トゥレット症 ――朝日新聞から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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 朝日新聞のくらし面に、21日から3回にわたって「私はトゥレット症 「暖かい無視」を」という連載記事が掲載されている。

 トゥレット症とは、自分の意志に反して大きな声を出したり汚い言葉を吐いたり異常な行動をしてしまうことが抑えられない病気である。

 

 連載第1回に登場した菊池涼太さんは、小学生のころから首をくるっと回す運動チックがでていた。

 中1の夏から、「あっ」「うっ」と声が出てしまう音声チックがでるようになった。

 中学生の時に、ふざけてそのまねをする友達を見て自覚するようになった。

 人を避けて毎日始発電車で登校したが、中3のとき50代くらいの男性から「さっきからうるせえなあ」と言って顔を殴られた。

 大学受験は、静かな会場で受験するのが怖くてあきらめた。

 高校卒業後2年間、家にひきこもった。

 障害者就労支援センターで訓練を受け、21歳のときにIT企業に障害者採用枠で採用された。

 

 わたしはトゥレット症という病名を聞いたことはあったが、詳しい実態を知らなかった。

 この記事を読むまで、当事者の苦しみの大きさを知らなかった。

 この病気による苦しみは、周りの人の理解によってかなり軽減される。

 当事者会でいつも話題に出るのは、「温かい無視」という言葉だという。

 菊池さんは、「突然声を出したり、体を動かしたりしても、何事もなかったかのようにスルーしてほしい。それが難しいのは、病気への無知や偏見があるからじゃないでしょうか」と語っている。

 

 わたしも電車の中で実際にトゥレット症と思われる人を見たことがある。

 意味のない言葉を何度も発していた。

 わたしは攻撃性のない人間なので、注意も批判もせず、もちろん殴りもしなかった。

 変な人がいる、と思って、無視した。

 わたしの無視は、「冷たい無視」である。

 不快感が態度に表れていたに違いない。

 無言のうちに、どれほどその人を傷つけていただろう。

 「温かい無視」とはかけ離れた振る舞いである。

 わたしも、加害者である。

 

 知らないということは、罪である。

 人を傷つけておいて、知らなかった、で済まされることではない。

 もっと早くに、トゥレット症のことを知っておくべきであった。

 そうしたら、「温かい無視」で接することができたはずである。

 もしトゥレット症の人が批判や攻撃を受けていたら、止めに入って説明することもできる。

 

 しかし、どのくらいの人がこの病気のことを知っているだろうか。

 どこかで習った、という記憶は全くない。

 おそらく学校で習う機会はないのだろう。

 わたしはたまたま朝日新聞でこの病気のことを知った。

 新聞を読んでいなかったら、一生知らないまま当事者を傷つけていたかもしれない。

 

 わたしは、この記事でこの病気を知った以上、より多くの人に知ってもらうように努めようと思う。

 ことのは学舎の授業でも、この記事を教材として使おうと思う。

 テストで点数をとるためには、役に立たないだろう。

 しかし、みんなが今より幸せに生きていくためには、必ず役に立つはずである。

 教育とは本来、そのためのものである。

 

 自分が知らなかったこと、そして教えてこなかったことへの反省と自戒を込めて、このブログに記しておく。

 これを読んでくれた人がトゥレット症を知るきっかけになれば幸いである。