飯島直子を起用した「ジョージア 男のやすらぎキャンペーン」や、一大ブームとなった、吉本芸人を起用した「明日があるさ」をといったCMをヒットさせ、また商品としては「爽健美茶」「紅茶花伝」などの発売を手がけ、日本人としては26年ぶりとなる日本コカ・コーラの代表取締役社長にも就任された魚谷さんの、過去の仕事体験を「マーケティング」を中心にして綴られた本です。
読んでいてなるほどと思う部分が多々あり、それと同時に魚谷さんの武勇伝が、自分を勇気づけてくれ、読んでいてとてもワクワクした素晴らしい1冊でした。
あまり外部には情報の出ていないコカ・コーラという会社がどういった会社であるのか? ということが分かりますし、マーケティング戦略がどういうものであるかなど学べる点は多々あり。
個人的には、日本コカ・コーラで営業職の仕事に携わった時のことが印象に残りました。営業の現場にマーケティングの要素を取り入れ、「人間関係だけの営業」と思っていた経営トップに対して、「営業は変わった」と納得させるくらい、2年間で提案力のある営業に変えたこと。
それまでの部署の行動・思考を変えさせるというのは、口で言うのは簡単ですが、実際はなかなか変われるものではありません。それを2年で変えた魚谷さん部下を引っ張る力。そして常にマーケティングという思いがあったからこそ、目標がぶれることなく達成できたのだと思います。
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目次
はじめに
序章 予想もしなかった日本コカ・コーラへの入社
第1章 コカ・コーラのマーケティングシステム
第2章 原点は人に喜んでもらうこと
第3章 顧客は見えているか
第4章 現場に足を運んでいるか
第5章 飛び抜けた商品を提供できているか
第6章 最後までやり抜いているか
第7章 人の心を動かしているか
第8章 関係者を巻き込んでいるか
第9章 常識にチャレンジできるか
終章 マーケティングとは経営そのものである
おわりに
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ブランドの価値を分解すると、「intrinsic value」と「extrinsic value」に分けられます。
「intrinsic value」とは基本的な価値、すなわち「機能やスペックの価値」であり、
「extrinsic value」とは、そこから付帯的に加わる価値、すなわち「エモーション、情緒や感性の価値」と表現できます。
「ペネトレーション」と「フリークエンシー」
ペネトレーション →商品の浸透率
フリークエンシー →頻度
「ペネトレーション」と「フリークエンシー」のかけ算によって、消費度合いを上げてもらうことがは、マーケティングの基本的な考え方である。
ポジショニング戦略
生活者が周辺に情報が氾濫している時代には、商品ブランドのポジショニングが重要。
なかでも「一番手」であるということは、一度獲得するとどれだけ競合が力を駆使しても簡単に奪われることがなく、また長きにわたり消費者に強烈なインパクトをもたらすポジションである。(=「一番手の法則」)
「魚谷、我々の会社は生活必需品を販売している。だから、いつもお客さんの目線に立たないとダメだ。スーパーマーケットでもどこでも、売り場に行ったらじーっとお客さんを見る。どんなふうに商品を選んでいるか。それを現場で観察して、理解するところから、このビジネスは始まるんだ」
効果的なコミュニケーションとは、テクニックではなく自分自身が情熱を持って人生を積極的に生きること。それが他人にも影響する
マーケティングという戦略には、コケるときもあるのです。関西弁で言えば、「しゃーない」ということです。それよりも大事なことは、ベストを尽くすこと。その場その場で、ベストと思える取り組みをする。そうすれば、何かが開けてくるのです。
「戦略とは、何をやるか、だけではない。何をやらないか、を決めるのも戦略である」
人と同じことをしていたのであれば、大きな成果は得られません。似たような商品を出したところで、消費者からの大きな支持は得られない。買うに足る飛び抜けた価値や意味を見いだせなければ、消費者にとっての感動もありません。
たとえば、紅茶を飲むとき、最適なお湯の温度は何度なのか。あつい紅茶が好きな人もいる。しかし一方で、アイスティーが好きな人もいる。しかし、これを平均するとどうなるか。ぬるい紅茶です。こんなものを飲む人はいない。
ところが、統計を取り、平均値を出してモノづくりに挑むと、こういうことが起こりうるということです。それでは商品は売れない。平均点のマーケティングはダメだということです。
もっとロジックできちんとモノが言えるように、戦略的なことが言えるようにする。営業は、情報が右から左へ流すメッセンジャーの役割から、逆に、現場はこうなんだ、だからこういう戦略施策が必要だ、と日本コカ・コーラの中にフィードバックし、提案していく力をつける。そのためには、なるほどと思わせる説得力のあるトータルなコミュニケーション力が必要になる。
ビジネスを担っているのは人です。それを担う人が懸念を持ちながら、無理やりに月末に数字をつくるためだけに仕事をしていては、心が入るはずがない。それが、お客さまのためになるはずがない。しかし、お客さまの満足を達せすることが目的なのだと言われ、そのためだけに集中していった。そうすることが、結果的に数字も上げていったのです。
コンセプトを社内で一度明快にした上で、ターゲットは誰で、こういうものにしたい、こんな風に訴えかけたい、こういところを強調したい、と明確な考えを伝える。それを表現としてどうするか、というところにこそ、クリエイターの腕の見せどころがあるのです。
- こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる/魚谷 雅彦
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