日々は過ぎ、淋しさは消えませんが
母のいない生活に慣れた頃
(とは言っても1ヶ月くらいでしょうか…)

姉がいつものように私を自転車の後ろの
子供用の椅子に乗せお出かけしました。

どこいくん?

何度か聞いたと思います。

何も答えてはくれませんでしたが。

見たことの無い道を行き
子供ながらに近くないことだけはわかり
何だか少し不安で心細かった記憶があります。

着いたのは、見たことの無いおんボロアパート
姉に手を引かれ アパートの一室に入りました。

母がいました。

思いがけない母の登場に
駆け寄って甘えたい気持ちもありましたが

何だか私の知らない人のような感覚で
すぐに近くには行けませんでした。

涙は出ます。

会いたかったから
淋しかったから
甘えたかったから
抱きしめてほしかったから
不安だったから
悲しかったから

でも、私はその場に座り動きませんでした。

「おいでよ」と
姉と母に言われましたが

素直に行けませんでした。

母がいたことの衝撃が大きすぎて
その後何をしたのか
何を話して そしてどうなって
家に帰ったのかはあまり覚えていません。

でも、今日のことを誰かに話したら
一生母にも姉にも会えなくなる

そんな呪文に支配されながら

母が家に戻る日までを過ごすことになります。

後に母は家に戻ってきました。

大人の話なので、理由も成り行きもわかりません。

戻ってきた母は
夜、お弁当屋さんの仕事に行くようになりました。

私はもうすぐ小学生という頃でした。

初めて母がいなくなった時の
ぼんやり覚えている記憶です。

その間も父は酒を飲んでは暴れ
警官が訪問し 兄たちがキレ
家の中はいつも通り めちゃくちゃでした。