【精神健康の基準】15.現実処理能力を使い切らない能力 | 本好き精神科医の死生学日記 ~ 言葉の力と生きる意味

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「こんな苦しみに耐え、なぜ生きるのか…」必死で生きる人の悲しい眼と向き合うためには、何をどう学べばいいんだろう。言葉にできない悩みに寄りそうためにも、哲学、文学、死生学、仏教、心理学などを学び、自分自身の死生観を育んでいきます。

 

「精神健康の基準について」より

  1. 分裂(splitting)する能力、そして分裂にある程度耐えうる能力
  2. 両義性(多義性)に耐える能力
  3. 二重拘束への耐性を持つこと
  4. 可逆的に退行できる能力
  5. 問題を局地化できる能力
  6. 即座に解決を求めないでおれる能力、未解決のまま保持できる能力
  7. 一般に嫌なことができる能力、不快にある程度耐える能力
  8. 一人でいられる能力、二人でいられる能力
  9. 秘密を話さないで持ちこたえる能力、嘘をつく能力
  10. いい加減で手を打つ能力、意地にならない能力、いろいろな角度からものを見る能力、若干の欲求不満に耐える能力
  11. しなければならないという気持ちに対抗できる能力
  12. 現実対処の方法を複数持ち合わせている
  13. 徴候性へのある程度の感受性を持つ能力、対人関係を読む能力
  14. 予感や余韻を感受する能力
  15. 現実処理能力を使い切らない能力

 

15.現実処理能力を使い切らない能力

 

 

現実処理能力を使い切らない、あるいは使い切らすように人に仕向けないこと。

 

倒れるまで頑張らない、とも言い換えられます。

 

そこまでやらないと頑張っている感じがしない、

全力をださない=手を抜いている→そんな自分じゃ認めてもらえない

 

という発想は、とても疲れるし、生きづらい。

 

人生において、全力を使い切らねばならない場面はそんなに多くないはずです。

受験や何かの発表など、大きなイベントならまだしも、

日々の学校や仕事も、倒れながら行き続けるようでは、続かないし、

何かが合っていないはず。

そんな通い方、働き方を強要してくるブラックな人とは離れた方がいいし、

誰も幸せになれません。

 

中井久夫先生があげられた健康定義15を見てきましたが、

やはり総じて「余裕をもつ」ことが大切なのだと思いました。

 

余裕がない生活は、しんどい生き方です。

余裕を使い切らない

それは手抜きではない。

それはまた、人生における優先順位を確認することにもなります。

 

学校や仕事は、人生における最優先事項にはなりえないはず。

仕事するために生まれてきたわけではないですからね。

 

じゃあ、なんのために生まれてきて、生きているんだろうか。

 

その答えになりうるものに使うために、余力は残しておきたいものです。

 

 

そういう意味でも、また古典・歎異抄を読み返してみたいと思います。