「ただいま~」
「おかえり!」
時計は14時半。
軽食を持った櫻井が帰宅した。
「映画決めた?」
「おう!酒も買ってきたから、飲もーよ。」
「あ、うそ?ありがとう!じゃこれツマミに。」
「ありがと~。翔くんの映画決めた?」
「俺は…メリーに首ったけ。」
「翔くんほんとそれ好きだな!」
「智くんは?」
「ジョーズ。」
「智くんこそ!!つーかお互いチョイスにセンスがねぇ!」
「ばぁか、名作じゃねぇか!」
「だからだよ!(笑)」
不朽の名作とは言え、趣味も全く違う。
それでも2人は楽しかった。
まずはジョーズを見た。
展開は知っているものの若干ビビる櫻井を、大野は横目で笑いを堪えながら見た。
平静を装いつつソファを握る手に血管が浮き出ている。
「仕方ないだろ、驚かせるために作られた映画なんだから。
むしろ俺が正しいよね?智くんは監督の意図に反してる!」
屁理屈を並べ強がるセリフに大野がとうとう吹き出す。
映画が終わる頃にはお互いビールのせいでほんのり頬が赤くなり始めていた。
次にメリーに首ったけを観た。
家に置いてあったシャンパンを開け、飲み始めた。
空回りする主人公をバカだなぁと笑う。
「翔くん、このキャメロン・ディアスが好きなんでしょ?」
「まぁね。と言うよりメリーかな。俺もメリーに首ったけなのかも。」
「首ったけって表現古くね?」
「知ってる?原題はね、There's Something About Mary.っていうんだ。
このSomethingは大きいもの、すごいものって意味で、メリーにはすごい魅力がある、って感じの意味なんだよ。」
「ほぇ~…相変わらず何でも知ってんだね。」
「首ったけって、原題どうなってんだろって気になっちゃって。」
クスクス大野が笑う。
大野は櫻井のこういうところを尊敬している。
気になることはすぐに調べ、自分の知識にする。
それをすごいだろ、と自慢するわけではなく、そっと予備知識として会話の流れに組み込んでくる。
自分にはないその努力と勉強熱心さは、単純に憧れだった。
「俺から言わせてもらえば、There's Something About Satoshi.だけどね。」
「何だそりゃ。」
「あなたには何かよくわからないけど、人を引き付けて離さない魅力があるから。俺も松本も旬くんも、智に首ったけだね。」
「前から思ってたけど、翔くんてキザっつーかクサイよね…。」
「え、嘘?普通じゃない?」
「色んな事知ってんのに自分のことは見えてねぇのな。えーと、あれだ。」
とーだいもとくらし、と大野は笑った。