たかが3日、されど3日。
櫻井はこの短い期間が気が気ではなかった。
松本とどんなことをして過ごすのか。
お試し期間とは一体何をすればいいのか。
そのまま恋に落ちてしまうのではないか。
色んな不安要素を抱えたまま、ゆっくり、しかし確実に3日が過ぎた。
あれ以来収録が重ならず、一度も会っていないが今日は5人の収録日だ。
そして今日からは自分の番である。
緊張して早めに楽屋につくと、そこには松本がいた。
思い切って櫻井が尋ねる。
「…どうだった?」
「地獄。」
端的に返ってきた答えに櫻井は驚く。
「何が…?」
「翔くんも思い知るよ…。想像以上に恐ろしいわあの人。」
「ど、どういう意味…」
「おはよー!」
元気にドアを開けて入ってきた明るい相葉の声でぶった切られる会話。
松本はおはよーと返し、そのまま目を閉じて上を仰ぎ眉間をつまんだ。
どう見ても寝不足の顔をしている。
まさか…そういうこと、しちゃったの?
夜通ししてて寝不足、ってこと?!
櫻井の思考はどんどんネガティブに働いていく。
ありえる。大いにありえる。
押しの強い色気むんむんの松本。
流されやすいこれまた色気ダダ漏れの智くん。
………これは…何もないって方が無理がある?
「おはよ、翔くん。」
急に肩を叩かれ、文字通り飛び上がった。
「何でそんなビビってんの(笑)今日は…行くね?」
櫻井の家に、という意味だと気付き、コクコクと頷く。
「よろしくー。あ、ねぇ相葉ちゃん、このゲームさぁ~…」
すっと離れてゆく大野から匂う松本と同じシャンプーの残り香がぎゅっと胸を締め付けた。
確実に一緒に過ごしたという事実。
わかっていたはずなのに、急に現実となって目の前にくるとこんなにも嫉妬するものかと苦笑した。
「おじゃましま~す」
「どーぞ、一応掃除したから」
収録後一緒にマネージャーに送ってもらい櫻井の自宅に着く。
3日間しかないので、同棲のような形をとると松本と話し合って決めた、と大野は告げた。
3日も一緒に過ごせる。
逆にそれが終われば…。
櫻井は嫌な考えを払拭するように頭を振る。
楽しもう。
どうせ3日の夢なんだ。
そう思った。
「飯、どーする?」
「翔くんは…ふふ、作れなさそうだよね。」
ということは松本は作ってあげていたということだ。
櫻井は躍起になる。
「つ、作ろうと思えば作れるけど!」
「じゃー得意料理の麦茶ちょーだい。」
クスクス笑う大野に肩を更に落として「はーい」と答える。
松本はきっと豪華で美味い料理を作ったんだろうな、と自己嫌悪になる。
それに気付いてか気付かずか、大野は言う。
「翔くん、頑張んなくていーよ。どんなもんか知りたいだけなんだよ。無理されてない方が俺は落ち着くよ!自然体でいこーよ。」
その言葉に安堵し、櫻井に笑顔が戻る。
「では、気張らず…出前でいいっすか?」
「当たり前じゃん!」
大野が嬉しそうに笑った。
「お先にありがと~」
「あ、早かったね……って、ちょっ!!」
タオル一枚で出てくる大野に櫻井は慌てて顔を背けた。
「ぱ、パジャマあったでしょ!?」
「あったけど…あちーじゃん。てか裸位見慣れてんだろ、何照れてんだよバーカ(笑)」
笑いながらキッチンに向かい水を飲む大野。
自然体……過ぎません?智くん。
俺一応、あなたに告白しましたよね??
この状況、理解してるの??
「ん?翔くんも入ってくれば?」
にっこり笑う大野に、櫻井は従う他なかった。
自分も風呂に入り、時計はそろそろ1時。
大野がうとうとしているのに気付く。
「智くんがベッド使って。俺ソファで寝るから。」
寝室へ案内しようとすると、きゅっと裾を掴まれる。
ん?と振り返ると、八の字になった眉毛で見上げられて恐怖の一言が飛び出る。
「ダメだよ。恋人同士なんだから。ベッドで2人で寝ないと。」