おすすめ問答2 | 言世と一昌の夢幻問答_尋常小学唱歌と早春賦の秘密

言世と一昌の夢幻問答_尋常小学唱歌と早春賦の秘密

故郷・朧月夜・早春賦…名作唱歌をつくった最重要人物がついに証言
…もし吉丸一昌に会えたなら、こんな感じの会話かな、と考えてつづっていきます。
すべて事実に基づくフィクションです。
唱歌や童謡に関するWEBサイトにある俗説や間違いも正していきます。

(順不同)
第46話~第55話 映画『うさぎ追いし』
鳥取県で制作された映画にちなんで、近代音楽史上に残る田村福井論争を取り上げます。この論争の深層に迫る学術研究はこれまでになく、一昌の証言は貴重なものです。創作の世界と学術の世界との違いをどう見分けていくか、示唆に富む発言が次々に飛び出し、言世は自分の考えの浅はかさに気づきます。尋常小学唱歌の成り立ちを語るうえで避けては通れない論争について理解するのに、この問答はもっとも分かりやすいものでしょう。第93話のうさぎ追いしの行方は、長野県を舞台に作られた同名映画について寸評します。
第32話~第36話 『日本童謡音楽史』
童謡運動研究史に燦然と輝く2冊の著書を取り上げ、批評するシリーズです。そのうちの1冊が民俗音楽の大御所小島美子氏の『日本童謡音楽史』。一昌は、小島氏の修辞を見抜き、小島氏が尋常小学唱歌の本質を分かっていないと断じます。「故郷を離るる歌」の歌詞を珍妙だという小島氏、悪歌詞の典型だという童謡論の大御所藤田圭雄氏に対して、一昌は論評するに値しないと相手にしません。「第14話 唱歌と童謡2」と併読するとわかりやすいでしょう。
第27話~第31話 浜辺の歌
現代において〈早春賦〉と人気を二分する唱歌〈浜辺の歌〉の深層を論じます。一昌は、推理作家の文章から導き出された牛山充悪者説を一笑に付し、これまでの固定観念を打ち破るような林古渓論を展開します。雑誌『音楽』に掲載された〈ああ、たいたにく〉と〈春声四章〉という2つの歌は、ほかの「浜辺の歌解説」ではまったく触れてこられなかったほとんど未知の領域といってよいでしょう。言世は「先生が教えてくれなかったら、ワタシ一生古渓さんを誤解したままで終ったわ」と感慨に浸ります。林古渓を誤解したくない人は必読です。
第16~19話 春の小川
名作唱歌〈春の小川〉の制作秘話です。河骨川をモデルに歌詞ができたという創作話を聞いて、一昌は「キミの心の中にある春の小川、それがモデルだ」と意味深な言葉を発します。いきなり煙に巻かれた言世は、原案者である下村千王伎と一昌の縁や、歌詞改作問題を考えるための新しい切り口を聞いて、すっかりのめり込んでしまいます。同時代の「小川」の歌を次々に解説して見せるあたりは、一昌が唱歌研究の最先端にいたことをうかがわせます。