フラ・ウエン・トマリ | トリブログ

トリブログ

とにもかくにも道が好き。
廃道と隧道、地形図と運転を愛する石井あつこが廃道のことを綴るブログです。
たまに温泉や着物、日常の話もするかも。

ご無沙汰してます。
3月まではけっこう忙しくしていたのですが、緊急事態宣言が出たことでしばらく時間ができました。まぁ、なんというか、一言でいえば仕事がない。慌ててもどうにもならないので、部屋のあちこちで「積読」になっている本たちをこの機会に読破していこうかな、と。
 
さて、2年前の2018年6月に北海道ほぼ1周旅行に出ていました。
自宅から高速道路利用で仙台港へ。そしてフェリーで苫小牧港に出て、車中泊しながら2週間かけて廃道巡りをして、また苫小牧からフェリーで仙台港に戻る。という自由気ままな旅でした。
 
(船は苦手なので、出港してすぐに寝た。よって写真はあまりない)
 
6月というのは廃道巡りにはちょっと遅くて、背丈を超える大イタドリに各地でえらい目に遭いましたが、最高に楽しかったです。
そんな思い出を、ちょっとづつ書いていこうかなと。できるかなー。
・・・まぁまぁ、なんとなく書いていきましょ。

 

北海道車中泊旅7日目。(初日からじゃないのか)

この日は友人と羽幌で待ち合わせをしていました。前日は積丹半島で行われた”コンターサークルの歩き”に参加していて神恵内村の大森トンネル旧道を歩きました。解散後適当に温泉で汗を流し、沿岸部を移動。深夜に道の駅あいろーど厚田に到着し、仮眠をとった・・・が、ものすごい風の音で早めに目が覚めたので、少し南に戻って、無煙によることにしました。

私の愛読書「忘れられた道」堀淳一(北海道新聞社)に載っていて、廃道でもないのに妙に気になった場所。

それが無煙(ムエン)。

 

「忘れられた道」によると無煙(ムエン)はアイヌ名「フラ・ウエン・トマリ」(意:においが悪い舟入澗)といって、海草などがたまり悪臭が常にすることから名付けられたそうだ。このアイヌ名のウエンの転訛で無煙になったらしい。国道231号が開通する前の幹線道路沿いに位置しているが、人気がなく、運転していてなんとも侘しい気持ちになった。語感と景色がマッチしている。

 

湿地帯に差し掛かると、異臭が鼻をついた。海草のにおいじゃない、油のにおいだ。

 

適当な小路に車を停めて、あたりを見回すとすぐに原因がわかった。

あちこちで自然に沸いているのだ。

見渡す限り、油膜、油膜、油膜。

「忘れられた道」の写真と同じだー!とおおいに興奮。

しかし歩き回ろうと思うと、油まじりの泥に足がとられていけない。待ち合わせもあるし、やめておいた。

 

実際、ここには1960年頃まで油田があったという。

石狩町誌で沿革を調べたいところだけれど、あいにく図書館は閉館中。むむむ。

堀さんも書いていましたが、「フラ・ウエン・トマリ」のにおいの悪いは海草溜りが原因ではなく、この石油が原因かもしれません。いや、きっとそうでしょう。
 
独特のにおいと寂寥感漂う景色に、不思議な満足感を得て、私は車に戻ったのでした。