先週末、会社にあった資料を整理していたら見覚えのない古い紙袋があって、中身をを出すとこのようなものが。
この黒い表紙、何と呼ぶのだっけ?いわゆる「ファイル」類が登場する前、紙書類をたばねるのに使われた硬い表紙である。
この表紙を表と裏で書類を挟み、右に見える黒い紐でをしばってまとめるのだ。
興味深く開いてみると、最初にこんな記載が。
謹呈
平成6年8月
森崎俊紘様(※父の名前)
とある。
そして
岩盤(やま)に挑(いど)んだ男
トンネル野郎の日記より
タイトルであろう。
著者として記されている木曽貢治、という名前に覚えがあった。私にとって大叔父にあたる、祖父の弟のペンネームである。
もうお亡くなりになったが生前かわいがっていただいき、趣味で文章を書く時にはこのペンネームを使っていたのを知っている。
その大叔父が父に謹呈した書き物、ということのようだ。
そして次を開くと、
故郷は、いつ帰っても美しい所である。
母の二十五回忌で久し振りに郷里の土を踏んだ。私は、姉と二人で、山の中腹にある先祖の墓に線香を手向け、手を合わせる。
「お前も時々しか帰ってこないから判らないだろうが、村も大分変わってきたよ」
という冒頭から始まる、小説であった。
帰省した著者が同級生と会うところから始まり、トンネル屋としての生涯を送ったその友人の人生をメモしたものを預けるので、まとめて書いてほしいという依頼を受け書いた文章、という体になっている。
以降80ページに亘ってワープロで打たれた文章が綴られてるのだが、これがすこぶる面白い。
私が最近調べているトンネル屋の歴史の証言の一つになると思うほど、いろんなエピソードが入っている。
「夜這い」の文化の記述なんかもあるのだ。
そして途中で気づいた。
この主人公のモデルは、祖父なのだ。
私もいろいろ調べていた、祖父のエピソードが少しづつ散りばめてある。
そしてクライマックスの一つ、現場で落盤事故が起きて5日後に救出する話は、父から聞いた通りの内容であった。
もしかすると大叔父はこの現場で一緒に仕事をしていたのではないかと思うほど、リアルな描写に驚かされた。
一気に読み終えて改めて最初のページに戻すと、謹呈が平成6年8月とある。
祖父が亡くなった月ではないか。
大叔父は、亡くなった直後に祖父の歴史の一部を伝えたかったのかもしれない。
そんな大事なものが、なぜ会社の資料の中にあったのかは不明である。
貴重な記録、もしご興味ある方がいれば、連絡をもらえばデータで差し上げます。
読んでいただきたいでので。