【死ぬ瞬間 キューブラ-・ロス】第5段階:受容、衰弱、感情の欠落 | 本好き精神科医の死生学日記 ~ 言葉の力と生きる意味

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「こんな苦しみに耐え、なぜ生きるのか…」必死で生きる人の悲しい眼と向き合うためには、何をどう学べばいいんだろう。言葉にできない悩みに寄りそうためにも、哲学、文学、死生学、仏教、心理学などを学び、自分自身の死生観を育んでいきます。




キューブラ-ロスがとなえた、「死の受容プロセス」の5段階

1.否認  denial
2.怒り  anger
3.取引  bargaining
4.抑うつ depression
5.受容  acceptance

いよいよ最終段階。

しかしこの「受容」が最も複雑な気がします。



■死ぬ瞬間 E・キューブラー・ロス


■第五段階/受容 Acceptance

患者に(突然の予期せぬ死に見舞われることがなく)十分な時間があり、
これまで述べてきたいくつかの段階を通過するにあたって
何らかの助力が得られれば、
やがて患者は自分の「運命」に気が滅入ったり、憤りを覚えることもなくなる。

この段階に達するまでに、患者はかつてもっていた様々な感情、
すなわち生きている者や健康な者への嫉妬
まだ死を直視する必要のない者たちへの怒りなどを表明した。
多くの大切な人々や場所から切り離される喪失感を嘆いてきた。

そうして患者はある程度の期待を持って、最期の時が近づくのを静観するようになる。
患者は疲れ切り、たいていは衰弱がひどくなっている。
まどろんだり、頻繁に短い眠りをとりたくなる。

だがそれは、抑鬱の時に欲する眠りとは違って、
回避のための眠りでもなければ、
痛み・不快感・かゆみを忘れるための急速でもない。
しだいに長い時間眠っていたいと思うようになる。



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体力的にも、精神的にも、余力は残っていないと、

誰だってゆっくり休みたくなります。

長いこと眠っていたくなります。


感情が湧きあがるのも、脳の活動であり、

感情を表現するためにも、肉体的な動きが必要。

疲れ切った状態では、それすら表に出す余裕がなくなってしまうのかもしれません。


キューブラー・ロスは、最後の段階では、

死を「受容」すると表現しながらも、次のようなことも指摘しています。


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受容を幸福な段階と誤認してはならない
受容とは感情がほとんど欠落した状態である。

あたかも痛みが消え、苦闘が終わり、ある患者の言葉を借りれば、
「長い旅路の前の最後の休息」のときが訪れたかのように感じられる

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静かに受容したように「見える」のは、周囲の人の想像の範囲をでません。

本人はどう思っているのか、

本当に受容しているのか、

本当は不安いっぱいなのか、

もはやそれを表現する気力が残されていないのであれば、

本人のみぞ知ることです。


やはり死生観は、「死んだら死んだ時」ではなく、

平生、まだ健康で元気な時こそ、育んでいきたいです。



人間に生まれてきてよかった。

わが人生に一片の悔いなし!



そんな生き方を、今からしていきたいと思います。