青い空。
蒼い海。
白い砂浜。
輝くビキニ。
揺れるおっぱい!
「海、サイコォ~~~~~!!!!」
「イエーーーーーイ!!フゥ~~~~!」
到着した駐車場で、サングラスを手に両手を上げて海に向かって叫ぶ。
雅紀も同じくいわゆるアロハの手を作って場を盛り上げる。
チラチラ見て「ウケるー」と笑う女子共!
片っ端から喰ってやらァ!!
待ってろおっぱーい!!
「お前らうるせぇ。騒ぐんじゃないよ!」
「恥ずかしいヤツら…。」
真夏だと言うのにブリザードのような視線を向ける小さな男二人。
俺から言わせてもらえば、この場でどっちが空気読めてないかっつー話だ。
「ばっか、海に来といてそれはねぇだろ!今騒がずいつ騒ぐんだよ!」
興奮気味に顔を近付けると、智くんに心底嫌そうな顔をされる。
「鼻息荒い。2人はいつでも騒いでんだろ。」
「むふふ、そんなことないよぉ!1.8割増!」
雅紀がムンッとボディビルダーのようなポーズを決めると、
「テンション底無しかよ…」
とニノが頭を抱える。
何を隠そう、俺らはコントをしにわざわざ海に来たわけではない。
「女が!肌だしまくりのビッチ女がこんなにいるんだぞ!!テンション上がるだろっ!!オスのサガが目を覚ますだろっっ!!!」
大宮コンビが顔を見合わせ、そして。
「「帰りたい。」」
「「嘘ぉ?!?!」」
確かに、ゼミ終わりに無理矢理引っ張ってきたのは俺達だ。
先週雅紀と2人で海ナンパに挑んだところ、2人組の男はナンパ目的が見え見えすぎて警戒されてしまった。(俺からしたら海なんてナンパor逆ナン以外で来る意味あんのか?っつー感じだけど。)
更には隣にいた四人組の男グループが、いとも簡単に爆イケギャル(え、死語?)をGETしてたんだ。
ぱっとしない連中だったのに。
絶対的に俺らのが顔面偏差値高いのに!!
それで俺らは作戦を練った。
あと二人追加し、ナンパ目的ではなく純粋に楽しみに来たグループを装おうと。
そうなればあと二人、どんな奴を誘うか。
俺らよりがっついてる奴はダメだ。
出来れば草食系に見える奴。
勿論顔面偏差値を下げてはいけない。
イケメンであることは必須条件。
出来れば被らないタイプのイケメンが理想だ。
ナンパしなさそうな、俺らと違うタイプのイケメン……となれば。
思い浮かぶのはちっこい2人組。
俺と雅紀はゼミ終わりの大宮コンビを拉致した。(完全に拉致だったあれは。何も染み込ませてないハンカチ口に当てて車に引きずり込んだからな。雰囲気大事っつー雅紀の提案で。)
「マジ最悪。おいらバイト入ってたのに。今金ねぇのに。」
「ごめんって!高級焼肉奢るから!」
「肉嫌い。」
ああもう、大野智めんどくせぇ~!
「わーったよ、寿司!回ってねぇやつ!!」
「俺もね。」
「はっ?!」
何でニノまで!!お前はバイトなかったろ!
「何よ、私だって忙しいんですよ。村救ったりモンスターを退治したり…」
「ゲームじゃん!!」
雅紀の言葉にギロリという擬音が見える程の眼光で睨みつけるニノ。
怯む雅紀。
負けんじゃねえ!
…とは口に出来ません…。
俺はニノに歯向かう程怖いもん知らずではない。
「ニノの分はお前な…。」
「ええ~っ、俺バイク買って今ローン組んでるのに~!!」
「知らねぇよ、俺だって旅行の計画あるんだから金欠なんだよ!」
そもそも!
引っ掛けりゃタダで女とヤレ るんだからいーじゃん!!
「な、ボインボインのマシュマロおっぱいにち〇こ挟みたいっしょ?」
「挟みたくない。帰りたい。」
ガッデム!!!
嘘だろおい!!
「って、まさか智くん…ゲイ?」
「ア、アホか!ノーマルだわ!…でもこんなナンパとかは嫌っつーか…」
「あ、この人彼女に二股されてフラれたばっかだから。」
「ばっ、ニノ、てめっ!言うなよっ!!」
え、マジで?
全然知らなかった。彼女の存在すら。
「まだ引きずってるってこと?」
「引きずってねぇよ!ただこんな所でナンパ待ちしてるような馬鹿な女に興味無いってだけ。エロ本で抜く方がマシ。」
「わかる、わかる。俺も頭の弱いチャラい女嫌い。エロゲーで十分。」
2次元かよっ!!
ああ、なんて不健全な大宮コンビ…。
「翔ちゃん、俺らが元の道に正さないと!」
「そうだな雅紀…大宮コンビをまともな人間にしないとな!」
「「その呼び方やめろ!」」
教授が勝手につけたあだ名は、俺もなんだか気に入ってる。
いっつも一緒にいる背格好の似たちんちくりん2人に合ってる。
ってそんなことどうでもいい。
俺らはハンターだ。
生の女がどれだけいいか、身をもって彼らに教えてやらねばなるまい。
「とにかく、早く誰かに──」
「あの…」
突然柔らかい声で話しかけられ、光の速度で「はいっ!」と振り向く。
おさげ。メガネ。
なのに爆乳!!!!
ワンピースの水着から零れ落ちそうだぜっ!!
顔はそこそこだけど、そのアンバランスさがなかなかクる!!
「あの、さっきお話聞こえてしまって…」
「あ、嘘?え?」
ど、どの辺?
ろくなこと喋ってねぇ気がするんだけど??
「あ、お金が必要…とかって。」
「あーーーー。あ、そうだね、うん!そうなの!」
雅紀が胸をなでおろしつつ話を合わせる。
確かにそんな話を一瞬したな。
「あの…良ければ、バイトしません?」
「「えっ?」」
そ、そっち?
「「する!!」」
大宮コンビまさかのやる気満々!
俺らは海の家で汗を流しに来た訳では無い。
ベッドの上で 汗を流しに来たんだっ!!!
「A Vなんですけど。」
俺の思考を読んだかのように爆乳おさげちゃんがにっこり笑う。
「…えっ、マジで?」
まさかのベッドの上はクリアしちゃう感じ?
「マジです!」
「君と?」
雅紀がおさげに手を伸ばす──が、それを格闘家か?!という速さで躱すおさげちゃん。
「ざ、残像…!」
智くん食いつくとこ変!!
「私とではありませんよ。もっと綺麗な方なんでご安心を。」
「まじ?やるやる!やってみたかったんだよね!!AV男優!」
まず食いついたのは雅紀だ。
指数本を高速で動かしてる。
アホだ。
「え、嘘でしょ?本気?」
智くんが笑いながら雅紀の腕をとる。
「男のロマンじゃん!プロとヤ れてお金もらえるんでしょ?!最高じゃん!だってメインはプロで俺らじゃないっしょ?」
「確かに。シコ ってる時に別に男の顔なんて見ねえな(笑)つーか、え、金出んの?!」
バイトしないかという話だった…ということは出るのか!
すげえ!
ただでヤ るどころか金もらえるなんて!!
「そりゃもう。お兄さん達かっこいいんで、弾んでくれると思いますよ。ここだけの話、顔で金額変わりますからね。私ただのスカウトなので決定権はありませんけど。」
「…いくら?」
ニノの目が光る。
「多分この位ですかね…?友人グループを探してて。グループの人数が多ければこれにプラスのマージンがのっかります。4人なんで多分これくらい…」
カタカタとどこから出したのか計算機を叩いて見せるおさげちゃん。
ワンピースの水着姿でほんとどっから出した?
「やろう。やります。」
ニノが力強く頷く。
「ちょ、おいニノ!!」
「おじさんもやりまーす。決定でーす。抜けがけは許しませーん。」
「はぁ~?!何でおいらが!ぜってぇやだ!はずすぎる!!」
「いーじゃん、智くん!滅多にない機会だよ!プロだぜ、プロ!」
「そーだよぉ!それに綺麗な子なんでしょ?誰?俺の知ってる子かな?!」
「ああ、結構有名ですけど…ご存知かな?この方です。」
写真を見せられる。
「………。」
いや、うん。
美しいよ?
綺麗だよ??
でもさ、これ……
「「「「男…?」」」」
おさげちゃんは再度笑顔を見せる。
「ゲイモノなんで。」