【日本人が知らない漢方の力】 上医は未病を治す。敵が攻めてきてから武器を作るのでは遅い。 | 本好き精神科医の死生学日記 ~ 言葉の力と生きる意味

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「こんな苦しみに耐え、なぜ生きるのか…」必死で生きる人の悲しい眼と向き合うためには、何をどう学べばいいんだろう。言葉にできない悩みに寄りそうためにも、哲学、文学、死生学、仏教、心理学などを学び、自分自身の死生観を育んでいきます。

最も腕のいい医者とは、どんな医者か。

でも、その腕の良さは、素人には見分けにくいのかもしれません。



■日本人が知らない漢方の力

「未病」という考え方


そもそも病気とは何だろうか。
たとえば、がんが病気であることは間違いない。
だが今、癌が見つかったという場合でも、
いちばん最初に細胞が癌化したのは、10年も20年も前かも知れない。
では最初の一個が癌化したら癌なのか、健康ではなくなったのか、
というとそうではないだろう。
こう考えると、病気とは一体何だろうということになってくる。

インフルエンザの場合、それまで元気だった人が急に熱を出してぐったりする。
1~3日前にウィルスに感染したからだが、
わずかでもウィルスが体に入ると必ず感染するというわけでもない。
免疫機能によっても違う。

病気と、病気でない状態とは連続しているのである。
西洋医学では病名がつかないような、
治療の対象にならない様々な体の悩み、不調がある。
この健康ではない病気でもない、病気になる前の段階を、
東洋医学では「未病」という概念でとらえてきた。
約2000年前、前漢の医書とされる『黄帝内経』に、
上工は未病を治し已病(すでに病気になってしまったもの)を治さず」とある。
いちばん腕のいい医者は、
 病気になってから治すのではなく未病を治す」と記されているのである。
逆にいえば病気が現れてから治療する医者は腕が悪いことになる。

また別のところには、
「敵が攻めてきてから武器を作るのでは遅い
 のどが渇いたからといって、井戸を掘るのでは遅い
 病気も同じで、病気になる前から治療を始めるべきだ」という記述もある。



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リーダーに最も必要とされる資質は、

これから起きうるであろう危険を如何に早目に察知できるか、

という、「先を見通す智恵」であると言われます。



事が起きてから対処するのも大事だし、

病院に行くこと自体が、調子が悪くなってからだから、

病気になる前から治療するというのは、実際は難しい気もしますが、

このことから学ぶべきことは大きい。


まだ病気にはなっていなくても、

問題が発生していなくても、

起きうる事態を見抜いて、早め早めに、

手遅れになる前に手を打てるかどうか。


その道の知恵がない人からは、

「まだ何も起きてないのに、何をそんなに大げさな、

 無駄な努力に終わるだろうに、バカなヤツ」

とか、変人扱いされることもあるかもしれません。


腕のいい医者が、先手先手で予防してくれて、病気にならずに済んでも、

ただ痛い治療をされた、金を取られた、と皮肉られることもあるかもしれません。


本当に優秀な医者がかかりつけだと、

あたかも何も起きないような、

平和な、安定した日々が送れるのかもしれませんが、

その有り難さを知る患者さんは、どれだけいるんでしょうか。



今が有ること、平和でいられること、安心できることは、

決して「何もない」のではなく、

防波堤のように護ってもらっていたり、

先々に起こりうることを既に対処してもらっていたりするから、

そういう場合がほとんどではないでしょうか。


それを「当たり前」と受け流せば、恩を仇で返す不幸な不孝者に。

「有り難う」と感謝できれば、恩を知って恩に報いる幸せ者に。



未来を見通す智恵と、

手遅れになる前に、早目に対処する行動力と、

守られている環境に感謝する恩を感じる心が、

安心して、満足して生きるポイントとなることではないでしょうか。







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