万葉集の歌 | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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考える力・伝える力を育てる国語教室 ことのは学舎 の教室から、授業の様子、日々考えたこと、感じたことなどをつづっていきます。読んで下さる保護者の方に、お子様の国語力向上の助けとなる情報をご提供できたらと思っております。

 仕事をほったらかして、万葉集をパラパラとめくっている。現実逃避である。

 

 巻5の、大伴旅人が妻を亡くしたときの歌が、心に響いた。

 

世の中はむなしきものと知る時し いよよますます悲しかりけり

(世の中はむなしいものだと知ったときに、いちだんと悲しみが増すことよ)

 

悔しかもかく知らませばあをによし国内(くぬち)ことごと見せましものを

(悔やまれるなあ、こんなことになると知っていたら、国中を旅して隅々まで見せてあげたのに)

 

妹(いも)が見し楝の花は散りぬべし わが泣く涙いまだ干なくに

(妻が見ていた楝の花は散りそうだ 私の涙はまだ乾いていないのに)

 

 子どもを思う歌もある。

 

銀(しろがね)も金(金)も玉も何せむに 優(まさ)れる宝子にしかめやも

(銀も金も玉の何になろうか、子に優るほど価値のある宝があろうか)

 

 1300年ほど前に詠まれた歌である。

 妻や子を思う気持ちは、何年経っても変わらないものだと、つくづく感じる。そして、歌の力も。

 歌のある国に生まれてよかった。