今年はうるう年なので、2月29日がある。
いつもなら、ないはずの一日なのだからゆっくり過ごそう・・・と思ってはみたものの現実はなかなかそうはいかない。
それでも心のどこかにこの一日の余裕がある。
考えてみれば、耳で聞く俳句《一日一句》は2020年4月から始めたので、2月29日が来るのは今回が初めて。「昨年の〇月〇日の句」と書くことが今日はできなかったけれど、四年後の2月29日には「4年前の2月29日の句」と記すことを楽しみにしていよう。
ということで、2月の最終日、2024年2月の俳句をまとめました。
日付をクリックすると該当の俳句が聞けます。
2/1 天井に水の明るさ来て二月 桂信子
2/2 目の合へば鹿まばたきす春隣 稲畑汀子
2/3 わが部屋に最も多く豆撒かれ 阿部みどり女
2/4 ばら色の富士立春の天にかな 黒田杏子
2/5 うれしいたよりもかなしいたよりも春の雪ふる 種田山頭火
2/6 けふ一と日ゆたかに臥して春の雪 森澄雄
2/7 どこまでも枯木と見せて梅の花 正岡子規
2/8 白き皿に絵の具を溶けば春浅し 夏目漱石
2/9 ぼろぼろの机買ひけり梅の花 室生犀星
2/10 めいめいに考える椅子 梅の花 伊丹三樹彦
2/11 早春の森にあつまり泥の径 鈴木六林男
2/12 木々の枝こまやかに春浅きかな 石川桂郎
2/13 おく如くころがる如く蕗の薹 山口青邨
2/14 ほろ苦き恋の味なり蕗の薹 杉田久女
2/15 呼ぶ声も吹き散る島の春一番 中村苑子
2/16 早春のあの畑この畑何もなし 山口青邨
2/17 そそのかす女の眉や春浅し 夏目漱石
2/18 梅咲いて散つて柩を覆ひけり 黒田杏子
2/19 一瞥を与へ初蝶よとおもふ 後藤夜半
2/20 点滴の終りに近し春の空 阿部みどり女
2/21 手を容れて冷たくしたり春の空 永田耕衣
2/22 あまぐもはしろし詩文に冴返る 飯田蛇笏
2/23 春寒し仕事の山を崩せずに 稲畑汀子
2/24 蕗味噌や山あり谷もあるくらし 村越化石
2/25 寝るだけの家にもどりて春寒き 大野林火
2/26 青空をしばしこぼれぬ春の雪 原石鼎
2/27 いちにちを生きていちにち花を待つ 黒田杏子
2/28 古井戸のくらきに落つる椿かな 与謝蕪村
2/29 裏がへる亀思ふべし鳴けるなり 石川桂郎
明日から三月。
この三月は、朗読会や被爆証言の会がいくつも控えている。
そして、黒田杏子先生が旅立ってから一年。
その三月が来る。