さようなら澄懐堂美術館 | 骨董水妖◇美術品は美術館で見るよりおうちで使う方がずっと楽しい!◇

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江戸時代の古伊万里、超絶技巧の時代蒔絵の重箱、美術館で見た有名な絵師の絵画など、ハイクラスの古美術品が、とってもリーズナブルに買えるお店です。

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三重県四日市市の駅のすぐそばにある
澄懐堂(ちょうかいどう)美術館。


私の一番好きな美術館。
今季の展示をもって移転なさるそうです。


澄懐堂美術館は中国の古い書画の美術館です。
中国の古い書画は
長条幅(ちょうじょうふく)と呼ばれる、非常に長い掛け軸が多く、
澄懐堂さんは長い掛け軸を展示するために建てられ、天井が高く空間の広い大変贅沢な創りです。

小林秀雄先生は、その著作の中で
「昔は建築を離れた絵画というような奇妙なものを誰も考えつかなかった」
とお書きになりました。
澄懐堂美術館の建物は、まさに
《この建築でなければ長条幅は居場所がない》
そんな所です。

この素晴らしい建物で、作品が拝見できなくなるのは残念です。
滅多にお目にかかれない素晴らしい作品を、何時間でも独り占めにして
作品と対峙できた至福の時空間も
今春限り。



十数年前から、中国では美術品購入熱が高まり
日本でもたくさんの中国物オークションが開催されています。

「何故、中国の古い宝物のオークションが日本で行われるのか?」

と言いますと、それは

日本に中国の宝物があるからです。


古来より、先進国として中国から舶来されたお品や書画は日本の宝物となりました。
日本の国宝の多くは足利将軍家の宝物
《東山御物》です。
室町時代に宋や元から舶来されたお品です。
以来、宝物として大切に保管され現在に至っています。


もう一つ、中国の美術品が日本に渡って来たのは大正から昭和初期。

辛亥革命で、清朝(しんちょう)の高官達が経済的に困窮し、所蔵なさっていた美術品をお金に替えたいと考えたんです。
当時、日本と中国は戦争を経てはおりましたが、文化的にはお互いに尊敬し合い、教養人の間には強い繋がりがあったのです。

清朝の高官から相談を受けた内藤湖南(中国と深い繋がりのあった歴史学者)と犬養木堂(犬養毅、大政治家)の斡旋で、
日本の教養のあるお金持ちが、中国の高官の所蔵されていた大量の中国の美術品を買い取ることになったのです。

その時に当時の朝日新聞社の社長だった上野理一氏の所蔵となった作品は
《上野コレクション》として、京都国立博物館に収蔵されています。


澄懐堂美術館のコレクション
犬養木堂や内藤湖南と懇意だった山本悌二郎氏がその時に蒐集なさった作品です。
山本氏は「東洋のものは東洋に残したい」と蒐集に情熱を注がれたのだそうです。
一幅でも多く掛け軸を買うために、軸箱を作ることにはお金を使わず、新聞紙のインクが虫除けになることから、掛け軸を新聞紙に包んでいたとか。
その後、散逸の危機に際して山本氏の側近であった猪熊信行氏がコレクションを引き継ぎ、猪熊氏の故郷の四日市市に美術館を建てられたのです。




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これは王鐸(おうたく/1592~1652年)の書。
画像はハガキですが、本物は長さが254cmもあるんです!
掛け軸は上下に余白がありますから、作品としては3mをゆうに超える、大変大きな作品です。

絖本(こうほん)といって、最高級の目の詰まった絹に、非常に上質の墨で書かれています。

この作品は王鐸49才の作ですので、376年前に書かれたんですね。
ところどころ補筆はありますが、墨は黒々として艶やかで、時代を感じさせません。
右へ左へ大きく揺れ、ダイナミックな姿です。


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王鐸は明朝に仕え、明朝が倒された後清朝にも仕えたので、二臣と呼ばれて当時中国では軽蔑されたんですって。

現在では、王鐸はとても高く評価されています。
こんなに大きな作品となると、もしオークションに出品されたとしたら
億単位の値がつくことになるでしょう。

王鐸作品の中でも特に貴重な作品です。



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李成(919~967年)作 《喬松平遠図》
北宋時代の人です。
確か、李成の作品と確認されているのはこの作品だけだったと思います。
実物は205、6×126、1cmと、とても大きいんです。

是非本物をご覧になってください。
日本では平安時代。
枕草子よりも源氏物語よりも古い時代に、こんなに壮大な視点で、かつ繊細な峻法(岩のヒダヒダ)を施した絵を描いていたとは!

中国美術のスケールの大きさ、文化の奥深さと
それを愛して止まなかった偉大な日本の文化人の情熱を
ご自身の目で感じていただける最後のチャンスです。

この作品は4月29日~5月7日のみの特別展示です。



澄懐堂美術館
《清朝中期を飾った文人墨客たち》

5月7日まで

三重県四日市市鵜の森1-1-19
電話 059-359-4755
月曜定休、4月6日は展示替えのためお休み
3月20日(祝)開館

10時〜5時(入館は4時迄)
大人500円

学芸員の井後さん(体格の良い方)は、作品についてわからない事をなんでも教えてくださいます。



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ご希望の方先着1名様に、無料入館券をプレゼントさせていただきます。
一枚でお二人入館できます。

営業時間内にお電話くださいませ。
またはコメント蘭よりご連絡ください。



骨董水妖
白井澄子
京都市東山区古門前通大和大路東入元町367-4杉山ビル3F
phone/075-541-5128

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