「智くん…やっぱ俺、智くんのことすげえ好きだわ。」
大野は突然の言葉に驚いて振り返る。
「これは…ちゃんとした恋だ。」
その目は慈愛に満ちたマリア様のようだと大野は思った。
言葉よりも瞳が、その気持ちは本物だと語っている。
どくん、どくんと心臓が騒ぎ出す。
『誰にもとられたくないなーって思ったんだ。』
『好きって気持ちに応えたいなって。』
そう言っていた優しい顔が脳裏によぎる。
この櫻井の笑顔を歪めたくない。
悲しくさせたくない。
守りたい。
大野はそう思った。
…相葉ちゃん、こういうことかな?
俺、まだ恋愛の好きかどうかはわかんねぇけど、それじゃダメかな?
翔くんと何かしたいっていうより、離れたくないって思ってんだよ。
今後のこととかじゃなくて、今、ただ一緒にいたいって思うの。
俺もだよ。
って言ったら、どんな顔するかなって、そんなこと考えちゃうんだよ。
それが…答えなのかな?
「……翔くん、俺……」
「あ、ごめん!つい言っちゃっただけなんだ。答えはちゃんと考えてから聞くよ。受け止めるから。今日だけは…夢見させて?」
大野の答えを遮り寂しそうに笑う櫻井。
大野は喉まで出かけた答えをぐっと飲み込む。
(こんなん中途半端だ。…ちゃんとしないと。全部。)
ぎゅっと拳を握りしめた。
櫻井を見送った後、すぐに携帯でとある男に電話をかけた。
「……うん、ありがと。頑張るよ。」
10分程話し、電話を切ると、目を瞑り深く息をつく。
今度は相葉の名前を探してタップした。
数回のコール音で、「はーい、リーダーどしたのー?」と明るい声が鼓膜に響き自然に笑顔になる。
「相葉ちゃん、今いい?」
「いいよー!どうしたの?」
「俺…聞きたいことがあって…。」
大野は相葉に思っている全てを相談した。
「………え、本気で言ってんの?」
「うん。ちゃんとする。ケジメつける。」
「俺、リーダーはこっちの人間じゃないと思ってたからビックリだよ~!」
「そうかな?まぁ、俺も最終的には違うとは思うんだよな。そんでも、これは俺からちゃんと向き合いたいんだ。俺のが年上だから、しっかりしないとって思って。」
「わかった。俺に出来ることなら何でもするよ!」
「ありがと相葉ちゃん!」
相葉としっかり話して通話を終え、携帯を見つめる。
待受画面には、櫻井の昨日の落書きが設定してあった。
「これ…何の絵なんだろ?」
首を傾げ、クスクス笑う。
「直角はすげぇ上手いんだよなぁ。」
愛おしそうに画面を撫でる。
携帯を尻ポケットにしまい、大野は「よしっ」と身支度をして外出した。