【Side 相葉】
最初に声をかけてきたオンナノコは、正直微妙。
でも翔ちゃんの目が訊いてくる。
『準備運動しとく?』
俺は目で返す。
『了解、軽めに切り上げよ!』
何度も繰り返したナンパのおかげで、俺らの息はピッタリ。
翔ちゃんは立ってるだけで逆ナンされる位のキラキライケメンだし、俺は盛り上げてノリでホテル誘えちゃうから、最高のパートナーだ。
取り留めもない話をしながら、飲み物取りに行くコをちらちら物色する。
アイドルみたいに可愛いコ、モデルみたいな綺麗なコ。
ホストみたいな男、俳優みたいなイケメン。
やっぱりクオリティ高い、流石MJの友達だよねぇ。
あ、あの人見たことある!
最近人気のグラビアのコじゃん。
あは、翔ちゃんがロックオンしてる。
あの手の童顔に爆 乳、好きだかんな~。
話してるオンナノコ達にバレないようにくすっと笑う。
それにしても、本当に見たことない人多いなぁ。
列のほとんどは知らないコで。
MJの交友関係の広さがよくわかる。
その中に、ラフな格好の小さい男を見つける。
……何だ、あいつ?
ちっちゃい飾りっけのない男だな。
クラブに来てるとは思えない位地味で、逆に目を引く。
でもよく見るとその横顔は憂いを帯びたイケメンで。
何だかよくわからないけど、そのクラブとは不釣り合いな男に興味を持ったんだ。
「ねぇ、オニーサン。何飲むの?」
スっと翔ちゃん達から離れて話しかけに行った。
ビックリして見上げるその顔は何だか柴犬っぽい。
俺?とジェスチャーされたから、そう、と指をさす。
「聞こえない。あんたダレ?」
「なにを、たのむの?!」
「ビールだけど…何?」
ぶっきらぼうに吐き捨てるような声に、思わず笑う。
確かに、男に急にこんなこと聞かれても困るよね?
「ちょっとこっち来て!」
ドリンクを待つ列から腕を引いてトイレに向かう。
自分でも何でこんなことしてるかよくわからなかったけど、自然に身体が動いてた。
「ちょっ…何すんだよ!」
トイレ近くまで来て腕を振りほどかれる。
何かちょっと怯えた感じ。
その目が何か…草食動物みたいで、異様に可愛くて。
「聞こえないって言われたから、聞こえやすいとこ来た!」
にっこり笑うと呆れてため息をつかれた。
「わざわざそんなことしてまで話すこと俺にはないけど。」
「俺が話したかったの。ダメ?」
「…あんた、バカってよく言われない?」
「ひど!よく言われるけど!!」
そこで初めてそいつが笑った。
眉を八の字にして、ふっ、って。
その顔を見たら、胸で鳴ったの。
ぱちんっ。て。
「はじけた…」
「は?」
「赤い実、はじけちゃった…」
「はぁ??」
「俺、相葉雅紀!君は?」
「……二宮和也……」
「かずなりくん…長いからカズでいいよね!俺は雅紀でいいよ!よろしく!」
「はぁ…?」
「ねぇ、俺と一緒に飲まない?」
「あっ!無理、連れ待たせてるんで!」
「連れ?まさか…彼女…?」
「男だよ。つーかまさかって何だよ!じゃ、相葉さん。」
「雅紀でいいって言ってんのにー!また後でね!」
テーブルに戻ると、翔ちゃんがまだ例のオンナノコ達に捕まってて。
「さっきの奴、知り合い?」
「うん、まぁそんなとこ!」
イケメンの知り合いはイケメンだねー、ときゃっきゃ盛り上がるおバカさん達。
横目で確認するとカズはドリンクの列に戻っていた。
俺には気付いてなさそう?
「ん!ううん!」
翔ちゃんが咳払いをしたので視線を向けると、『お前こいつら何とかしろよ』と目で訴えられる。
これは俺の担当。
さりげなく解散のトークへ持っていき、オンナノコ達をリリースする。
「お前…急に何抜けてんだよ!」
「ごめんごめん!だって、俺ね、さっき…」
列を見てみると、カズの姿はもうなかった。
「……俺、今日の獲物見つけた!」
「マジか?!はえー!どんなオンナ?」
翔ちゃんが残り少ないビールを一気に口に入れる。
「今日はねぇ、オトコ!」
隣で、ぶっ!!とビールが霧状に吹き出した。