何故ときどき、無性に日本語以外の言語が話したくなるのか。
『日本語以外を話したい①』にも書いたけれど、それだけではない気がする。
ある週末、渋谷のカフェでお茶をした。
北海道から11年ぶりに戻ってきてのお出かけ。
もともと得意ではなかったけれど、やっぱり人の多さと雑多具合に圧倒される。
一息つこうと入ったお店は、休日の複合商業施設の中だけあって混み合っていた。
隣り合う席の位置も近い。
注文を終え主人と話していると、若い女の子が隣のテーブルに注文を取りに来た。
「これと…」指差しながら必死に注文する母娘。
一見して、日本語がまったく話せないことがわかる。
しかしその店員は、まったく意に介さずマニュアル通り。
何とか母娘がケーキを飲み物の注文を終えた…と思った瞬間、その店員が言った。
「紅茶はストレート、ミルク、レモン、どれになさいますか?」
当然「???」となる母娘。
されどその店員は動じない。
「紅茶はストレート、ミルク、レモン、どれになさいますか?」
いや、通じてないよね?
日本語が理解できないの、わかるよね??
しかしながら、困ったなぁという表情すらしない彼女。
もちろん、カタコトの英語を発しようとなんてする素振りはない。
無表情に答えを待っている。
ここまでくると、逆に感心してしまう。
何も感じないのだろうか??
途方に暮れる母娘。
これはもう、介入してもいいよね?
そう思った私は、横から割り込んで通訳した。
母娘は今度こそ本当に、無事に注文を成し終える。
「ありがとう」と母娘から。
ひとこともなく去っていく店員。
うーん…おそらくアルバイトなのだろうけれど、それにしてもあのお店の社員教育はどうなっているのだろうか?
渋谷や自由が丘、有楽町あたりに多店舗展開している人気ケーキ店なんだけどな。
まぁとりあえず、今回はその話は置いておいて。
その後、その母娘と少しだけ会話をした。
母「私たちは台湾から来たの。あなたは?」
私「え?…あ、私、日本人よ」
母「ええっ?!英語上手ね~!」
私「ありがとう」
たったあれだけ(紅茶にミルクやレモンはつけるか)でも、英語が話せる人認定をされる国。
うん、そうだよね。
さて。
今回の記事で私が言いたかったのは、実はここから。
彼女たちとの話を終えた後、私は何ともいえない充足感に満たされていた。
ほんの数語、交わしただけの英会話。
それだけで私は
なんか幸せ…
今日はもう何もいらないや
という状態になっていたのである。
この感覚は、我ながら驚いた。
何これ??
後日、そんな会話を友人としたとき、彼女が言った。
「違う言語を話すときってさ、違うアイデンティティが引き出されるんだよね」
おおっ!確かに。
それかもしれない。
普段とは別のところから湧き上がってくる、自分の内側のエネルギー。
『日本語以外の言語』に飢えていた私は、あのたった数語で飢えを満たしたのだ。
これが、私が見つけた“日本語以外を話したくなる”もうひとつの理由。
潜んでいる自分のアイデンティティが引き出される瞬間。
たまらない。