「ニノ、最近変じゃね?」
「だよねぇ…翔ちゃん何かした?」
「何で俺だよ!」
ふとニノの隣でべったりくっつく智くんと目が合うと、ぱっと逸らされた。
普段ならあんま目が合わないけど(基本俺ばっか盗み見してるし)、たまに合う時にはふにゃっと笑ってくれるのに。
え?何?何か知ってる?
松本を見ると、いつも通り涼しい顔で携帯いじってる。
…やっぱ智くん何か知ってるのかな…。
まさか、ニノと何かあったとか?
困る。
それは猛烈に困る!
相葉ちゃんと俺からしたら一番避けたいところ!
でも智くんと何かあれば流石にあんなくっつかないだろうし…。
これは、大義名分のチャンスかも?
『智くん、今日時間ある?相談があるんだけど。皆には内緒で。』
手早く文章を打って送る。
携帯を触っていた大野さんはすぐに見て、驚いた顔でこちらを見た。
俺は相葉ちゃんと話していて見ないふりをする。
少しして携帯が震える。
『わかった。店お願いします。』
いつもなら絵文字付きなのに、急いで打つからか淡白な文面。
やばい。
緊張してきた。
いや落ち着け櫻井翔。
今日はニノの心配。うん。大丈夫。
深呼吸して『了解、詳細は後程!』と返した。
「おつかれー」
「お疲れ、ごめんね急に」
俺が着いて20分ほどで智くんはやってきた。
終わった時間は同じだが、何やら誰かと話し込んでたらしい。
誰?と聞いたら、まぁいーじゃん、と濁された。
もしかして、ニノ?
まぁ、焦らずゆっくり聞いてこう。先は長い。
「どーしたの?珍しいね、俺に相談なんて…」
「まぁ座って座って。」
向かいの席に腰掛け、帽子をとる智くん。
帽子のせいでぴょこんと後ろが跳ねてる。
可愛いなぁ。本当に年上なのか甚だ疑問だ。
店員さんを呼び、ビールと適当な料理を頼む。
個室の扉が閉まると、少し沈黙が流れた。
「相談っつーのは…ニノのことなんだけどさ。」
びくんと肩が揺れる智くんを俺は見逃さない。
「やっぱ何か知ってる?」
「…何で?」
「俺と相葉ちゃんの会話、聞こえてて目を逸らした感じしたから。」
「あー…なるほどね」
翔くんには敵わねーなぁ、と頭をポリポリかいて困惑の表情を浮かべた。
「まぁ…ニノは自分と闘ってんだよ。」
「自分と?どういう意味?」
「詳しくは言えない。俺が言うことじゃない。」
真剣な目でこっちを見られる。
たまに出るこの圧倒的なリーダー感。
この大野智には誰も逆らえないと思う。
そのギャップもこの人の魅力の一つだ。
言葉が出ないでいると店員さんがタイミングよくビールを運んでくる。
「乾杯しよ?」
またふにゃふにゃの笑顔に戻り、ハッとして慌ててジョッキを持ち上げた。