20歳の時に椎名誠さんの本に出会った。
友人宅で見かけたいったい何の本なのか分からないデザインの表紙に驚き、思わず手に取ったのを覚えている。
「スーパーエッセイ」「気分はだぼだぼソース」というのもまったく謎のタイトルだったが、読み始めるとさらにびっくり。
それまでに読んだことがない、世のためにならないぼやきというか、わざとの屁理屈というか(説明が難しいので読んでもらうしかない)、不思議な文章に引きづり混まれ、あっという間に読み切った。
特に有名な最終章『日本の異様な結婚式について』は圧巻で、以来10年近くはずっと椎名さんの本、そして人生観までも追いかけていたように思う。
●以下参照
「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」
https://ameblo.jp/kotobuki5430511/entry-12181353563.html
「発作的座談会」
https://ameblo.jp/kotobuki5430511/entry-12436709201.html
その数年後に自分が書くことなる本では、椎名さんの文体の真似っぷりが恥ずかしくてしばらく読めなかった。
今回久しぶり椎名さんの本を買って読んだのだが、そのタイトルが「本人に訊く」。
椎名さんの盟友といえる目黒考二さん(「本の雑誌」初代発行人)と、椎名さんの全著作の裏事情を語り合うという、興味深いシリーズなのだ。
今回読んだのはその第一弾「よろしく懐旧編」というもので、私がハマって人生にも大きな影響があったと信じている初期作品について語られているのだから面白くないはずがない。
「昭和軽薄体」と呼ばれた独特の言い回し、そしてケンカの強い武闘派作家という側面などなど、今だからこそ語っていただける楽しさがあった。
さらば国分寺書店のオババ
わしらは怪しい探検隊
かつをぶしの時代なのだ
哀愁の町に霧が降るのだ
岳物語
などと、タイトルを並べるだけでも嬉しくなる。
リアルタイムで椎名さんの本に出会ったことは、私の人生でも影響が大きかったと自覚している。
もう四半世紀近く前だが、その椎名さんが先の私の本を読んで下さって「本の雑誌」のコラムで紹介していただいて、ものすごく感動したことがある。
「むはの哭く夜はおそろしい」という本にもその文が掲載され、嬉しかったなあ。