「ゆっくり考えたんだけどさ」
「「早くね?!」」
まさか翌日に答えを聞くことになるとは2人共露ほども思っておらず、声を上げる。
櫻井に至っては半年待つ気でいたので拍子抜けした。
ここは楽屋だが、相葉と二宮はメイク室にいるため3人しかいない。
「一晩寝ずに考えたんだよ。…まぁ少し寝たけど…。」
二言目はとても小さな声だった。
しかし確実に2人の耳には届いている。
(寝たんかーーーーい。)
一睡もしていない櫻井は脳内でツッコミを入れた。
「俺ね、やっぱり男同士で付き合うとかわかんねぇや。メンバーだし。」
松本も櫻井も、やっぱりか、と落胆する。
どちらか選ばれても選ばれなくとも傷付くのは変わりないのだから、せめて片方は実って欲しかった、というのが本音だった。
とは言え、当然といえば当然だ。
いくら大切な仲間で好きな友達だからといって、告白されたからと言ってすぐに恋愛対象になるわけがないのだ。
すると次に大野の口から信じられない言葉が飛び出した。
「だから、3日ずつ付き合わない?」
「「……………は?」」
2人の声がハモる。
「…えっと…どっちから?」
(違う!俺はそんなことが聞きたいんじゃないっ!!)
と櫻井は脳内で否定するも、大野には届かない。
「どっちからでもいーよ。まつじゅんが先に言ってくれたからまつじゅんにする?」
「えっ……あ、うん、いいの?」
松本はチラッと櫻井を見る。
お互い上手く状況が把握出来ていない。
「あ…お先にドーゾ。」
(タクシーを譲るみたいに言ってしまったぁぁぁぁぁぁ)
脳内の櫻井はのたうち回る。
勿論大野には見えていない。
「あ、お試しだからエロい系はなしね?」
ちらっと牽制をするように見る大野に、松本は苦笑して両手を挙げて頷く。
「よし!じゃ今週はまつじゅん、よろしくね!」
パンと手を叩き、終わらせようとした大野に慌てて松本が尋ねた。
「あの、大野さん、旬は?」
「あー、電話来た。断ったよ。」
「断ったの?!」
松本は驚いた。
てっきり3人ともお試しかと思っていたからだ。
「そりゃね。俺はまつじゅんと翔くんは好きだけど、旬くんのことはよく知らないし、しかも結婚してんじゃんか。」
何も知らない櫻井もすぐに理解した。
なるほど、最初のイライラの矛先は小栗旬か、と納得する。
それと共に、嬉しさがこみ上げる。
本当に自分と松本を好きでいてくれているということ。
このお試し期間は無駄ではないかもしれないということ。
それを断られた小栗が皮肉にも証明する形となっていた。
「そ…っか。アイツなんて?」
「えー残念だなーって。で、潤やもう1人はどうなの?って聞かれたから、わかんないから悩んでるって言ったら、お試しで付き合ってみれば?って教えてくれたの。頭いいよね!」
((お前のせいか、小栗旬!!!!))
櫻井と松本の思考がハモったことは誰も知らない。
「そーゆーわけで、ふつつかな娘…じゃないな、男ですが、よろしくお願いします。」
へらっと笑った大野を見て、櫻井と松本は曖昧に笑顔を返した。