『海のアトリエ』宝物のような記憶 | ことりの木ノート vol.2

ことりの木ノート vol.2

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色々な糸を紡いでいつか「ことりの木」というぬくもりのある布を織り上げていけたらと思います。
そんな夢への覚え書きノートです。

前回のブログで

少し紹介させていただいた

堀川理万子さんの絵本

『海のアトリエ』のこと


やはりもう一度お話ししたくて


偶然なのですが原田マハさんの

『永遠をさがしに』という小説を読んで


それがとてもよくて


『海のアトリエ』と同じで

気持ちが凪いでいくような


でもふわふわとした感じではなくて

何か確かなものが腑に落ちるような


そんな気持ちで

読み終えることができました


音楽療法のお仕事をしているお友だちに

読んでほしいなぁと思いました(▰˘◡˘▰)



そして

この小説を読んで

『海のアトリエ』を読んだ時の気持ちが

揺り戻され

また改めて読みたくなりました



どちらも

思春期ただなかの女の子が

親でも学校の先生でもない

それまでほとんど関わりのない

大人の女性と

過ごした時間が描かれています


もちろんそうなるに至った事情は異なり


絵本と小説なので

描写の仕方も違います


『海のアトリエ』の女性は絵描きさん

(裏表紙より)



『永遠をさがしに』の女性は音楽家

(チェリスト)

(裏表紙より)


それぞれ絵と音楽が重要な役割をもって

物語が紡がれていきます




『海のアトリエ』は

おばあちゃんが孫に語る物語


おばあちゃんが孫くらいの歳の頃

学校に行けなくなっていて


そんな夏休みに

母親の昔からの友だちであるその女性から

“ひとりで遊びにおいで”

と誘われます


海辺のアトリエで

2人きりで過ごした時間は


女の子(おばあちゃん)の心を

解放していきます


この年頃の女の子を

ことさらこども扱いせず

上から目線の言葉で

急いで変えようともせず


そのままのひとりの人間として

関わることのできる大人


素敵だなぁと思います


豊かでのびのびとした時間

忘れたくない宝物のような記憶



絵描きさんは女の子に合わせて

自分の生活のペースを変えません


でも女の子を

共に暮らす大切な人として尊重し

丁寧に一緒の時間を過ごしていきます



白い紙を前に

何か描きたいのに描けないでいる女の子に

絵描きさんは言います


人はだれでも、心の中で物語を作ることができるでしょ。だれでもみんな、心の中は自由だから、それをそのまま、描いちゃえばいいのよ。どんなふうだっていいのよ。



帰る前の日

丸一日使って準備した

思い出の詰まったパーティの

なんと素敵だったこと!

ああ…本当に私も仲間に入りたいくらい!…


そして翌日

海で過ごした最後の日の

ふたりの静かな時間は

心に沁みます



もうひとつ


こんなお友だち(絵描きさん)

をもつ女の子のお母さんも

そしてその友だちに

娘を託すことができるお母さんも

なんだか素敵

そこの事情はもちろん描かれていないのですが


魅力的な“大人”って

人生の中で

本当の意味での人とのつながりを

築くことができる人

ちょっと飛躍しすぎかもしれませんが・・・


そんなことも感じさせられました



柔らかい色彩で丁寧に描きこまれた絵は

どのページも

見る人を


海辺のアトリエに連れて行ってくれます