『ふたりはともだち』 ――「はるが きた」 かえるくんとがまくんの春―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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考える力・伝える力を育てる国語教室 ことのは学舎 の教室から、授業の様子、日々考えたこと、感じたことなどをつづっていきます。読んで下さる保護者の方に、お子様の国語力向上の助けとなる情報をご提供できたらと思っております。

 先日のブログに、ことのは学舎英語教室アーノルド・ローベル「かえるくんとがまくん」("Frog and Toad")シリーズを教材に使っている、ということを書きました。

 ストーリーが面白く、英語の表現も簡単で、子どもたちが楽しみながら生きた英語を学ぶのにうってつけです。

 朗読したり、暗誦したり、人形を使って会話劇にしたり、いろいろな使い方があります。

 かえるくんとがまくんのキャラクターが愛らしく、子どもも大人も夢中になってしまいます。

 

  この「かえるくんとがまくん」のシリーズ、国語教室にも使おうかと考えてみたのですが、これがなかなか難しい。

 ことのは学舎国語教室では、要約という作業を中心にしています。話のつながりを考え、それを自分の言葉で簡潔にまとめるのは子どもたちにとってかなり高度な作業ですが、続けていると確実に国語力、すなわち、「読む」「考える」「書く」力が身に付きます。

 しかし、世の中には要約に向かない作品があります。味わいや風情が魅力の中心となっている作品です。

 たとえば、「かえるくんとがまくん」シリーズの『ふたりはともだち』所収の「はるが きた」

 

 かえるくんが冬眠中のがまくんを起こし、春が来たことを教える。がまくんは、五月まで寝させてくれ、と言って、冬眠の続きにもどる。かえるくんが11月のままになっていたカレンダーを4月まで破り捨て、もう5月だと言ってがまくんを起こす。ふたりで春のようすを見に行く。

 

 要約すると、これだけのことです。これでは面白くもなんともありません。

 この作品の魅力は、こんなちょっとしたところにあります。

 たとえば、冬眠から出てきて、明るくて何も見えないというがまくんに、かえるくんが言うせりふ。

 

「ばかなこと いうなよ。

きみが 見ているのは、

4月の すきとおった

あたたかい ひかりなんだぜ。

つまり、ぼくたちの あたらしい 一ねんが

また はじまったって ことなんだ。がまくん。

そのことを おもって ごらんよ。」

 

「ぼくたち、くさはらを とびはねながら

とおりぬけられるよ。森を かけぬける

ことも できるし 川で およぐ ことも

できるんだぜ。

ばんには いま いる げんかんの まえに

いっしょに すわって おほしさまの

かずを かぞえるんだ。」

 

 がまくんが冬眠から出てきて、ふたりででかけるラストシーン。

 

「おやおや五月だ。」

がまくんは、ベッドから はいおりながら

よのなかが どんなふうに 見えるか

それを しらべに そとへ でて いきました。

 

 冬眠を終えて春を迎えるかえるたちはこんな気持ちなんだろうなあ、ということが伝わってきて、楽しくなります。

 ローベルという人は、前世はかえるだったのじゃないでしょうか。

 こういう味わいは、要約しようがありません。

 味わいを感じ取らず、ただできごとや事実だけを読み取るだけでは、本当に読んだことにはなりません。

 理解するだけでなく、味わう力も、重要な国語力です。

 要約やテストでは測れない国語力を、どうやって伸ばしてあげられるか。

 ことのは学舎でわたしが取り組んでいる課題です。