第10話


「待てよ!新藤!」


安藤君の声が廊下に響く。

みんな何事かと廊下に出てきた。

わたしはとにかく走った。

学校を出て、走って走って・・・。

そろそろ安藤君も追ってこない、と思ったところで足を止めた。


「安藤君のバカ・・・・。」


もう、どうでもよくなってきた。

安藤君なんか、あの子と付き合っちゃえばイイって一瞬だけ思ったりもした。

近くに原っぱがあったので寝そべってみた。


「安藤君のばか・・」


目からは涙が次から次へと流れてくる。

空がかすんで見える。

なんで、こんなことだけで嫉妬してしまうんだろう。

私って、心の狭い人間だったんだな・・・。

そんなどうでもいいことを考えていた。


「安藤君の・・・・・ばかーーーーーーーーーーーー!」


思いっきり叫んでみた。

少し気が楽になった。


「おれが何だってぇ?」


まさか・・・・!と思って後ろを振り向くと・・・。


「何?今安藤君の顔見たくないの!」


「はぁ、何イキナリきれてんの?」


「だから・・・・!」


涙で声が出ない。

言いたいのに・・・・。


「どうしたんだよ・・・。」


安藤君は黙ってわたしを抱きしめた。


「話してみろよ、言ってくんなきゃ・・・オレ、わかんねぇよ。」


思い切って聞いてみることにした。


「安藤君・・・こないだの子・・・・誰?」


安藤君は少し黙って話し出した。


あのこは安藤君の中学校の頃の友達で、相田ももという名前の子。


相田ももと安藤君は確かに仲が良かったと安藤君は言った。


安藤君はモチロン友達として彼女のことを見ていた。


しかし彼女は違った。


安藤君が彼女の家にCDを借りに行った時のこと。


彼女がいきなり告白してきたそうだ。


安藤君はモチロン「その気はない」ときっぱり断ったそうだが、彼女の気持ちはそれではおさまりきらなかった。


安藤君をベッドに押したおして、イキナリキスを迫った。


しかし、安藤君はそれをかわして「おまえがそんな女だと思わなかった」と言い残して家を後にしたそうだ。


その次の日に彼女は謝ってきた。


安藤君も、今までどおりに友達として接したいから昨日のことは忘れる、と言って和解した。


しかし、彼女は数人に安藤君に迫ったことを言ったらしい。


ぞれがどんどん噂になって、眞子の耳にもはいったそうだ。


「そっか・・・、そんなことがあったんだ・・。」


「今まで黙っててごめん・・・。」


「別に・・・誰だって言いたくないことはあるだろうし・・・。」


「言ったら・・、新藤に嫌われるんじゃないかと思って・・・。」


「嫌ったり・・・しないよ。」


「おれ、いままでおまえしか女と認識したことない!とかえらそうなこと言っちゃったし・・。」


「じゃぁ、そのこは女と認識したんだ?」


「だから!そういうことじゃなくって・・・。」


「わかってるよ、安藤君。安藤君うそつける人じゃないもんね。」


「新藤・・・。」


気がつくと、夕方になっていた。

安藤君と真剣に向き合って、心がすっきりした。

一人で悩んでたら、きっと苦しかっただけだと思う。


「安藤君・・・信じていいんだよね?」


「あったりめーだろ!」


「これから何があっても、私・・安藤君を信じるから。」


「お前も、一人で抱え込むなよ。」


「うん・・。」


夕日が私たちを照らす。

赤く染まった顔を、さらに赤く照らす。


これから何があっても安藤君を信じよう。

そして、安藤君に何でも話そう。

心から、そうおもった。


「ところでさ・・・おれら学校・・・サボっちゃったな・・。」


「あ~~~~!!」


「まいっか。」


「よくない~!今日はただでさえ遅刻したのに~~!」


「学校サボっちまったのはお前のせいなんだからな!」


「安藤君の浮気疑惑が出てこなければ、さぼることなかったもん。」


「言うようになったな、コノヤロ。」


「そっちこそ。」


恋は楽しいことばかりじゃない。

相手のことを好きになればなるほど、嫉妬や悩みも増える。

けど、その倍以上にうれしいことや楽しいことが待っている。

安藤君、私これくらいで心が揺らがないようにもっともっとつよくなるからね。

安藤君のこともっと好きになって、安藤君にふさわしい女の子になるからね。

だから、それまで・・・待っててね。


安藤君の顔も、赤く染まっていた。


それは、夕日で赤くなっているのか・・・


それとも、照れているのかはわからなかったけど・・・・。