ことりの木ノート vol.2

ことりの木ノート vol.2

日々のくらしのささやかなできごと 人との交流 大好きな手しごと 絵本 やりたいことへの一歩一歩…
色々な糸を紡いでいつか「ことりの木」というぬくもりのある布を織り上げていけたらと思います。
そんな夢への覚え書きノートです。

2〜3ヶ月前のことになりますが

アーサー ビナード氏の講演を聴く機会に恵まれました
実はビナード氏のこと
あまりよく知りませんでした

氏は詩人です
アメリカで生まれ 大学卒業と同時に来日し、数々の詩作、翻訳をしています

ビナード氏といえば
わたしの中ではこれです

ボブディランのよく知られた歌を
翻訳して絵本にしたものです

ポール・ロジャースの絵もよくて
自分自身も 折に触れて読み返していますが

これまでに何回か
新しい出発を迎えた大切なひとに
プレゼントしたこともある
大好きな一冊です

・・・
でも、そんなわたしだから かえって

ビナード氏の講演で語られた
言葉の数々は
乾いた土が水を吸い込むように
心にしみ込んできました

氏は この絵本を製作するために
何年もの時間を費やしましたそうです


74年前の8月6日
広島の「ピカドン」によって遺品となり
平和祈念資料館に展示されている「もの」たちの語る言葉をおさめた写真絵本です

氏は この「もの」たちを
カタリベ といいます

あの時間で止まったままの
床屋さんの壁にかかっていた時計

女の子が食べられなかった
ご飯がはいったままのお弁当箱

とけてまんまるじゃなくなったビー玉
・・・

本当は
資料館にいるはずなんて なかったものたちが、あの日あの瞬間 突然 
本来の持ち主と離れ離れになり 

探しているものは なんだろう・・・

ビナード氏は
講演でこのように語られました

『耳をすませると、語るはずのない「もの」の声が聞こえてくる
ものはカタリベになりうる…
いつか そのカタリベの通訳となり 伝えることができるか、と考えるようになった』


「もの」が寄り添う
「もの」が代弁する人の思いを通訳するビナード氏こそが
実は誰よりも日本語を愛し
愛した美しい日本語で語るカタリベであることに気付かされます

声高に 強い言葉で「平和」を叫ぶのではなく

身近な人が 語りかけてくるような
静かな日常の言葉だからかえって

ずーっと 遠い昔のことじゃなくて

私たちとなんら変わらない

セツコさん
トシユキくん
マリコちゃんだったということが
しみじみと
胸の痛みとともに伝わってくる

どうか 世界中のひとりでも多くの人が
この絵本を開いて

アメリカ人であるにもかかわらず
平和祈念資料館に何度も通い
遺品たちの言葉に耳を傾け続け
美しい日本語で語ってくれたビナード氏の

思いに触れてくれますように

「もの」たちの語りかける言葉を聞いてくれますように


    「さがしています」
           アーサー・ビナード 作
           岡倉禎志 写真
           童心社  2012