先日(10月1日)の朝日歌壇、佐佐木幸綱氏選第9席に、こんな歌が入選していた。
物音に庭を覗けばアライグマ両手を合はせ吾を見てをり
(町田市 山本喜多男)
最近、東京近郊の町中にもタヌキやアライグマなどの小動物が出没している。
一昨日の夜、わたしも遭遇した。
深夜、帰宅中に目の前の道を尻尾の長い、猫くらいの大きさの動物が横切った。
鼻先が尖っており、鼻の上には一本の白い線があった。
ハクビシンである。
慶應義塾志木高校のまえのカーブミラーを駆け上がり、そこから塀を飛び越えて高校の敷地の林に入るつもりだったようだ。
あいにくカーブミラーの支柱は雨で濡れており、ハクビシンは1.5mほど登っては滑り落ち、登っては滑り落ち、ということを繰り返した。
何度か繰り返したあと、諦めてカーブミラーのもとに立ち尽くしているときに、わたしと目が合った。
ハクビシンは、一部始終を見られていたことを悟ったのであろう、恥ずかしそうな、照れくさそうな顔をした。
その後ふたたび道を横切り、民家の庭へと消えていった。
わたしが住んでいる朝霞市は、決して田舎ではない。
人口約14万人、東武東上線、地下鉄有楽町線、副都心線、JR武蔵野線が乗り入れている、ちょっとした地方都市である。
それでも年に2、3回、タヌキやハクビシンに遭遇する。
出会うとなんだか、嬉しくなる。
珍しいものを見た、ということもあるが、それだけではない。
彼らと遭遇するのは、だいたい人々が寝静まった真夜中である。
そんな時間に出会うと、夜中に活動している者同士の連帯感や仲間意識を感じるのである。
不思議な感覚である。
はたして彼らがわたしに仲間意識を感じているかどうかはわからない。
もし真夜中にタヌキ集会やハクビシン宴会など開催しているのならば一度招待してもらえないだろうかと、ひそかに期待している。
そんな機会があったら、わたしも歌にしてみたいと考えている。良い歌が詠めそうな気がする。