小学生の発明 ――朝日小学生新聞から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

考える力・伝える力を育てる国語教室 ことのは学舎 の教室から、授業の様子、日々考えたこと、感じたことなどをつづっていきます。読んで下さる保護者の方に、お子様の国語力向上の助けとなる情報をご提供できたらと思っております。

 今日(13日)の朝日小学生新聞3面は、小学生の発明が商品化されたという記事であった。

 茨城県に住む小学5年生の宇賀持琴音さんが発明した絆創膏が、マツモトキヨシから「指にまきやすい絆創膏」という商品として発売されている。

 従来の絆創膏との違いは、ガーゼ部分が端にあり、指にまきやすい、ということである。

 

 この発明について考えてみた。

 実はこの商品が発売される前から、わたしは同様のものを使っていた。

 子どもの指に絆創膏を貼る時、テープの片側を短く切って使っていたのである。

 そのままだと、テープ同士がくっついて貼りにくかった、というのがその理由である。

 おそらく、多くの人が同じことをしているであろう。

 

 絆創膏のガーゼ部分を端にする、という発想は極めて平凡なものである。

 では、宇賀持琴音さんの発明は何がすぐれていたのか。

 それは、思い付きに手足をつけたことである。

 ほとんどの人は、絆創膏のテープの片側を切って使ったところで満足して、自分だけで完結しているであろう。わたしもそうである。

 自分が使う分にはそれでよいのだけれど、その方法を知らない人のところにまで広がることはない。

 宇賀持琴音さんの発明は、自分ひとりのものでなく、日本中あるいは世界中の人のものになった。

 一人の思い付きが、手足を持って歩きだしたのである。

 宇賀持琴音さんがこのアイデアを思い付いたのは、3年生の時だという。

 そのとき、それをただの思い付きで終わらせず、自由研究として提出した。

 この作品が発明コンテストで金賞となり、メーカーの目にとまったのである。

 

 考えることは大切である。

 しかし、どんなにすばらしいことを考えても、その考えを伝えなければ、役に立たない。

 考える力伝える力は、二つ揃ってはじめて役に立つのである。

 宇賀持琴音さんの発明においては、考え自体はわたしでも思いつくようなものである。

 しかし、わたしにはそれを他の人に伝えようという発想も、伝える力もなかった。

 宇賀持琴音さんの発明の成功は、ひとえに伝える力によるものである。

 

 近年の学校教育や入学試験では、思考力表現力が重視されている。

 宇賀持琴音さんの発明の成功は、表現力の重要性を教えてくれる。

 この発明をことのは学舎の生徒たちに紹介して、表現ということについて一緒に考えてみようと思っている。

 

〔おまけ〕

 宇賀持琴音さんがマツモトキヨシに招待されて、「指にまきやすい絆創膏」を作る工場を見学する動画が、YouTubeで見られる。

 興味のある方はご覧ください。

 (製品が完成後に23時間も滅菌室で滅菌されていたなんて、知らなかった!)