高校入試の英語の長文読解問題をいろいろと読んでいる。
留学生との会話、ホームステイ先の生徒との会話、中学生のスピーチなど、似たり寄ったりの文章が多いが、ときどき面白い文章もある。
2019年度の岩手県の県立高校の入試問題では、セルフレジについての文章が出題されていた。
内容は以下の通りである。
2015年に28%の店で導入されていたセルフレジが、16年、17年と、次第に減少している。
今後導入したいと考えている店も、16年には増加したが17年には減少した。
セルフレジを導入する主な理由は、精算に要する時間の短縮と、人件費の削減の二つである。
ところが、60歳以上の客はセルフレジによる商品のバーコードのスキャンや自動精算機による支払いがうまくできないことに不安を抱いている。
スキャンや支払いがうまくできないと、他の客を待たせることになり、時間の短縮の効果が得られない。
スキャンや清算がうまくできない客に対応するためのスタッフを雇うと、人件費もかかる。
その結果、セルフレジよりも従来の人間によるレジを選ぶ店が増えているのである。
また、人間の声による、「ありがとうございました。また来て下さい」という対応のほうが好きだという客が多い、というのも、セルフレジを導入しない理由の一つである。
この入試問題には、あなたの身近な機械があなたにどのような影響を与えているか英語で書け、という設問が付いている。
考えさせることの多い、良い文章と設問である。
セルフレジについて、この文章では導入する店が減少している、と言っているが、わたしのまわりでは、最近2,3年の間に大幅に増加しているように感じられる。
それらの店では、使い方が分からない客への対応は人間のスタッフが行っている。
複数のセルフレジに対して1人で対応しており、精算時間の短縮と人件費の削減という目的は、どちらも実現できているようである。
商品のスキャンは店員が行い、精算だけセルフという店も多い。
コンビニはほとんどそうなっている。
完全に無人レジだけの店はまだわたしの周りにはないが、セルフレジや無人精算の普及率はだんだん高くなっている。
わたしの生活への悪い影響は、今のところない。
精算がスピーディーになり、おつりの間違いも減り、よいことづくめである。
セルフレジの導入によって最も影響を受けるのは、レジのパート・アルバイトの人たちであろう。
雇用人数や雇用時間の減少により、収入が減って貧困に苦しむ人がいるのではないか。
これらの人たちにとって、政府が行っているわずかな最低賃金の引き上げは焼け石に水であろう。
高齢者の、スキャンや自動精算に対する苦手意識への対応は、うまくいっているのであろうか。
買い物の度に不安や苦痛を感じる人たちがいるのは、気の毒である。
店側の配慮が必要である。
生身の人間の温かい対応のほうが良い、という人の気持ちはよく分かる。
人間が一日に一度も人間と会話をすることなく過ごす生活には、寒々としたものを感じる。
人間は人間とつながっていなければ生きていけない。
セルフレジの最大の問題は、これかもしれない。
解決すべき重要な問題であるように思う。
高校入試の英語の問題で、いろいろなことを考えさせられた。
日本語で考えるのも難しい問題である。
受験生は、どのような答案を書くのであろうか。興味深い。