。
みんながいる。
──あの頃から、俺は。
何も変わってない…のかな?
(俺の足は地に着いている。)
そう口の中で呟き、
滲んだ涙を拭い。
松本はまた、…いや
今度は優しい夢の中へと、落ちていった。
END
MJおめでとう!!
最近あなた可愛すぎるよっ!!
それに頑張り過ぎです!
いつも嫌な役にしてごめんね。
松本さんの気苦労や抱えるもの、全部。
隣の誰かに、吐き出せてるといいな。
コンサートいつもありがとう。
毎回「過去最高」が更新されて毎回泣いてます。
最近素直になってきたあなたが、
少しでも気を抜いて笑える日が多くありますように。
そしてリクエスト下さった皆様!
糖度中途半端な話でごめんなさい、
書き直すから許してください…!(笑)